札幌市は2034年以降に冬季五輪を招致できるか

本日、札幌市の秋元克広市長と日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長が記者会見を行い、2030年の冬季オリンピック及びパラリンピックの招致を断念し、2034年以降の大会を目指すことを正式に表明しました[1]。

2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックにおける大会組織委員会の汚職事件や新型コロナウイルス感染症の感染拡大の中で大会の開催を強行したかのように見えた国際オリンピック委員会(IOC)の姿勢に対する日本国内の世論の反発とIOCに対する信認度の低下を考えれば、札幌市以外で大会の招致への機運が全く高まらない状況と合わせて、活動の中止を決定したことは妥当な判断と言えるでしょう。

それとともに、次に目指すとする2034年はソルトレークが最有力候補であることは、札幌市にとって不利な条件となります。

また、札幌市が東京五輪のマラソン競技の開催という予定されていない事態への対応という貸しがあると考えており、JOCとも良好な関係にあるIOCのトーマス・バッハ会長の任期が2025年で終わることも懸念材料となります。

従って、2024年と2028年の大会をパリとロサンゼルスで開催することを決定した夏季五輪の場合と同様に、バッハ会長が任期最後の置き土産として2034年と2038年の大会の開催地を同時に決定するといった対応をするのでなければ、札幌市が招致に成功する可能性は低くならざるを得ません。

もとより、何故、札幌市で冬季五輪を開催するのかという必然的な理由を提示することが出来なければ、札幌市民はおろか、他の地域での支持を広げることは難しいものです。

それでも、札幌市への五輪の招致による都市の活性化や施設・設備の更新といった副次的な効用も考え合わせると、かえすがえすも東京五輪を巡る騒動や汚職事件が悔やまれます。

それだけに、札幌市とJOCの今後の取り組みが一層注目されるところです。

[1]2030年冬季五輪招致断念 “2034年以降の可能性探る”札幌・JOC. NHK NEWS, 2023年10月11日, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231011/k10014221971000.html (2023年10月11日閲覧).

<Executive Summary>
Will the Sappro Olympic Games Be Held in 2034 or 2038? (Yusuke Suzumura)

Today Sapporo Mayer Katsuhiro Akimoto and Japan Olympic Committee President Yasuhiro Yamashita announce that they decided to stop holding the campaign for the Winter Olympic Games 2030 and have the new plan to invite the games in 2024 or 2038. On this occasion, we examine the possibility of this plan.

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