「ジャニーズ問題」に対してわれわれに求められるのはいかなる態度か

昨日、ジャニーズ事務所が性加害問題からの立て直し策を発表し、所属芸能人のマネジメント業務を手掛ける新会社を設立するとともに、同事務所は被害者救済に専念し終了後に廃業することを明らかにしました[1]。

前回の記者会見でジャニー喜多川氏による性加害を認めたことを考えれば、現在のジャニーズ事務所を新社と旧社に分け、旧社は問題への対応に一定の目途だ着いた後に廃業するという方法は、他の企業においても用いられる手法であり、甚大な問題を抱える企業の撮るべき進路としては妥当な選択と言えます。

問題の根本であるジャニー喜多川氏の下で芸能人としての鍛錬を行い、大成した東山紀之氏や井ノ原快彦氏が経営陣の中枢にいることは企業統治の面で不備があるという指摘があるものの[1]、会社法などに定める所定の方法に従って選任されている以上法的な瑕疵はなく、むしろ道徳的、倫理的な問題であり、このような意見にどこまで対応するかは企業ごとの判断にゆだねられるべきものです。

もとより本欄は本人の望まない、あるいは意図しない性行為を性犯罪とし、このような性犯罪を強要する余地は寸毫もないと考えます。

従って、ジャニー喜多川氏による性加害問題には許容の余地はなく、事態が白日の下にさらされた以上、しかるべき対応がなされるのは論を俟たないことであり、芸能界において高い名声を誇るジャニーズ事務所が廃業となることも当然の結果と見做します。

それでも、問われるべき罪過と附随的な出来事とを混同したり、あらゆる問題を一度に解決することを求めるかのような態度については、かえって最も優先されるべき事柄の所在を見失わせ、事態をかえって混沌とさせることを懸念します。

その意味において、われわれは改めて今回の問題の根本が何であるかを考えるとともに、何が最初に解決されるべきであり、次に取り組む課題が何かを明らかにしなければなりません。

情なき法は冷酷であるかも知れないものの、情のみに依存するのであれば、そのような姿勢も新たな問題をもたらすということに、われわれは自覚的である必要があると言えるでしょう。

[1]ジャニーズ、補償後に廃業. 日本経済新聞, 2023年10月3日朝刊2面.

<Executive Summary>
What Is an Important Attitude for Us to Discuss the "Johnny Kitagawa's Sexual Abuse Issues"? (Yusuke Suzumura)

The Johnny & Associates held the press conference and released the new management plan to divide the company into two and the new company will take the role of the management of the talented persons on 2nd October 2023. On this occasion, we examine an important attitude for us to discuss the issues.

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