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2020年6月の記事一覧

「ふるさと納税訴訟での泉佐野市の逆転勝訴」が示唆する「を巡る素朴な性善説」の限界

本日、最高裁判所第3小法廷において、いわゆる「ふるさと納税制度」の対象自治体から除外したのは違法だとして、大阪府泉佐野市が除外決定の取り消しを求めた訴訟の上告審判決が下り、国の勝訴とした大阪高裁の判決を破棄し泉佐野市の逆転勝訴が確定しました[1]。

判決理由において、「新制度の施行前は、返礼品の提供で特に法令上の規制は存在しなかった」とした上で「新制度は一定の対象期間の寄付金募集実績に関するもの

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「都立学校の完全再開」の問題点は何か

今日から、新型コロナウイルス感染症の拡大により、登校時間や児童、生徒などの数を制限する分散登校を続けていた東京都立学校が全面的に再開しました[1]。

都内の新型コロナウイルス感染症の発症者数は依然として全国で最も多く、感染の拡大の終息の見通しは不明であるものの、5月25日(月)に新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が解除されたことや、3月から4月にかけての感染者数の急速な拡大が

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「プロオーケストラの定期演奏会の再開」が踏み出した大きな一歩

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、2月26日(水)に全国的なスポーツや文化関連の催事の中止や延期、規模縮小[1]が要請されてから中止や延期の措置が取られていた職業管弦楽団の有観客による定期公演が再開され始めています。

主要楽団については6月21日(日)に東京フィルハーモニー交響楽団が曲目を変更し、休憩時間を設けず約1時間にわたり第938回定期演奏会を行うとともに、6月26日(金)には東京交響

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経営改善へ各球団のあの手この手

去る5月25日(月)、日刊ゲンダイの2020年5月26日号25面に連載「メジャーリーグ通信」の第69回「経営改善へ各球団のあの手この手」が掲載されました[1]。

今回は、「7月4日前後の開幕」を目指していた大リーグと各球団の経営面上の取り組みを取り上げています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。

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経営改善へ各球団のあの手この

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「大リーグの開幕決定」が意味する「選手会の勝利」

現地時間の6月23日(火)、大リーグ機構は2020年の公式戦を7月24日(金)前後に開始し、レギュラーシーズンを60試合の予定で実施することを公表しました[1]。

大リーグ選手会は6月22日(月)に60試合制での実施を提案した大リーグ機構の計画を拒否し、機構側が強行開催の権利を即日で行使していました[2]。

元来、選手会側が70試合制を要求していたことを考えれば、60試合制となったことは、機構

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過去60年の都知事の事績から見る「都政の移り変わり」

6月20日(土)と21日(日)は、7月5日(日)に投開票される東京都知事選挙が告示されてから最初の週末でした。

主要候補を中心に、各人がそれぞれの所説を主張し、選挙戦が進められています。

ところで、過去60年間の東京都知事8人の事績を概観すると、主に施設整備の拡充などを重視する政策と生活の質の向上に重きを置く政策とが交互に提起されいているように思われます。

すなわち、1959年から1967年

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「2020年のプロ野球公式戦の開幕」と「球音の楽しみ」

6月19日(金)、プロ野球の公式戦が開幕しました。

新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受けて、3月20日(金)に予定されていた日程が変更されたため、前身の日本職業野球連盟が発足した1936年以来、最も遅い開幕となりました。

また、当面は球場に観客を入れない、いわゆる無観客試合となったことは、野球という競技を興行として行うプロ野球としては異例の措置であり、それだけ常には非ざる状況の中で公式戦

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「河井夫妻の買収容疑」は「見境なさ」がもたらした結果なのか

昨日、2019年7月に行われた参議院選挙で広島県の地方議員ら94人に合計約2570万円を配布して買収したとして、河井克行衆議院議員と河井案里参議院議員が公職選挙法違反の容疑で逮捕されました[1]。

現職の国会議員が逮捕されるのは、いわゆる統合型リゾート(IR)を巡る贈収賄疑惑で2019年12月25日に逮捕された秋元司氏[2]以来となります。

河井克行氏と河井案里氏については、現時点で容疑を否認

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「東京都知事選の告示」に寄せて--候補者たちは何を行うべきか

本日、7月5日(日)に投票が行われる東京都知事選挙が告示され、過去最多となる22人が立候補しました[1]。

今回立候補したのは、届け出順に以下の各氏です(以下、敬称略)[1]。

山本太郎
小池百合子
七海ひろこ
宇都宮健児
桜井誠
込山洋
小野泰輔
竹本秀之
西本誠
関口安弘
押越清悦
服部修
立花孝志
齊藤健一郎
後藤輝樹
澤紫臣
市川浩司
石井均
長澤育弘
牛尾和恵
平塚正幸
内藤久遠

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労使のタフネゴシエーターたちの交渉術

去る6月8日(月)、日刊ゲンダイの2020年6月9日号27面に私が隔週で担当させていただいている「メジャーリーグ通信」の第70回「労使のタフネゴシエーターたちの交渉術」が掲載されました。

今回は大リーグの開幕を巡る選手会と機構・経営者側の対立と交渉術のあり方を検討しています。

本文を一部加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。

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労使のタフネゴシ

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「スポーツにおける人種差別問題」で思い出される「2005年のマイナー・リーグでのある光景」

ミネアポリスの警察官によるジョージ・フロイドさんの暴行死を受けて米国の各地で起きた抗議運動と、米国における「黒人差別」の根深さの一端については、すでに本欄の検討した通りです[1]。

そこで、今回は、米国における「黒人差別」の問題は、黒人だけの問題にとどまらず、むしろヒスパニック系やアジア系をも含む「人種問題」の一つの表れであることを考えてみたいと思います。

その際に具体的な事例として採り上げる

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求められる文化団体への速やかな支援

新型コロナウイルス感染症の拡大による休業要請が解除された後も、劇場や映画館の利用者は伸び悩んでいます[1]。

その一方で、実際に演劇や音楽、舞踊などの各種の文化活動を担う団体も、公演の機会が失われたことで経済的な苦境に直面しています。

このような点について、5月初旬に文化団体に対する公的な支援や補償を速やかに行うことの重要さを指摘した一文を物しました。

本論は最終的に別な原稿に差し替えとなり

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保阪正康氏の論考「歴史を変えた指導者の病」で考える「論旨と参照例の関係」

6月6日(土)、東京新聞に保阪正康さんの論説「歴史を変えた指導者の病」が掲載されました[1]。

記事の中では、今年3月末に新型コロナウイルス感染症に罹患した英国のボリス・ジョンソン首相の事例から始まり、近衛文麿の痔疾や、就任直後に寒空の下で行われた祝賀会によって体調を崩し、就任から65日で退陣した石橋湛山のように疾病が歴史を左右した事例や、浜口雄幸や池田勇人など不測の事態によって退陣した者、さら

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「大リーグの公式戦開幕」は「トランプ大統領の初めての始球式」を実現するか

1910年のウィリアム・タフト以来、米国の歴代大統領が大リーグの開幕戦を中心に始球式を行っているのは周知のところです。

そして、2017年の就任以来、現職のドナルド・トランプ大統領が始球式を行っていないことも、広く知られるところです。

トランプ大統領が始球式を行わない理由の一つとして挙げられるのが、登場した時に球場内から罵声や嘲笑が起き、その様子が放送されることを嫌っている、というものです。

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