「河井夫妻の買収容疑」は「見境なさ」がもたらした結果なのか

昨日、2019年7月に行われた参議院選挙で広島県の地方議員ら94人に合計約2570万円を配布して買収したとして、河井克行衆議院議員と河井案里参議院議員が公職選挙法違反の容疑で逮捕されました[1]。

現職の国会議員が逮捕されるのは、いわゆる統合型リゾート(IR)を巡る贈収賄疑惑で2019年12月25日に逮捕された秋元司氏[2]以来となります。

河井克行氏と河井案里氏については、現時点で容疑を否認しているとされています[1]。

容疑が真実か否か、あるいは起訴されるか否かなどの点については、今後司直の手により適切に判断されることが期待されます。

ところで、今回と同様な選挙における買収として思い出されるのが、1979年の第35回衆議院議員総選挙における宇野亨氏の事例です。

再選を目指して自民党から立候補した宇野氏は、2億5千万円を買収資金として用い、選挙区全体に2万5千個の名入り石鹸を配布したとされます[3]。

当時の千葉2区から立候補した宇野氏は地盤が固くなかったため、知名度を浸透させるためにも中元として石鹸を配布したものの、「見境なく配った」[3]ため相手候補の運動員の手に渡り、警察に持ち込まれたことで買収行為が発覚しています。

今回の河井氏の件についても、面識のない地元議員や、過去に寄附を受けたことがない議員にも現金が提供されていたとされます[4]。

もし、こうした現金の配布が真実であり、しかも各議員の政治活動への寄附ではなく買収を意図していたとすれば、宇野氏の場合と一脈通じる、「見境なさ」が推察されます。

宇野氏は1984年に懲役4年の実刑判決を受けたものの、1989年12月に昭和天皇の崩御に伴う恩赦のうちの特別基準恩赦となり、刑の執行を免れました[5]。

それだけに、河井克行氏と河井案里氏の容疑がどのような展開を示すか、興味深く思われるところです。

[1]河井夫妻を逮捕. 日本経済新聞, 2020年6月19日朝刊1面.
[2]秋元議員を逮捕. 日本経済新聞, 2019年12月25日夕刊1面.
[3]宇野派の"手口". 読売新聞, 1979年12月11日夕刊2面.
[4]面識薄い議員にも現金. 日本経済新聞, 2020年6月19日夕刊11面.
[5]宇野元代議士と森脇氏の大喪恩赦決まる. 読売新聞, 1989年12月23日朝刊26面.

<Executive Summary>
Mr. and Ms. Kawai Case Might Be a Result of Indiscriminte Vote-Buying (Yusuke Suzumura)

On 18th June 2020, Former Justice Minister Katsuyuki Kawai and Councilor Anri Kawai were arrested on charges of vote-buying during her successful Upper House Election bid last summer. In this occasion we examine a past similar case of MP Toru Uno, who was arrested a large-scale acquisition case in 1979.

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