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【連載小説】そして誰もいなくならなかった

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目が覚めたら──宇宙人・未来人・超能力者と一緒に無人島漂流していた!でも近くに島があるし天気もいいしでわりとすぐに救助が来るのでは?危機感ゼロ、対話能力ゼロ、まともな人間ゼロの無… もっと読む
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最終話 脱出は成功した

最終話 脱出は成功した

↓前回の話はこちら

「めずらしな、あの島いきてぇなんて」
「すみません。無理言って船出してもらって」
「いいんだ。それにしても今日は多いな。さっきも案内してんだ」
「そうなんですか?」
「あぁ、それに聞かれてよぉ。『ここには牛は住んでますか?』って。変な質問だなって思ったけどよぉ、確かに昔はここの島にも人が住んどってよぉ。そん時に牛を飼ってたらしんだが、今も残ってるとは思えんなぁ」

 俺は胸騒

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第11話 ある無人島からの脱出

第11話 ある無人島からの脱出

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「Milky Way。……協力してくれるよな? 牛さん」

今まで無言だった彼……ああいや、この場合は彼女か? 違ったらごめん、許してほしい。……ともかく、牛の形をした地球外生命体に向かって続けた。

「確かに天の川は、古くから女神の母乳が飛び散ったものと言われてるもう。天の川を発生させることができれば、織姫と彦星のように対岸の人と交信ができるかもしれないもう」
「それだけ

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第10話 協力してくれるよな?

第10話 協力してくれるよな?

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 宇宙人の灰原彩香。
 未来人の三崎未来。
 超能力者の能登力也。
 あと、あの……えー……牛。
 そして俺。

──Fulfill role(役割を果たせ)

 それぞれに与えられた役割とは何だ?
 灰原はずっと母星との交信を行っていて、三崎はなぜか速く動くという芸当を見せ、能登くんに至っては今のところ何もしていない(牛に何かしようとして失敗してはいたが)。しかし、そ

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第9話 役割を果たせ

第9話 役割を果たせ

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 よく「無人島に行くなら何を持っていくか」という質問がある。多くの人は必要そうなものを答えるだろうし、ネタ的に某ネコ型ロボットと答える人もいるだろう。
 もし仮に今その質問をされたとしたら俺は確実にこう答える。

「信頼できる仲間」

 この無人島に来てから大変な状況にさらされ続けたが、今が一番つらいかもしれない。前回の「島が本当に存在しているのか」という発言により、俺

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第8話 白昼夢だったのか

第8話 白昼夢だったのか

前回のお話はこちらから↓

 無事にまた揃うことができてホッとしていたが、灰原の交信はまだまだ終わらないようで、歩みを止めない彼女の後ろを残りのメンバーがついていく形をとっていた。

「まだ終わんないのかよ」
「そろそろ休憩はしたいところですね」
「わ、わたしもう足が限界でっ……きゃあ!」

 話の途中で三崎さんが盛大にすっ転んだ。俺たちは慌てて彼女の元に駆け寄って手を差し伸べた。三崎さんは「えへ

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第7話 俺の役割はなんだ

第7話 俺の役割はなんだ

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 さえぎる物がなにもない状態の日差しというのは、まるで凶器みたいだ。おまけに海面の反射も慌ただしい。「そろそろ休憩しねぇか」と目の前の無表情の背中に話しかけるが、応答がない。
 灰原は現在、母星との交信で俺に構っている暇はないらしい。視野が極限まで狭まっているようで、先回りして彼女の目の前に立ちはだかったとしても、無言でかわされるという屈辱を、俺は何度か味わうことにな

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第6話 もういい?

第6話 もういい?

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 寝違えたときの痛みに近かった。いや、規模はあんなかわいいものではなかったが、なんというか、正しい姿勢というか、あるべき位置に体がおさまっていないような、そんな感覚。全身がそんな痛みに包まれた状態で、俺はどうにか上半身を起こした。
 突っ張った腕の感覚に反して、思っていたほど頭が持ち上がらない。手のひらをついた先が崩れたせいで、再びうつぶせの状態で倒れこむ。どうやら、ま

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第5話 MIBだったもぉぉぉ

第5話 MIBだったもぉぉぉ

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 宇宙歴×××年、惑星ノースシードウに住むカーウタン星人は異星人グレイノテールの侵攻により滅亡の危機に陥っていた。残された数少ないカーウタン星人は惑星ノースシードウを捨て他惑星に避難を試み、散り散りになったのである。

「その生き残りのうちの一人がわたしなんだもぉぉぉ」

 牛頭の地球外生命体が話を終え、俺らは沈黙した。話を信じる信じないは置いておくとしても、宇宙船

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第4話 「なにかおかしい」

第4話 「なにかおかしい」

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 閉じられた瞼をゆっくりと開けると見慣れ始めた砂の地面が広がっていた。こんな状態になったというのに俺はなぜだかホッとしてしまう。
 ゆっくりと起き上がって近くを見渡すと他の面子も同じように倒れている。一番近くにいる灰原に手を伸ばした俺は視界の端に入っている景色に動きを止めた。
 なにかおかしい。
 ゴミ一つ無く人がいた形跡のない砂浜に、どこまでも果てしなく続いている水平

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第3話 「迎えが来た」

第3話 「迎えが来た」

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 真っ先に反応したのは、男の俺や能登ではなく、この不思議メンツの中で最もか弱そうな、未来人の三崎さんだった。
 細い手足を勢いよく降り、俺たちとの距離を引き離していく。記憶が霞んでいてハッキリとは思い出せないが、俺の50メール走のタイムは悪くなかったはずだ。全力で足を動かしているのにも関わらず、彼女の背中はみるみる小さくなっていく。
 しかし、三崎さんの走り方には違和

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第2話 「何て?」

第2話 「何て?」

第1話はこちら!

 野郎の微笑みを注視したところで何も楽しくはない。
 壮大な隠し事を何気なく打ち明けるように囁いた彼へ、俺は「ああそう」と努めて気のない返事をした。いや、心の底から強い想いを込めて感情の含まれない返事をした。

「それで、あんたは心当たりとかない? 漂流したとか……」
「いえ。向こう一ヶ月はそういったスケジュールは入ってないはずなので」
「なんでタイミングによっては漂流ワンチャ

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第1話 「秘密です」

第1話 「秘密です」

 人生は闇鍋だ。どれだけ慎重な選択をしても最悪の結果を引き当ててしまう。そう考えれば俺の現状も起こるべくして起きた結果なのだろう。

「つまり、あんたらは宇宙人と未来人と超能力者だって言うわけね」

 見知らぬ砂浜で目が覚めた俺が初めに得たのは、頭に電波の入った男女三人が自称した身分だった。それだけでも充分に頭が痛いくらいなのに、さらに悩みの種がもう一つ存在している。
 俺自身の記憶が欠落している

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