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#短歌
森比左志さん歌集『月の谷』
2018年11月9日に、大好きな絵本『はらぺこあおむし』(エリック・カール作)の翻訳を手がけた児童文学者の森比左志さんが逝去されました。森さんは、わかやまけんいちさんらと「こぐまちゃんえほん」シリーズの集団制作もされています。
逝去を報じる新聞記事で、わたしは森さんが歌人としても活動されていたことを知りました。
短歌と児童文学の両方が好きなので、ぜひ森さんの短歌を読んで見たいと思ったのですが、
ふくらむ時間(2003年)
十六歳の時に短歌を作り始めてから十年間、ずっと新仮名遣いを用いていた。昨年八月に出版した第一歌集『草の栞』は、だからすべて新仮名遣いによる歌集である。意識的に選んだわけではなく、当初それが自分にとって自然だったからだ。古典の時間に習う歴史的仮名遣いが、自分を表現するのに都合の良いものとは思えなかった。
ところがここ数年、しだいに新仮名遣いでの作歌に違和感を覚えるようになってきた。一年ほど前から
エッセイ+短歌「ひいな」
ばらの模様が入ったセーターを着る。
杏の香りの紅茶を飲む。
窓を開けて、ひかりを浴びる。
爪を磨いてさくら色に染める。
立春を過ぎたといっても雪に埋もれた毎日なのだが、少しでも心に明かりを灯して春の準備をするために行う、小さな儀式を思いつくままにあげてみた。歌をうたうのもいい。掃除機をかけながらうたうのが好きだ。声がちょうど良く邪魔されて、上手に聞こえる(ような気がする)。
部屋が
エッセイ+短歌「花の名は。」
それは二十代半ば、京都へひとりで旅行したときのこと。おのぼりさんのびんぼう旅行ですから行くところは修学旅行とさして変わりません。本当の高校の修学旅行のときコースに入っていなかった宇治に足を伸ばして平等院に感動し、宇治川に「これが宇治十帖の…」と感慨を深めたくらいのことです。それと祇園に吉井勇の歌碑を見に行きました。昼間の祇園で歌碑をさがす。なんと無粋な。あとは二条城に行ったり、清水寺で何組もの写
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