「ならぶんきれいで」方言短歌の魅力と限界
2022年10月から放送中のNHK「連続テレビ小説『舞いあがれ!』(桑原亮子・作 江戸雪・短歌指導)」では、主人公、舞の幼なじみで後に夫となる貴司が歌人である。
作中に出てくる貴司の短歌についての感想や鑑賞にはじまり、貴司が読んでいる歌集のタイトル(塚本邦雄『透明文法』や『寺山修司全歌集』など)の特定、さらには俵万智さんが登場人物に成り切って短歌を詠むなど、Twitter上の歌人たちも盛り上がっている。
2023年、2月23日放送の第100回では、貴司が子ども向けの短歌教室を開く。場所は4月の公園。無料の青空教室だ。
そこで、一人の男の子と貴司の間にこんな会話が交わされる
貴司の担当編集者、リュー北條が「名場面」と呼んだとおり、かなり重要な一コマだと思う。この男の子が帰りがけにわざわざ、
と言うくらいだ。
ところが、肝心のその短歌がわからない。
貴司が「見せて」と言ったあと、男の子のノートがなかなか長く写されていた。だが、わたしには読み取れなかった。
再放送を録画して、スマホのカメラで撮って、拡大しても……だ。
と、読める。しかし「ならぶんきれいで」とは? 「ならぶん」? 「奈良文?」
子どもの、おそらくはわざと幼く書かれた字なので、読み違えているのだろうかとも思った。だが結句八音なのは前述の会話から間違いない。
検索もしてみたが、わからない。
お手上げだ! ツイートで聞いてみた。
すぐに答えが返ってきた。
と。
というような説明をしてくれた人もいた。
言われてみれば、なるほどである。
さらにこんな返信もあった。
「ならぶん」が解決して安心したわたしに、「きれいで」の「で」が感嘆詞的な働きをしているという発想はなかった。
しかし「きれいだから」(理由)よりも「きれいだよ」(発見・報告)と解釈したほうが、生き生きとしていい短歌に思われる。歌に理屈を持ち込むと、つまらないのは方言(というと関西人は嫌がると、これもツイートの返信で教えてもらったが)でも標準語でも同じだ。
ここまでを踏まえて改めて読むと、しっかり観察され、感動があり、口語表現と自然な字余りをそのまま生かした素晴らしい短歌である。
しかし残念ながら初読では東北人のわたしには伝わらなかった。
おそらく声に出して読まれていたら、イントネーションやニュアンスでわかったのだ。方言(というと……以下略)短歌の魅力とむずかしさ、特に文字表記にした場合の限界について考えさせられた。
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