シーソーみたいな2人
『久しぶり。』
たった5文字の言葉
これを言うために何度も練習した
口から出てきた“久しぶり“は
案外すんなりいままでで1番自然だった。
僕と君はシーソーのようだった
初めて会ったのは中学の時
眼鏡をかけたおとなしめの女の子だと
勝手に思っていた
高校に入って眼鏡を外した君は
よく笑う普通の女の子だったけど
僕より少し大人な気もした。
大学生になった僕と君
両思いで付き合うようになった
どこで歯車が狂ったのか分からないけど
僕達は次第に喧嘩が増えていった
まだ若い僕と君は
自分の理想を相手に求めすぎたのかもしれない
僕が君に“鍵“を返したあの日
君はただ黙って鍵を見つめていただけだったね
あの日から5年
君と過ごした日々よりもずっとずっと短い時間
だけど過ごした時間よりも
ずっと早く環境は変わり僕も変えた
僕達はシーソーのような2人だった
お互いが必要でお互いがいないと動けない
だけど
僕が下にいる時
君は僕よりも上にいて
僕が上にいる時
君は地面に足をつけていた
いったりきたりのスピードが楽しくて
でもいつしかマンネリ化した時
お尻が痛いことに気がついた
お互い必要で見つめあっているのに
その距離は短くならない
大学を卒業してから5年
君はまだ小説を書いているだろうか
コーヒーは好きだろうか
沢山の流行り物に囲まれているのだろうか
地元のあの河川敷にはいったりしてるだろうか
入り口でばったりと会った君は
懐かしい笑顔で笑った。
『久しぶり、蓮。』
最後に会った時より君は少しふっくらしている
なんだか元気そうでよかった
『久しぶり。三島。』
『おいおいおい何やってんだよ2人とも〜早くこっちに来て座れよ〜お金でも5円でも落ちてたか??』
今日の幹事の上野が僕達に向かって言った。
『バーカ。お前は本当に小さい』
シーソーみたいな2人はもういない
『久しぶり』と言える
2人がここにいた。
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