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【福岡】金欠高校生が行く、アイソレーション船旅〈2/4〉

第1回を未読の方はこちらを先にどうぞ。




2日目

6時45分、僕はフェリーのベッドで目覚めた。グーテンモルゲン!
寝ている間は特に揺れを感じることもなく、そこそこ・・・・快適に寝られた。

船の微かな「ウウーン」という音や他のお客さんの音がちょっと気になったから、耳栓を持ってきておいて正解だった。静かな環境で眠りにつけた。
が、6時くらいになるとだんだん耳栓が外れてきて、さらにもぞもぞ起き出してくる方もいたので、僕もつられて早起きしてしまった。


8時30分、着港。
ついに福岡の新門司港に着いた。僕はこれが九州への初上陸だ。
ここからは無料送迎バスに乗って門司駅へ向かう。

新門司港の辺りはあまり都会じゃないので、バスの窓越しにも地元住民の生活感が伝わってくる。
知らない田舎町は見ていて面白い。


朝早そうな写真

信じられないくらい朱色をした神社(後で調べたところおそらく御所神社)を通り過ぎ、バスは門司駅に到着した。
駅のデザインは近未来的だ。


左の看板のスイミングスクール感

朝食にする。
近くにあったダイレックスというスーパーで、福岡メーカーのご当地パンを2つ購入。
ダイレックス、恐竜図鑑に載っていても違和感のない名前である。

旅行の醍醐味といえばその土地特有の文化を肌で味わうことであり、それを最安で体験できるのが地元スーパーなのだ。


せっかく海沿いの町に来たからには、海を見ながら食事をしなければ海に対して失礼というもの。
海岸のベンチに腰かけ、さきほど調達した物資を腿の上に広げる。

2つで183円

福岡ではおなじみのパンだという「マンハッタン」。リョーユーパンという福岡県の会社が製造している。
食べてみるとハードなチョコがけドーナツで、甘すぎず油っぽくもなくとっても美味しい。山崎とかのドーナツは油分が多すぎて口内がザラザラすることがあるけれど、マンハッタンは嫌な油の重みを感じない。
県民に愛される理由がよく分かる。
家に帰ったら簡単には食べられなくなるのか、と心底残念になるくらい美味。

続いて「阿蘇牛乳仕立てのホイップクロワッサン」。フランソアという同じく県内メーカーの商品だ。
3割引のシールについ誘惑されて買ってしまった。だが、いくらお買い得でも味が良くなきゃ結局は損である。
と思って一口食べると、これがまたべらぼうに美味しい。ミルク感満載のクリームが贅沢。僕はこういうサクサク控えめのクロワッサンが好きだ。

ただどちらも400kcalオーバーなので、食べ過ぎには十分注意しなければいけない。旅行で食べ過ぎる、というのは手垢まみれの旅行あるあるだ。
それにしても、海を眺めながらの朝食はめちゃめちゃ気分が良い。僕の住む海なし県では絶対にできない所業である。


さて、腹ごしらえを済ませたところで、電車に乗って門司港駅へ。
名前は似ているが門司駅と門司港駅は別の駅だ。

これが門司港駅

門司港駅はなんと1891年に建てられた駅で、重要文化財に指定されている。
重文に指定されている駅はここと東京駅だけというから、その凄さが分かるだろう。


奥の建物はプレミアムホテル門司港

門司港駅を拠点としたこの地域には主に大正時代の建築物がたくさん残っており、門司港レトロと呼ばれて観光客で賑わっている。
午前中はこの辺りを散策することにする。


駅から少し歩き、電気通信レトロ館に着いた。
とりあえずレトロって付けとけ!という適当ネーミングなのかと思ったが、この建物も大正時代のものなんだそうだ。疑って申し訳ない。

少し遠いが、NTTのロゴが目印

ここはかのNTTの企業博物館で、電話の博物館となっている。
グラハム・ベルが開発したものからスマホまで、150年にわたる電話の歴史を彩った名機たちが展示されていた。

電話で話された最初の言葉は、“Mr. Watson! Come here; I want to see you!”だといわれている

ダイヤル式電話・バブリーな携帯電話・ポケベルなんかも、実物を見たのは初めてだ。

年配の方は自らの人生と電話の歴史とを重ねて懐かしむことができ、若者はある意味新鮮な感覚で電話の歴史を学ぶことができると思う。
世代によってそれぞれ異なる楽しみ方ができる稀有な博物館だ。一人で訪ねるよりかは、年の離れた人と一緒に来るとさらに面白いかもしれない。
スマホがもはや生活必需品となった現代においては、すべからく訪れるべき博物館だといっても過言ではない。

入館料が無料なのも嬉々ポイント。


博物館を出るとそろそろお昼なので、こがねむしという喫茶店へ昼食を食べに行く。

このお店は喫茶店ということもあって雰囲気がバツグンに良く、店主?の女性のいい塩梅なフレンドリーさもその雰囲気に一花添えていた。
僕にとっては初めての喫茶店でやや体を固くしながらの入店だったが、女性の愛想の良さに自然と緊張もほぐれていった。

700円

注文したのは焼きカレー
栄町銀天街(下の写真)にかつて存在した和食店が焼きカレーの発祥地だといい、旅行計画の初期から食べようと決めていた。門司には他にも焼きカレー屋はいくつもあるが、発祥地からの近さでこのお店を選んだ。

コクのある日本風カレーライスの上に、これでもかとのびーーるチーズが乗っている。フライドオニオン・アスパラ・コーン・牛肉・ベーコンと具材もたくさん入っており、途中でスパイスも足せるので最後まで飽きることがない。
700円でこの質と量は激烈にお得だ。満腹です。

焼きカレー発祥の商店街。また違った方向性のレトロでいい


お昼頃になると門司港レトロは混みだす。
ここにも修学旅行生がいる。おそらくは中学生だろう。
最近は、年を経るごとに自分より年下の人がだんだんと増えていくのを如実に感じられるようになってきた。
子供特権はあと数年で切れるから、今のうちに使っておかなければと焦る思いが募る。

少年のような眼差しをして門司港レトロを逍遥してみる。


北九州市大連友好記念館

こちらは、北九州市と中国の大連市が友好都市となって15年目に記念として建てられた建物だ。
かつて大連にあった東清鉄道汽船会社の事務所が再現されている。


ブルーウィングもじ

この橋はなんと全国で唯一の歩行者専用の跳ね橋だそうだ。僕は「唯一」という言葉に弱い。
今回は残念ながら跳ねているところを撮れなかったけれど。

また、公式サイトによると、カップルで渡ると幸せになるとか何とか言われているらしいが、完全に言った者勝ち状態である。この橋のどこに恋愛要素があるというのか。
せめてハートのオブジェを設置するとか名前を「ラブラブピンキーブリッジ」にするとかしてほしい。

ところで、写真でちょうど橋の下を通っているのは門司港レトロクルーズという観光船。
僕は小さい船だと酔うから乗れない。


海峡プラザ

船溜まりに沿うように、いろいろなお店が建ち並んでいる。
写真右下に小さく見えているのはバナナマン像
芸人さんの像ではなく、ここはバナナの叩き売りの発祥の地らしい。
みなさんも「百と九十、八十、七十、六十とは頂かないよ、五十、四十と三十とどうだ」という口上を一度は聞いたことがあるのではないだろうか。


では、そろそろ門司港に別れを告げ、次は小倉駅に移動するとしよう。

言い忘れていたが、門司港駅は駅舎がめちゃめちゃに良い。

ゴージャス

こういう主に観光客のための電車に初めて乗ったかもしれない。
いつもは通勤通学が主目的の電車でそっけない作りだったが、この電車は外も中もどこかゴージャスに見える。

ゴージャス

きょろきょろと観察していたら、電車の床がQRコードに見えてきた。
頑張ったら読み取れないだろうか。どんなサイトに飛ぶだろうか。素直にJR九州の公式サイトとかかもしれない。

読み取ってみよう


電車が発車した。隣のお客が紙コップのコーヒーを座席に直に置いている。こぼれないか不安になってくる。

コーヒーに怯えながら悩んだ結果、小倉駅で降りずにお隣の西小倉駅で降りることにする。一人旅の醍醐味、直前の予定変更だ。
どうせ歩いて西小倉方面に行く予定だったし、大きい駅は怖いから行きたくなくなってきた。
何事も大きすぎるのは良くない。


西小倉駅

あまり大きくない西小倉駅で降車し、予定していた通りに松本清張記念館へ直行する。

なぜか裏側から撮影

入館料は360円。
高校生は博物館とかの料金が安いのでだいぶと助かる。これも子供特権か。

ここであるあるを思いついた。気づいちゃった。早く言いたい。
「博物館や美術館のトイレ、広くて綺麗がち」。
都会で一人きりになって個室で休憩できるのはトイレだけだったりする。トイレが綺麗だと、旅先の見知らぬ土地での安息地となるのだ。
ちなみにこの記念館のトイレももれなく綺麗だった。

……尾籠な話はいったん置いておいて、肝心の展示内容の話をする。
清張の作品は旅行までに2冊しか読めていないが、そんな僕でもわくわくするようなものばかりだった。
清張が実際に執筆していた家がそのまま展示されてあったりと、予想よりも見応えがあって大満足だ。

彼は41歳でデビューした比較的遅咲きの作家であるのにも関わらず、たった一人のためにこのような記念館が作られている。
この事実からも彼の偉大さがよく分かる。
僕も記念館を作られるような人間になりたいものだなと思った。


マカロニ星人


次は森鴎外の旧居を見に行こうかと思っていたが、迷いに迷ってしまったので泣く泣く諦めた。迷い牛に憑かれているのかと思うくらいに迷った。
せっかく氏の作品を4つ読んで予習したのに。
この辺か!と思ったら無料案内所だったりして、その時は心の折れる音が聞こえた。


気を取り直して、小倉駅から博多駅に向かうことにする。
が、電車のタイミングが悪くて20分くらい待った。こんなに時間があるなら鴎外を諦めなきゃよかったかもしれない。
せっかく取り直した気がまた落ち込んでいく。

それはそうと、福岡に来て、エスカレーターでリージョンギャップを感じた。
エスカレーターで立ち止まる際、みんな左側に立っているのだ。後で調べてみたところ、関西は右側に立つけれどもそれ以外は左側なんだそうだ。
とはいえ最近は歩かずに立ち止まって乗るように言われているし、この文化もいずれはなくなっていくのかもしれない。


電車に乗って席に座ると、たくさん歩いたからか眠気が増してきた。
小倉から博多は意外と離れている。新幹線で行けば15分くらいだが、快速だと1時間くらいはかかる。新幹線はすごい。
いよいよ本格的に眠くなってきた。これが1/fゆらぎというやつか!
まだ着くまでに時間もたっぷりとあって寝過ごす心配はないため、車内で少し寝た。


ギリギリで起き、博多駅で無事に降りることができた。ちょっと危なかった。
これから今日泊まるホテルへと移動する。
ホテルとかの宿泊施設は、僕がいつも旅行で最も楽しみにしている要素だ。

18時20分、博多駅から歩いて10分ほどの所にあるアパホテルに到着。
旅行支援の割引で1泊4800円。旅行支援のおかげです!旅行支援の!

一人でホテルに泊まるのももちろん初めてだから、部屋へと向かうエレベーター内でのうっきうきが止まらない。


いざ、オープン・ザ・ドア。

おお、噂には聞いていたがこれがアパ一族の著作たちか。
なかなか思想が強そうである。


真面目に部屋をレビューすると、思っていたより清潔感があっていい。
アメニティも必要最低限のものは一通りそろっていると思う。
部屋全体の写真を撮り忘れたのが痛恨のミスだが、広さも1人なら問題ないくらいで快適に一夜を明かせそうだ。


唐突に夕食を食べる。

「フレッシュな食品を!!」のエクスクラメーションマークがいい感じ

博多駅の中にある博多ステーションフードというスーパーで購入。
実はさっき寄っていたのだ。

合計726円

酢鶏と鶏めし弁当を買ってきた。
九州といえば鶏肉のイメージがあるので鶏尽くしにしてみた。

酢鶏は普通に旨い。
餡には酢の奥行きが感じられ、衣付きのもも肉はお惣菜にしてはジューシーだ。野菜はちょっとしなびた感じがするけれど目を瞑っておく。そのほうが食事を楽しめるから。
僕の近所のスーパーでは酢豚をよく見かける気がするが、あえて酢鶏なのは九州だからだろうか。

メインとなる鶏めし弁当、これも美味しい。
鶏めしおにぎり・鯖・鶏の唐揚げ・ひじきの煮物・卵焼きなどが詰められている。
おにぎりは冷めてはいるものの固くなく、炊き込みご飯のような落ち着く味付けも好きだ。鶏めしはずっと食べたかったのでその念願が叶って嬉しい。

おそらく多少の旅行バフはあるものの、どちらも非常に美味しくてお値段以上の満足感を得られた。


この後僕がお風呂に入るシーンはグロいからカットするとして、お風呂から上がってほかほかの僕はVODを観ることにする。

VODは「Video On Demand」の略で、早い話ネトフリとかアマプラみたいなサービスのことだ。
そのVODが、アパホテルでは部屋のテレビで無料で観られるのだ。
無料という部分が特に重要だ。こんなの観ない手はない。

逸る気持ちを赤く光る誘導棒で制止してベッドに潜り込み、何を観ようかとリモコンをカチカチしていると、ちょうど自分好みのものを発見した。
よし、今夜はこれでお楽しみだ。

僕は『仮面ライダーオーズ 10th 復活のコアメダル』と『ラバーガールLIVE 史上最高の夏!』の2本を観賞した。
仮面ライダーのVシネに加え、お笑いライブまで用意されているとは、このVOD、なかなか良いセンスをしていやがる。


観終わったら、明日に備えて23時半に就寝。
ベッドが広い!




続けて第3回もぜひお読みください。


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