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魂のこよみ

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Anthroposophischer Seelenkalenderは,ドイツの神秘思想家ルドルフ・シュタイナー(Steiner, Rudolf)が1912年に発表した詩篇形式のカ…
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【R. シュタイナー『魂のこよみ』】8月第4週

【R. シュタイナー『魂のこよみ』】8月第4週

それは静かな凪のようで

波や渦やに比べたら
流れが緩慢にも思える

しかし ひたひたと
確実に 何かが満ちていく

自分たることの意味が 
遠からず 必ず溢れ出す

変化は常に カタストロフィーとして生じるのに違いない

※Rudolf Steiner,
Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochensprüche
Rudolf Steiner Verla

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【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第5週

【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第5週

肌に感じた 白い熱
瞼を貫いた 明るい光
鼻腔を抜けた 青くさい香り
舌を転がった 丸い甘み
鼓膜に響いた 鈍いわななき 

世界に向けて開いた 五感の扉から
私は全身で 
その広がりを受け止めた

魂の奥まで 鮮やかに浸透した
世界の輝きは

内的な仄暗い夜に
きっと私を照らす

はじめから私の中にあった 
懐かしい灯火として

※Rudolf Steiner,
Anthroposophisch

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【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第3週

【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第3週

忘我の光の海にたゆたっていた

私という区別はどこかに置き去って
ただ気持ちよく目を瞑り

輝く水面を
大の字になって当て処なく

しかしふと感じる

生まれてきた意味を
私が わざわざ私として ここにある訳を

※Rudolf Steiner,
Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochensprüche
Rudolf Steiner Verlag, Do

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【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第4週

【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第4週

世界の鮮やかさに気を取られ
つい忘れてしまう

答えは 他ならぬ私の中にあり
有無を言わさぬ確かさを持って
つねに輝きを放っていたことを

外の白熱に目が眩んだ日も
内なる光に目を背けた夜も

それだけが持つ 唯一の輝き
私が私であることを証す 明らかなる根拠

このかけがえのない恩寵を
抱きしめて生きなければならない

※Rudolf Steiner,
Anthroposophischer Se

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【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第2週

【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第2週

白く輝く光に全身をゆだね
世界に融解した私は

あなたとイコールの
未分の境地で

いつしか
私なるものの苦味を忘れていた

思考は 朝に消えてしまう夢のように
形を成しては解けていく
イメージの戯れ

掴もうにも像を結ばず
あるいは
その結ばなさが心地よかったのかもしれない

そこへふと
舌の奥に感じる ほろ苦さが
微睡む私を揺さぶる

書庫の奥の奥で
長いこと顧みられず
埃をかぶった分厚い書物

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【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第1週

【R. シュタイナー『魂のこよみ』】7月第1週

恍惚の高みで 
耳の奥に 鈍く響く音がする

何かが私に知らせている
 
温かい熱気に 
無限大まで広がった私は

鳥の羽のように
自由に舞い上がった私は

きっと目覚めなくてはならない

その広がりと自由さが
どこかに 深く裏打ちされた
必然の現れであることに

※Rudolf Steiner,
Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochensprüche

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【R. シュタイナー『魂のこよみ』】6月第4週/夏至

【R. シュタイナー『魂のこよみ』】6月第4週/夏至

私の中の太陽よ

闇の支配する夜も
分厚い雲の奥で
白く燃え続けた 熱い光よ

この世界の 眩い輝きは
紛れもなく 
お前そのもの

雲はいつしか消え去り
あんなに憧れた 高い空で
私は世界の懐に
安心して全身を委ねる

もう大丈夫 怖いものはない
ただ ひたすら 
光の中で

※Rudolf Steiner,
Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochen

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【R. シュタイナー『魂のこよみ』】6月第3週

【R. シュタイナー『魂のこよみ』】6月第3週

「世界は美しい」

太陽の白い光に 照らされて
事物は それぞれの輝度を増す

番を待ち兼ね こぼれだす花びら
領分を越え 縦横に繁茂する草木

光に貫かれた生命の渦巻きに
思わず引き込まれ

その美しさに心動く時

私は 消えてなくなる

光は私をも貫いて
世界と私は 等しく輝くから ああ

「私も美しい」

※Rudolf Steiner,
Anthroposophischer Seelenk

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【R. シュタイナー『魂のこよみ』】6月第2週

【R. シュタイナー『魂のこよみ』】6月第2週

思いきり
上に手を伸ばした
昇りゆく太陽に おいていかれないように

気づけば
むっとする土の匂いは はるか下にあって
私は 強い光の中にいる

光が私を抱いているのか
私が光を放っているのか

ともあれ もう意味をなさない
これが私だと思っていたものは

あまりに小さく あまりに大きく

鼓膜がかすかに膨らんで 震える
無限の彼方へ 

※Rudolf Steiner,
Anthroposoph

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【R. シュタイナー『魂のこよみ』】6月第1週

【R. シュタイナー『魂のこよみ』】6月第1週

木の葉を透き通してくる
白い光のシャワーに
境界が溶けていくようだ

眩しさに
2秒も目を開けていられない

風に揺れる花も
道端に落ちた松ぼっくりも
赤く佇む郵便ポストも
すれ違う犬も
私も

目を細め 
初夏の熱に 温められて
うっとりと 溶けていく

光のシーツに飛び込んで
白い温もりに ほおずり

全身を包まれて 満たされていく
今は ただ

※Rudolf Steiner,
Anthro

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【R. シュタイナー『魂のこよみ』】5月第4週

【R. シュタイナー『魂のこよみ』】5月第4週

草木が萌える

下から湧き上がる 無限の奔流
むせ返るような 生命の匂い

輝く緑と一緒になって昇り
真っ白な光に 身を委ねる

この瞬間
あらゆる疑いが消え去る

無我 夢中

白い光の中で

※Rudolf Steiner,
Anthroposophischer Seelenkalender:52 Wochensprüche
Rudolf Steiner Verlag, Dornach(Sch

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【R. シュタイナー『魂のこよみ』】5月第3週

【R. シュタイナー『魂のこよみ』】5月第3週

天を駆け上がり
太陽に近づきすぎたイカロスは

たしかに恐れ知らずで 
傲慢だったかもしれない

でも
太陽があんなに輝いていたら
背中に大きな翼があったら

誰だって
飛んでいきたくなる

羽ばたきの音
フワッと軽く どこまでも舞い上がる

温かく 熱く 上気する頬
目が眩む 真っ白な恍惚

──ああ,予感よ。

遥か先を見通して
向こうみずな私の手をとり 導いてほしい

切なくも大胆なる
やむ

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【R. シュタイナー『魂のこよみ』】5月第2週

【R. シュタイナー『魂のこよみ』】5月第2週

地の割れ目から
あふれんばかりに咲く野の花に
奇妙に惹かれることがある

どうしてそんなに無邪気に
自分の色はこれだと 主張できるんだろう

世界が外へとほころび出して
生き生きと 笑み 広がるとき

それは無時間の中では実現しない
鮮やかな生の横溢

無力であるのに 何より力強い
確固とした生の湧出

花と咲き広がる 世界の脈動が
私の心臓と リズミカルに 響き合う

※Rudolf Stein

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【R. シュタイナー『魂のこよみ』】5月第1週

【R. シュタイナー『魂のこよみ』】5月第1週

皮膚を透き通す 確かな光に誘われて
今 明るみに出ていく

人知れぬ 胸の中で
私だけが愛して
大事に 温めていたものたちが

てらいなく  
惜しみなく
とめどなく

でも,私にもわからなかった

こんなに温かな色が
私の中にあったなんて

こんなにたくさんの蕾が
世界に開いていくなんて

※Rudolf Steiner,
Anthroposophischer Seelenkalender:52

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