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情報を活かすのか見過ごすのか①自由研究や探究学習にも!世界遺産の最新ニュース②文部科学白書を読むのは誰か?【教育ニュース最前線vol.11-2】

【教育ニュース最前線vol.11】
日々報じられる教育関連情報から、教育業界への影響が大きいと思われる内容を、代ゼミ教育総研 研究員・編集チームが厳選してピックアップ。
それぞれの分析・私見を述べます。
教育・学校・入試について関心がある方々の、考えるヒントとなりましたら幸いです。

\\ ✨Vol.11は2日連続投稿 ✨//
11-1:教育現場でデジタルとアナログを最大限活用するには?💻
11-2:情報を活かすには?世界遺産の最新ニュースと文部科学白書📰



①世界遺産の最新ニュース

2024年7月、インドのニューデリーで第46回世界遺産委員会が開かれました。佐渡島の金山が登録されたことは大きな話題になりましたね。

その他に登録された遺産は23件、危機遺産リスト入りが1件、危機遺産リストを脱した遺産が1件、でした。

詳しくは下記もご参照ください。

▼2024年登録の新規遺産について(世界遺産検定・8/1)

💡自由研究や探究学習のヒントに

世界遺産は、一定の登録基準を満たして選定された遺産であり、その登録基準の根拠を調べるだけでも多くの学びや発見があります。

世界遺産として認定されていることで世間の注目を浴び、既に多くの情報ソースがありますので、自由研究や探究学習の素材として扱うのにもお勧めです。最新の世界遺産一覧は世界遺産検定Webサイトから確認できます。

まずは、自分の地元の世界遺産や、旅行先の世界遺産、あるいは行ってみたい世界遺産など、取り扱いたい世界遺産をピックアップしてみましょう。

「世界で一番○○な世界遺産を調べてみる」「あの映画に出てきた世界遺産は?」「なぜA遺産は世界遺産なのに、B遺産は世界遺産になっていないの?」など、自分独自の視点でピックアップするのも面白いですね。

さて、ピックアップした世界遺産を詳細に調べていきましょう。世界遺産を紹介する時、えてしてポジティブな面ばかりにフォーカスしがちですが、あえてネガティブな面についても調べる意識を持つことで、多角的な視点を持った調べ方にすることができるでしょう。

例えば…

佐渡島の金山の過酷な労働/日韓問題
NPO法人 世界遺産アカデミー主任研究員の宮澤氏は、世界遺産に決まった(決まりにくかった)背景や、世界遺産の光の面と影の面についても、詳細に取り上げています。ぜひご一読ください☟


オーバーツーリズムの与える影響

世界遺産の所在する都市が活性化するのは大変喜ばしいことですが、反面、オーバーツーリズムが与える悪影響も大きいです。こちらのYouTubeもご参照ください☟


危機遺産

今回新たに世界遺産に登録された「テル・ウム・アメル」(聖ヒラリオン修道院/テル・ウンム・アメル」は、世界遺産に登録されたと同時に危機遺産にも登録されました。イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘によって、危機にさらされています。
詳しくは☟


* * *

①なぜその世界遺産を選んだのか
②その世界遺産の概要と登録基準
③ポジティブな面
④ネガティブな面
⑤今後の展望

など、世界遺産について調べられること・考えられることは無数にあります。

生徒さんは自分なりの視点・複数角度からの視点を織り交ぜることで、オリジナルの自由研究やワークシートを作成できます。教員の皆さまは世界遺産を活用することで自由研究や探究学習の課題が設定しやすくなるでしょう。

* * *


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②文部科学白書を読むのは誰か?

『令和5年度 文部科学白書』が公表されました。

令和5年度 文部科学白書(文部科学省・7/31)

全て含めると、288ページありますので、読み通すのは容易ではありません。

しかし、私たちが生きる日本の社会には数多の危機があり、教育にも深刻な課題があります。白書は、現状や課題を分析し将来の展望をまとめたものであり、政府の施策について国民に周知するためのものです。

各メディアが大いに論じ、教育の当事者は一通り目を通すとよいと思います。

 構成は次のとおりです。

【第1部 特集】
 特集1 文化庁の京都移転を契機とした新たな文化行政の展開
 特集2 「せかい✖︎まなびのプラン」に基づくグローバル人材育成の推進

【第2部 文教・科学技術施策の動向と展開】
 第1章 教育施策の総合的推進と生涯学習社会の実現
 第2章 初等中等教育の充実
 第3章 高等教育の充実
 第4章 私立学校の振興
 第5章 科学技術・学術施策の総合的推進
 第6章 スポーツ立国の実現
 第7章 文化技術立国の実現
 第8章 国際交流・協力の推進
 第9章 ICT活用の推進
 第10章 安全・安心で質の高い学校施設の整備、防災・減災対策の充実
 第11章 東日本大震災からの復興・創生の進展
 第12章 文部科学省改革、行政改革・政策立案機能強化に向けた取組

【追部】
 ・令和6年能登半島地震への文部科学省の対応
 ・参考資料
 ・索引

 💡研究員はこう考える

「白書」は誰のためのものなのでしょう。

それは、国民のためのものであり、国民とは私たちです。

「白書」には、国民に正確な情報を提供し、政府と国民との意見交換を促し、政策に対する国民理解を深める役割があります。

いくつかピックアップします。 

第2章では、現行学習指導要領の目的を再確認し、子どもたちの学力・学習状況について述べています。これらを踏まえた次期学習指導要領の活発な議論が望まれるところです。

「教師を取り巻く環境整備」にも紙幅を割いています。教員不足問題は拡大、悪化しており、迅速な対応が求められるところです。

▼(参考記事)中学・高校の国語教員採用予定55人なのに出願27人…新潟県、志願者少なく追加募集へ(読売・8/2)


第9章では、「教育のICT化に向けた環境整備5ヶ年計画」(平成30〜令和4年度)が二年間延長され、約1,800億円が投じられたことを伝えています。令和7年度以降のICT環境整備についても中教審で前向きに議論されています。

 第10章では、老朽化した校舎の問題を取り上げています。耐震化も不十分です。公立の学校でも、改築・改修が遅れ、新たな学びに対応できる学習環境のアップデートも遅れています。


「能登半島地震への文部科学省の対応」

ところで、私が最初に読んだのは、追部の「能登半島地震への文部科学省の対応」です。

地震がもたらした教育への影響と対応が報告されています。そして最後にこう記されています。

今回の震災対応では、文部科学省として、被災地における学校の早期再開や、避難生活中子供たちの学習面・メンタル面のサポート等、被災自治体からの要望に寄り添った総合的な支援を行いました。しかしながら、被害の大きかった学校では、令和6年4月の新年度を迎えても他の学校に間借りする状況などがあり、引き続き被災地に寄り添って支援していくことが重要です。

 私は、ネット検索や生成AIに尋ねるなど調べてみるのですが、子どもたちが置かれている現状がなかなかわかりません。ニュースをチェックしていると、被災地の復興が不十分であることはわかります。

▼能登半島地震の避難者はなぜ減らない?地震大国ニッポンの復興を遅らせる「最悪の逃げ口実」とは(DIAMOND・7/4)

 この記事では、仮設住宅の建設が進まず、地震の発生から半年経ち、未だ2,086人が避難していると伝えています。

たとえば、その中に高校生はいるのでしょうか。

「被災自治体からの要望に寄り添った総合的な支援」を被災した人たちはどう受け止めているのかもわかりません。

「白書」をベースに、さらなる情報提供があればよいと思います。

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「白書」のさらなる活用を。

 情報提供と言えば、学校教育法第43条により、「学校は積極的に情報提供を行うべき」とされています。

私は、校長として、様々なメディアを用い、精力的に情報発信を行いました。広報では、よさを伝えることになります。「こんな素晴らしいことがあった」「生徒がこんな活躍をした」。

私は、これを読んだ先生や生徒たちがどう思うだろうかを気にかけました。

もし、学校の負の部分に目をつぶり、都合のわるい現実を直視せず、課題解決に取り組まないなら、しらけた気持ちになるはずです。

「一部のよいところだけ切り取って」と嫌な気持ちになれば、モチベーションが下がります。

「白書」も同様です。「白書」で述べられていることに直接関係ある人たちが、それを読んでどう思うかが大切です。いま、どんな思いでいるのか。何を願い、どんな政策を期待しているのか。

「白書」は完成して終わりではありません。

ここから対話が始まります。政府のこれまでの施策を評価し、今後につなげるためのものです。

文部科学省自身が、公表した「白書」をこれからどのように活用するのかを具体的に示すのがよいのではないでしょうか。



次回、vol.12もお楽しみに📓

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