【雑感】HRTechは、人材業界の業務をどのように変えるのか ーテクノロジーが代替していく業務と代替できない業務ー
ここ数年、金融×tech(Fintech)、建設×tech(ConTech)というような◯◯Techという言葉が流行っている。
テクノロジーが導入され、急速に業界が合理化/効率化していく。
テクノロジーが導入された業界のサービス価値は、どのように変化し、そこで働く人々の働き方はどのように変化するのか。
今回は、HR分野ということで「HRTech」について考えてみたい。一つの業界の変化について書いてみるが、銀行業界や物流業界にも類似する変化が起こっているのでは?と考えている。
主に「HRTech」の中でも、特に採用業務における人材業界のサービス価値の変化、働き方の変化について考える。
・HRTech導入による人材業界におけるエージェントサービス価値
・今後どのような働き方の変化が起き、どのようなスキルが求められるか
また、人材業界という個別事象の分析から、類似する業界に当たる「情報の非対称性」という特徴を持つ不動産業界や商社業界などになにか当てはまる気づきを抽出できればと考えている。
▽「HRtech」とは
人事業界周りでは、「HRtech」という言葉が盛り上がりを見せ始めている。
「HRテック」とは、「Human Resources」(ヒューマン・リソース:人的資源)と「Technology」(テクノロジー)を組み合わせた造語で、クラウドや人工知能(AI)、ビッグデータ解析などを駆使し、採用活動や人材育成、人材配置、人事評価、給与計算などの人事領域の業務の改善を行うソリューションを示している。
【特集】時代遅れ“日本の人事”が変わる? 導入待ったなし「HRテック」関連株に飛躍の時 <株探トップ特集>より抜粋
採用を支援するエージェントとして、人事の方のお話を聞いていると、現状の人事業務は、細かいオペーレション業務が非常に多い。
人事の方の話を聞くと、「評価制度、配属業務、研修業務、採用業務」などについて、未来を見据えた「企画業務」などに「考える時間」を当てたい。
だが、現状は手をひたすら早く動かす事が求められる運用業務に時間を使わなくてはならない方が多い印象。
たとえば、一部の労務分野においては「SmartHR」といった新興のSaaSサービスが人事業務の効率化を後押ししている。
そのような流れを受けて、特に採用支援を行うエージェントが関わる人事の「採用領域」についても、HRテックが導入されつつある。
この採用業務の効率化により、人事の働き方がどのように変化し、これまで高い利益率を保ってきた人材業界で働くことにどのように変化が予想されるのか。
▽中途採用におけるエージェントサービスの価値とは
まずは中途採用におけるエージェントサービスの価値について、転職者側と求人を公開する企業側で整理してみたい。
◯転職者側について
・顕在化しているスキルやキャリアパスへのアドバイスや求人提案
-転職者のスキル棚卸し
-顕在化したスキルや志向性を元にした求人提案
→テクノロジーに代替される可能性が高い。履歴書のキーワード抽出により、求人提案を行うなどの機能が今後加速する可能性がある。
・潜在化しているスキルや志向性への気付きをもたらすこと
-顕在化していない価値観や志向性を言語化
-価値観や志向性への深い理解により、新しいキャリアの可能性を提示
→テクノロジーに代替されない可能性が高い。
・難易度の高い企業への選考アドバイス
→テクノロジーにより代替される可能がある。テキスト/動画での面接アドバイスなど。
・転職者へのモチベーションニング
→テクノロジーにより代替が難しい業務。候補者の顔色や声、非言語領域での情報を感じ、臨機応変に候補者にかける言葉を選び続けることは人にしかできない業務。
◯求人を公開する企業側について
・媒体募集に比べた選考工数削減ができること。
→今後は、テクノロジーにより代替可能性が高い。候補者への連絡や「候補者、人事、現場社員」の日程調整の効率化はテクノロジーにより代替されやすいオペレーション業務。
・転職意欲の高いDBへのアプローチができる。
→転職サービスも増加し、企業側からダイレクトアプローチできるサービスも増加している。転職意欲の高いDBへのアプローチできる価値は薄まっている。
・採用活動の最適化に対する提案が受けられる事
-採用ポジションにおける活躍人材の言語化
-企業/事業/求人ポジションの魅力ポイントの言語化
-中途採用市況/顧客の事業状況を踏まえ採用可能性のある人物の再定義
-選考に関わるステークホルダーの合意形成
→上記はテクノロジーにて代替しづらい業務。エージェントという立場の特性である第三者性を活かしている。
▽まとめ
HRtechなどのテクノロジー導入が今後加速することにより、
転職者側において、顕在化しているスキル/キャリアの希望に対する提案は、サービス価値として漸減する可能性がある。
企業側においても、人事のオペレーション業務の代替としての価値は、ITに代替され漸減。今後は代替できない「人が介在する必然性がある業務」が競争力の源泉になる。
転職者側のキーワードは、
「人にしかできない」や「潜在化したものへの気づきを与えること」
企業側のキーワードは、
「言語化へのサポートと関係者の合意形成」や「エージェントとしての第三者性」
上記のような流れは、「情報の非対称性」のビジネスモデルという特徴をもつ業界でも変化が起きるかもしれない。
ユーザ側の「今持っている知識」を活用したレコメンドや情報提供は、人よりも「場所性や時間性を超越するテクノロジー」が代替する。
また、ユーザとクライアントの間に入ることで効率化していた調整業務やオペーレション業務(各調整や手続き)などもテクノロジーが代替していく。
一方で、以下のような業務割合が必然的に増加するため、そこで価値が発揮できないプレーヤーは衰退するイメージ。
「人しかできない業務」:
・人を介在する事で、潜在から顕在への気づきをサポート
・上記を納得感のある形で言語化
・モチベーションニング
・コーチング(目的達成までの道のりを言語化)
「クライアントとユーザの間に入る事で担保される第三者性」
・利害関係のない提案やアドバイス
・第三者だからこそできる関係者の合意形成
・クライアントが気づいていないCV改善(課題設定及び打ち手の提案)
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