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マジで、音楽で、世界を変えようとした最凶のバカがいたって話 『グッド・バイブレーションズ』(2019)

80点/100


2024年3月20日に観ていて、アマプラかHULUに入っている人。

配信は、今日まで!!

このページを閉じて、これを観てくれ!!


…もう観たよね?

観たよね!!


まだ、観てない人へ


あなたは、『Everyday』という作品を知っているだろうか?


毎朝、目覚めると別の体に憑依し、人生を送る謎の存在"A"と主人公の少女の恋愛ストーリー。

SF?ファンタジー?

甘酸っぱいラブロマンス。

主演は、トムホ版スパイダーマンで、学校の放送委員のベティ役 アンゴーリーライス。


Aを演じる役者に

Netflixのゲットダウン、名探偵ピカチュウ、ダンジョン&ドラゴンズのジャスティススミス。


トムホ版スパイダーマンの親友 ネッドを演じたジェーコブバタロン。

他。


めちゃくちゃいい映画だが、

日本語字幕で、ソフト化されていない。
レンタルでの配信すらないのである。


本作『グッドヴァイブレーションズ』も同様に、観ようと思っても、観れなくなる映画ってことだ。


あらすじ


時は、1970年代。北アイルランド紛争で、宗教対立が絶えないベルファスト。

バーで、DJをしている音楽コレクターの主人公 テリーフーパー。

テリーは、小さい頃から、音楽が大好きだった。

幼少期、地元の子供に"カトリック"と決めつけられ、矢を放たれ、左目を失う。

時が経ち、バーで、DJをするも、誰も訪れない。

マルキストも、アナーキストも、社会主義者も、平和主義者も、フェミニストも、バーには、たくさん人が集まっていた。

しかし、血の日曜日事件が起こったことで、プロテスタントとカトリックに分かれて、互いに対立するようになってしまった。

テリーは、自分の流した曲で、一人、踊っているルースという女性と知り合い、結婚する。

テリーとルースは、指輪を交換し、家を買い、普通の人生を送ろうとしていた。

しかし、町は、悪くなるばかりで、テリーは、車で、拉致されそうになるし、テリーの親友のエリックは、反戦派の連中に、襲われ、ベルファストから、引っ越していく。

テリーは、ベルファストに足りないのは、音楽だと思い一大決心をする。

家を担保に銀行からお金を借り、爆弾横丁と呼ばれる事件の絶えないヴィクトリアストリートに"good vibrations"というレコード店を開く。

カトリック、プロテスタント両陣営をバーに集め、レコードを配り、見返りに店の前での募金活動の禁止。テリーを殺さないことを約束させる。

レコード店を経営し始めたある日、少年がテリーの知らないレコードがあるかどうか尋ねに来る。

その少年から、自分たちがパンクロックのライブをするから、ポスターを張らせてくれと頼まれ、テリーは、それに応じる。

気になったテリーは、そのライブに訪れると、たくさんの若者がパンクロックに興じている。

そこに王立アリスター警察官がやってきて、酒を飲んでいる若者に取り調べを始める。

警察と因縁のあるテリーは、止めに入り、"外で、ドンパチしてるのに、警察がやる仕事がこれか?”と警察に問いただす。

"関係ないだろ"と反論する警察。

"警察は、嫌いだ"と言うステージのパンクロッカーが"警察出てけ"と演奏を始める。

立ち去る警察。

テリーは、演奏を聴き、パンクロックを食らってしまう。

ライブ終わりにレコードを店に置かせて欲しいとパンクロッカーに頼むテリー。

しかし、ベルファストという町では、レコード作ることも出来ないと言われる。

そこで、テリーは、地元のパックロッカーとレコードを作り、レーベルを作ることになる。


誰かに知らせたい


noteのネタ探しで、映画を探してたら、ティモシーシャラメの『君の名前で、僕を呼んで』がアマプラで、13日以内で、配信終了となっていた。

そこで、配信終了作品を観てみることにした。

すると、3月20日付けで、終わる作品として、今作が紹介されていた。

あらすじを読んでみると、なかなか面白そうと観てみた。

"サイコーじゃないですか”

ソフト化されているのか調べる。

ソフト化の予定なし。

配信サイトは、少ない。

誰かに教えなければ!!

ということで、昨日のyoutubeの嘘くさい広告のような投稿になってしまったという運び。


北アイルランド紛争


youtubeで、ずんだもんの動画を観て、勉強した。

イギリス領の北アイルランドは、プロテスタント宗派たちが多く、カトリック宗派たちは、立場が弱かった。

1972年 ロンドンデリーで、カトリックがデモを行っているとき、イギリス軍に14人銃殺されるという血の日曜日事件が発生する。

それによって、カトリックのIRA暫定派とプロテスタントのイギリス王立アリスター警察との間で、バチバチの内乱になっていく。

1998年に終結するまで、内乱、テロが続いていた。

つい26年前まで、こんな事がイギリスで、起こっていた事に驚きを隠せない。


感想


今作は、全体的にコメディタッチなのだが、当時の映像が所々、差し込まれ、その生生しさは、映像ながら、すごく伝わってくる。


テリーは、家を勝手に、担保にするし、金がないのに、勢いで、レコードを作ってしまうし、ルースが妊娠したことを知ると、パタニティブルーになり、ルースがお産の際に、連絡がつかず、その頃、テリーは、バーで、女と喋っており、ルースに別れを告げられてしまう。

どうしようもないクズですよ。

彼が義眼だから、半分の世界しかが見えないから、子供のままなのかなと思った。だから、若者の音楽に触れ、彼たちと気持ちを共有出来たのかなと思ったりするが、それにしたって、クズだ。

最後の最後の最後まで、ダメダメなおっさんだった。


"ジャマイカとアイルランドは、似ているが、ジャマイカには、レゲェがある"

ディズニープラスのドラマシリーズ『sex pistols』で、[Anarchy In The UK]を製作するとき、レゲェのリズムをギターのスティーブジョーンズが提案する。

パンクの源流にあるのは、やはり、レゲェだと勉強になった。


テリーがカトリック、プロテスタント両陣営を集めて、レコードを渡して、店の前で、揉め事を起こさないように話すシーンもオシャレ。

レコードを貰っていた人達の一人が

"俺たちは、平和な時代を知っているから、レコードの良さがわかるが、レコードの良さを知らない若い奴らが一番ヤバいからな”

と忠告する。

それに対して、テリーが

"俺のレコードをなめるなよ"

マジかっけーっすわ!!


rudiがライブツアーに行って、ライブ会場で、男女が分断して、それぞれが端に座って退屈そうにしていたが、曲が始まると、真ん中に集まり、男女がダンスし出すシーンもオシャレ。

自分のレーベルが注目を浴びず、切ないテリーがイマジナリーフレンドのハンクウィリアムズに落ち込んだ顔をされて、"そんな顔するなよ"と答えるテリー。

その後、undertonesのteenage kicksを聴いて、感動するテリーの表情を見て、"そんな顔するなよ"と言うundertonesのギター。
オシャレ。


最後のアリスターホールで、ライブをするときに、客が誰も来ないと憂いていると、ラジオDJのジャンピールがやってきて、”ベルファストまでの旅は、快適だったが、このビルへ入るのが大変だった”という。

それで、テリー一同は、ホールの前に入りきらない程の人がいることを知る。オシャレ。

そんなお洒落な脚色がされていて、観ていて、非常にユーモアに溢れる作品だった。


当方が一番好きなシーンは、ツアー中の軍隊の検問シーン。

軍隊の一人が検問する。

"出身地は?”

それぞれが北、西、東、南と答える。

怪訝な兵隊。

"じゃ、カトリックとプロテスタントがつるんでるってのか?"

"そんなの考えたことなかった"

"政党でも作る気か?"

"政治なんて、ウンザリだ"

"俺もだ"

サイコー。

そして、テリー一行を解放し、安全なルートまで、教えてくれる兵隊さん。

サイコーです。


パートナーには、子を連れて、逃げられ、アナーキストみたいな連中にボコボコにされたテリー。

テリーの父親との会話で、

"俺は、12回も選挙に落ちて、辞めろと周りに言われた。"

"でも、だんだん理解してくれる人が増えて、得票数も上がっている"

"本当の勝利ってのは、他人に決められるもんじゃない"


それまで、店の前で、不買運動したり、息子の活動を否定するクソ親父だった分だけ、この言葉が染みる。

その言葉によって、テリーは、もう一度、人生を立て直すために、レーベルのライブをアリスターホールというデカいキャパで、行うことを決める。

よくよく考えてみると、テリーは、おやじが見てないところで、親父の言いつけを守っていた。

テリーは、なんだかんだ憎めないおっさんだ。

印刷業をやっている友達のデイブも、文句を言いながら、付き合ってくれるのもそんな奴だからだろう。


最後のシーンで、テリーが、"パンクは、俺たちに生きがいを与えてくれた"と演説する。

ベルファストの内乱で、大人のやっていることに呆れて、ジョーライドンやジョーストラマーに共感し、ギターを見様見真似で、かき鳴らす。

いつの時代も、音楽は、若者の鏡なのかもしれない。


ここまで、読んで頂き、ありがとうございます。
愛してるぜ!!

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