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nikki

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2021-2022

2021年は総合して、“他人の苦しみ”に苦しむ1年でした。

自分以外の人が苦しんでいる姿や、その地獄を垣間見ることで、自分もその苦しみを体験せんとばかりに、引き摺り込まれてしまうことが多かった。

やっぱり、苦しみや悲しみは伝染する。それが近しい距離であればあるほどに。

他人の苦しみはわかりっこないのに、理解しようがないのに、わかってあげなきゃ自分が解決してあげなきゃ寄り添ってあげなきゃ、とば

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青が群れる

群青とは、藍銅鉱を砕いたときの青が、群れ集まっている様子からついた色の名。群青という名に妙に執着し、この由来を知った今日。この世界で青いものと言えば空で、それは平坦を思わせ切れ目がないから、「点描の『青が群れる』」と表現されているのではないか、という考察が玉砕した瞬間だった。
石を「砕く」という行為から、色は単一ではなく集まって成っていることを思わせる。いろいろな要素が作用し合い、絡み合い、燻り合

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花を選ぶ時間

花を選ぶ時間

母の誕生日に、花を買った。
いつからだったか明確には思い出せないくらいには自然に、大切な人のプレゼントには花を選ぶようになった。

はじめは、明らかにかっこつけたい自分がいた。花を贈るのって思いつくようで思いつかないし、思いついても小っ恥ずかしくてなかなか実践できないところをやり抜くのがかっこいいし、なんかおしゃれだし、かっこいい。

お気づきのように、さっきの「いつからだったか明確には思い出せな

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無限の猿の定理

無限の猿の定理というものを聞いた。猿にタイプライターを打たせ続ければ、シェイクスピアの戯曲が完成するという定理だ。これは、反復により猿の知能が向上するということではなく、タイプを繰り返し続ければ、彼の戯曲と全ての文字列が一致する瞬間が訪れるという、途方もなく低い確率論である。

ただ、前提として、「打たせ続ければ」という無限の時間を約束している。例え世界が終わり宇宙が消滅しても続くものとして、その

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白魚になりたい

もうすぐ米寿を迎える祖父は、隔日ほどのペースでLINEをくれる。
遠方に住む親戚一同11人が集うグループラインに、他愛もない日常の出来事から、社会情勢についてまで、幅広い内容のメッセージが通知に流れる。
まるで短いエッセイのような、そのくらいの文量で、吹き出しの中に彼の抒情を凝縮する。
わたしは祖父のLINEが大好きだ。と言うより、彼の紡ぐ言葉が大好きだ。

『ゆっくり目の電車に乗って、ゆっくり目

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