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すーこ短編小説まとめ

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私の書いた短編小説(ショートショート含む)のまとめページです。 読者のみなさま、いつもスキをありがとうございます。
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2022年2月の記事一覧

子守唄に抱かれて

子守唄に抱かれて

 もうすぐ始まる一人暮らしに向けて、私は荷物をまとめていた。こうして部屋の整理をしていると、卒業文集や日記、アルバム、何度も読み返してぼろぼろになった本、18年間がんばってきた勉強に使った教科書やノート、幼いときの宝箱……たくさんの懐かしい物たちが次々と見つかって、一向に荷造りが進まない。来週にはここを出る。そんな思い出の詰まった品々や、砂遊びをしたり水やりをしてきた庭、壁のシミ、馴染んだ部屋の様

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アナウンス部SP大作戦~すまスパのみなさんへ捧ぐ

昨日、現「すまいるスパイス」メンバー全員集合のバレンタイン特別配信を拝聴しました。

抱腹絶倒の楽しい濃密なトークの一時間。
素敵なお声で耳が気持ちよくなり、話の持っていき方のうまさに感動し、誰も置いてきぼりにしない進行のおかげでみなさんにスポットライトが当たり、素敵な四名のみなさんのお人柄が感じられる配信で、あっという間に終わってしまいました。

「自分からは行けないけれど、追わ

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酒のない居酒屋

酒のない居酒屋

 「酒のない居酒屋」がコンセプトだという。看板に惹かれてその店に入ったのは、金曜日の深夜だった。

「いらっしゃいませ」
「一人、なんですけど」
「お好きな席へどうぞ」
 店内をぐるりと見回して、カウンターの一番隅の席に腰を落ち着ける。金曜日なのに、客は私一人。先輩と居酒屋に行くと、深夜でも金曜日は満席ばかり。こんなに静かな居酒屋は初めてだった。
「こちら、おしながきです。ごゆっくりお選びください

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【ピリカ文庫】花と雪舞う中で

【ピリカ文庫】花と雪舞う中で

 ほのかに梅の甘い香り漂う並木道を歩く。風が花びらを舞い上げる。雲一つない青空に花びらが映えて綺麗だ。花吹雪の下、僕は三年前の吹雪の夜を思い出していた。

***

 取引先から帰っているところだった。やけに冷えると思っていたら、はらはらと雪が落ちてきた。まずいな、このあたりはタクシーも通らないし、コンビニもない。腕時計を見ると、最寄りの最終バスの時刻はとうに過ぎている。大通りまでは早歩きでも一時

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