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「TIGER & BUNNY」サンライズは巨大ロボだけじゃない!

今回は、「TIGER & BUNNY」について少し書いてみたい。
これ、地味に人気あるんだよね。
ガンダム」等巨大ロボでお馴染みのサンライズにしては珍しい、アメコミタイプの正義のヒーローを取り扱ったものである。
2008年にはハリウッドで「ダークナイト」が大ヒットしてたし、そんな流れを受けての企画だったかもしれない。

「TIGER & BUNNY」(2011年)

しかし、「ヒーロー」というのは運営が難しいんだよなぁ・・。
たとえばバットマンの本質とは何かというと、あれは奉仕活動、慈善事業、すなわちボランティアである。
あのヒーロー活動によって彼は何の報酬も得てないし、その活動資金は全て自腹でしょ?
まぁ、彼の「中の人」は億万長者ゆえ、それが可能なんだけど。
じゃ、日本の仮面ライダー、あるいはゴレンジャー等の戦隊ヒーローたちはどうなのか?
これの細かい設定までは知らんが、多分ビジネスというよりボランティア系だと思うし、誰かしら志しの高い富豪のパトロンがいるんだと思う。
でも、そういうのって現実味ある?
・・ないよね。
ちなみに「ガンダム」等は所属が軍であり、そこに出てくる戦士たちは皆が軍人、すなわち公務員である。
よって、その資金はほとんどが税金で賄われているんだろう。
皆さん、「お国」の為に頑張ってるんだ。
だけど、「TIGER & BUNNY」はそうじゃない。
彼らのヒーロー活動はビジネスであり、スポンサー企業ありきのものである。
よって、彼らは企業の広告塔としてパワードスーツにたくさん企業のロゴをくっつけてるわけね。
そのヒーロー活動はリアリティショーとしてTV中継され、興行として成立している。
こういう設定が、なんとも現実的だよなぁ・・。

作中には「バンダイ」や「ソフトバンク」など、実在企業のロゴが入っている

きっと、この作品の裏テーマは、「コマーシャリズム」だろう。
ヒーローは治安維持という警察(公務員)っぽい側面がある一方、その本質は警察じゃないし、あくまで本分は営利企業の広告塔なんだよ。
そこに、ヒーローたち自身の葛藤がある。
事実、興行的に人気ないヒーローは企業から契約を切られちゃうということもあるわけで・・。
そうなると、もはや「正義」であるかどうかも怪しくなってくる。
事実、この作品に出てくる女プロデューサーは「正義」より「視聴率」の方に重きを置いてるし、企業のお偉いさんたちだって「正義」より「商売」の方が優先だろう。
そうなんだよねぇ・・。
実際このアニメとしても、プロデューサーとしてはアニメの中身云々よりも視聴率や円盤売上といった数字の方が優先事項だろうし、スポンサー企業のバンダイとしても、玩具さえ売れりゃあとは正直どうでもいいのよ。

上は商売優先、中身は度外視。
現場は中身優先、商売は度外視
(だって、現場の人たちは円盤売れたところで、その儲けは彼らに入ってこないんだから・・)。

うん、この作品の主人公タイガーの苦悩は、まさにこのアニメを制作してる彼ら現場スタッフの苦悩そのまんまなのさ。
だからこそ、その悲哀の描写には妙なリアリティがあるんだよね(笑)。

いや、個人的な好みをいわせてもらうと、主人公のタイガーとバニーは既存刑事ドラマのバディ系作品でこれまで使い古されてきたパターンだし、正直さほど新鮮味はなかったのよ。
それより、私は他のメンバーたちの方が好き。
女子キャラ2名はかわいいなぁ。
ツンデレと僕っ娘という、実に分かりやすいテンプレだけど。

メインヒロイン・ブルーローズ

あと、個人的に好きなのがファイヤーエンブレムというオネエ系キャラ。
cvは津田健次郎さんで、津田さんというのは凶悪キャラ以外だとオネエ系の役柄がやたら目立つ人である。
オトコの声の時はいつも悪い人の役なのに、オネエ系になるといつもいい人になるのが面白い。
オネエというのは皆の心の機微にやたら敏感で、さりげなくサポートしたりする優しさがもうタマらんわ。
いつも明るくて一見ノーテンキに思えるけど、やはりゲイゆえ、それなりに心の奥底で悩みは抱えてたみたいだね。
そこをちゃんと描いてくれたのが劇場版「TIGER & BUNNYライジング」で、この映画はなかなかよかったわ~。

ファイヤーエンブレム
津田健次郎

そして映画「TIGER & BUNNYライジング」は、

巨大企業のCEOなんてのは、大体がロクなもんじゃない


というのが裏テーマだったね。

ヒーローたちの新オーナーになったマークシュナイダー

実際、私もそういうものだと思うよ。
ある程度は悪いことにも手を染めないと厳しい世界でのし上がることは無理だと思うし、そりゃ弱者を踏みつけてきたことも今までたくさんあっただろう。
それは、「ヒーロー」とは180度真逆のメンタリティである。

弱きを助け、強きをくじく
ではなく、
弱きを踏みつけ、蹴落とし、強きに媚びる

逆にそういうスタンスじゃないと、立身出世は無理でしょ?
なんていうかな、私は子供の頃、リーダー=人格者、という幻想を抱いてたのよ。
だけど現実を知るたび、そんなのがただの幻想にすぎないことを思い知らされる。
たとえば、スティーブジョブズって人格者だと思う?
マークザッカーバーグって人格者だと思う?
違うよね。
直接彼らを知る人たちほど、こぞってクソ呼ばわりをしている。
もちろん、その成し遂げたことは偉業に他ならず、尊敬に値するさ。
でも人格者じゃないんだよ。
で、「TIGER & BUNNY」の世界観では、そういう「人格者じゃない」経営者こそが「ヒーロー」の上司であり、絶対に逆らえない存在なんだ。
こういうパラドックスの構造を、このシリーズは一貫して提起し続けているよね。

めっちゃ悪の首領っぽいイーロンマスク氏・・

多分、世界って悪役の方に有利にできてる構造だと思う。
仮に「ヒーロー」が実在したとしても、その上司は多分「悪役」なんですよ。
ああ、そういや「ガンダム」だって全く同じ構造だわ。
アムロやシャアが必死に現場で血を流してる頃、軍上層部は地球連邦にせよジオン公国にせよ、自尊心やら保身やらで「絶対押しちゃあかんボタン」を最後にお互い押しちゃうんだよね。
これは、サンライズの伝統なんだろうか。

結局、一番タチの悪い悪役は上層部         だから現場は苦労する


という総括。
巨大ロボではなくアメコミ系ヒーローに変わったところで、結局サンライズはサンライズということ。
全共闘(既存体制打倒)サンライズの精神は、コマーシャリズムへの批判という形で「TIGER & BUNNY」にも受け継がれたようだ。

さて、この「TIGER & BUNNY」が世に出てから3年後、少年ジャンプで連載スタートしたのが「僕のヒーローアカデミア」である。

「僕のヒーローアカデミア」

このアニメも、めっちゃ長いよね。
いよいよ大詰めらしいけど。
ちなみに、私が「アカデミア」ヒーローの中で一番好きなのは蛙吹梅雨だわ。

蛙吹梅雨

見た目がカエルっぽいオンナノコで、「ケロ」とか言うし、個性が「カエルっぽいことなら大体できる」という女子としては致命的なキャラ設定なのになぜかカワイイという、絶妙な均衡で魅力が成立したヒーローである。
これは、cv悠木碧が凄いとしかいいようがないんだけど。
でもってこの子、めっちゃ性格いいんですよ。
しっかり者で、とても優しい。
やはり、ヒーローを描くにしても少年ジャンプならこういう感じになるし、なるほど・・という作風である。
王道だわ。
たまにこういうのを見て、心を矯正すべきだろう。
だって、現実の世の中にはあまりにもヴィランが多く、いや、あるいは自分自身もまたヴィランであるような気さえしてしまう今日この頃だから・・。


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