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「SPY×FAMILY」を〈WITSTUDIO〉vs〈CloverWorks〉で見る

今回は、映画「SPY×FAMILY CODE WHITE」について書きたい。
これは2023年の劇場公開作品で、興行収入は62億を超えたという。
大ヒットといっていいだろう。
いや、最近の集英社はかなり本気で映画に取り組むようになってきており、むしろこのぐらいの数字は当然なのかもしれない。

「SPY×FAMILY CODE WHITE」(2023年)

制作はWITSTUDO+CloverWorks、つまり共作。
もともとアニメで2社体制をとることは別に珍しいことでもないんだけど、この「SPY×FAMILY」はWITSTUDIOとCloverWorksが
「タッグを組んで一緒に何か作りましょう」
という話の方が先にあったらしく、その流れの中でたまたま本作がチョイスされた経緯っぽい。

WITSTUDIO⇒ProdutionI.Gから2012年に独立
CloverWorks⇒A-1Picturesから2018年に独立

この両社はどっちも似たような流れがあり、ともにいまや飛ぶ鳥落とす勢いの人気急上昇株なんだよね。
ある意味、ライバル関係といっていい。
しいて、お互いの各々の強みをいうなら、

WITSTUDIO⇒立体的アクション(「進撃の巨人」「甲鉄城のカバネリ」)
CloverWorks⇒魅力的キャラ造形(「ぼっちざろっく」「ホリミヤ」)

WITSTUDIO
CloverWorks

といったところだろうか。
カブってないといえば、まぁ、そうともいえなくはないんだが。
何にせよ、この「SPY×FAMILY」はアクションもキャラもバランスよく必要な作風だし、ある意味で実にいい作品をチョイスしたと思う。
・・といっても、アニメはそう単純なものでもないようで、

「じゃ、アクションはWITSTUDIOに、キャラはCloverWorksに」

という感じに仕事の分担をできるものでもないみたいなのよ。
結局両社はどうしたのかというと、TVシリーズ1期は

偶数回をCloverWorks、奇数回をWITSUTUDIO

という分担にし、あくまでもイーブン、対等の立場という姿勢を貫いたようだ。
なんか、緊張感あるわぁ・・。
多分だけどさ、両社の上層部はお互い笑顔でがっちり手を握ってるんだが、実は現場の方では意外と対抗意識がバリバリという、そういう空気だったんじゃないの?
まぁ、そういうのが、逆にあの異様なクオリティの高さを支えたのかもしれないけどね。
で、こういうのは現場最高責任者の監督を誰にするのかが最大のポイントで、結局そこはどうしたのかというと、はい、苦肉の策ですわ。
敢えて「どっちにも属さない人」、敢えて「ニュートラルな人」を据えたんだね。
それが、古橋一浩さんという大ベテランの起用。
古橋さんは、あの細田守が「影響を受けた人物」のひとりとして名前を挙げてるほどの大物なんだ。
さらにいうと、この古橋さんの下に3人の「助監督」が付けられたのよ。

・片桐崇(WITSTUDIO寄り)
・高橋謙仁(ややWITSTUDIO寄り?ニュートラル?)
・原田孝宏(CloverWorks寄り)

どうやら、こういう助監督のチョイスにもバランスがあったっぽい。

でね、問題はTVシリーズ2期からなんだわ。
上記助監督3名のうち、原田孝宏さんだけが「昇格」し、古橋さんと組んで「共同監督」の座に就いたのよ。
ん?これ、どゆこと?
どうやら、

TVシリーズ2期は「CloverWorksのターン」


ということが決まったらしい。
なるほど。
それでCloverWorks寄りの原田さんが昇格したのね。
でも、WITSTUDIOとしては、それでいいの?
いえいえ、ご安心を。
劇場版の「CODE WHITE」を見ると、今度は片桐崇さんが監督に昇格してるわけで、つまり

劇場版は「WITSTUDIOのターン」


ということになってるわけよ。
ちなみに、今回古橋さんは「アドバイザー」という顧問的立場だってさ。
そういう前提を踏まえた上で、TV2期、および劇場版を見てみてください。
なんか、別の意味でめっちゃ面白いですよ(笑)。

では、そろそろ劇場版本編の説明に入ろうか。
この映画制作には原作者・遠藤達哉先生も積極的に関与してるらしく、そのへんは非常にいいね。
それこそ昔なら、映画が出来上がってから原作者がクレームつけるという、高橋留美子先生のパターンがひとつの風物詩だったというのに・・(笑)。

で、この映画について私の個人的感想を最初に言わせてもらうなら、かなりファミリー志向に作風を振ってきたな・・という気がした。
なんていうかさ、劇場版「名探偵コナン」、劇場版「ドラえもん」、劇場版「ワンピース」、劇場版「クレヨンしんちゃん」、そういう作品を見た時の感触に近いのよ。
とにかく色々な要素を盛りだくさんに詰め込んでいて、メインがWITSTUDIOだからアクションがド迫力だったのは当然として、それより私が驚いたのは

今回、強烈に下ネタをブチこんできたじゃん?

ウンコの神様って・・

ウンコを我慢するアーニャが見た幻影、ウンコの神様

このての下ネタって、どう考えても低年齢層へのウケ狙いだと思う。

まぁ、小さいお子さんが家にいらっしゃる方ならよくご存じだろうが、

小さい子供ほど、ウンコネタに対する食いつきはハンパありません。


だから、劇場に来てくれた子供たちを喜ばすには、まずはウンコですよ。
確かに、それが最も手堅い。
だから今回のウンコネタは、劇場版「SPY×FAMILY」の今後の方針を示す、一種の意思表示のようなウンコではなかっただろうか?
TVシリーズ1期で出てきたウンコとは、また少し意味合いが違うものだったと思う。

TVシリーズ第5話のウンコ

しかし子供って、なぜあれほどウンコを喜ぶんだろうね。
・・とかいいつつも、こんな私ですら、現役の小学生の時には
「おい、みんな、〇〇が3階のトイレでウンコしてるっぽいぞ!」
「なぬー!」

とかいって、クラスの有志何名かで友人のウンコの邪魔をしに行ってた記憶がある。
もちろんだが、中学生になるとそんなことはしなかったよ。
あくまでも、小学校限定である。
私が思うに、小学生にとってのウンコは、極めて特別な「何か」なんだ。
単なる排泄物ではない。
しいていうなら、異世界の「モンスター」のニュアンスに近かったと思う。
だからウンコネタが出てきた時には、皆、めっちゃテンション上がるのよ。

これは、どこぞの小学生、および幼稚園児にとったアンケートらしい。
見ての通り、「SPY×FAMILY」は性別、学年を問わず、いまどきの小学生の熱烈支持を受けている。
TVアニメの放送時間帯は深夜だというのに、今はもうそんなのも関係ないんだろう。
で、このランキング表を見て、今なお「クレヨンしんちゃん」が強いことにお気付きですか?
原作は青年誌掲載の「しんちゃん」なのに、ここまで低年齢層の子供たちのハートをがっつり掴めていることの最大の要因は

やっぱり、こういう分かりやすい下品なギャグ、下ネタがあるからなんだよ。

下ネタって、子供にはどうしても必要なんだよねぇ。


よって、「SPY×FAMILY」も今回の劇場版では、敢えて「しんちゃん」的なテイストに寄せてきたと見るべきだろう。

それが、アーニャのウンコネタである。

めっちゃウンコ我慢してるアーニャ

でもまぁ、「CODE WHITE」は映画としてマジで面白かったよ。
こういうアクションあり、感動あり、ウンコネタあり、というゴージャスな内容の本作を見てて、私は

ひょっとしたら「SPY×FAMILY」は、映画の時だけ劇場版「クレヨンしんちゃん」のテイストでレギュラー化するつもりなのでは?


と感じたんだ。
たとえば、ロイドとヨルがオトナ帝国に行くとか、ロイドがロボとーちゃんになるとか、まぁ、さすがにそこまで極端なのはないだろうけど、

「本編に直接関係のないパラレルワールド的ストーリー展開」


そういうのをレギュラー化していこうという、興行側の野心みたいなものが少しばかり見えてね・・。
だって、今回の興収が62億だろ?
こんなおいしいの、集英社と東宝がレギュラー化しないわけがないじゃん。

映画「クレヨンしんちゃん」嵐を呼ぶ黄金スパイ大作戦

そういう事情もあり、「SPY×FAMILY」は安易に本編の連載を終わらせられなくなったよね。
つまり、「オペレーション梟」はいつまでも未達成でいてもらわなきゃ困るし、東国vs西国の冷戦もずっと続いてもらわないと困るんだわ。

付け加えると、WITSTUDIO vs CloverWorksの冷戦(?)も、できればずっと続いてほしいですね(笑)。


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