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「SPY×FAMILY」は明るい作風を保てるのか?

今回は、「SPY×FAMILY」について書こうと思う。
アニメは大人気のようだが、これは原作漫画のパワーだろうね。
恐ろしく評価の高い漫画だし。
今年は、なんと日本漫画家協会賞でコミック部門大賞を受賞している。
これは漫画界の大御所たちが選考する賞であり、ただ単に人気があるだけじゃ絶対に貰えないやつじゃん。
ウェブ配信の作品なのにね。
こういうところから大ブレイクするってのも、まさに時代だよなぁ。

作者の遠藤達哉さんはアシスタント歴の長い人で、20年以上という長いキャリアでもなかなか芽が出なかった苦労人のようだ。
デビュー作は殺し屋の女を主人公にしたサスペンス物だったらしく、それもかなりエグめの鬱作品らしい。
そういう過去作品の話を聞いちゃうと、今の明るい作風の「SPY×FAMILY」でも、いずれ鬱展開に入るんじゃないかと不安になってしまうよ。
まあ、これだけ人を殺してる作品で明るい作風ってのが、そもそもおかしいんだけどね。
この遠藤先生、ヒットに恵まれずとも20年以上のキャリアを誇ることからして、多分めちゃくちゃ絵がうまいタイプだろう。
絵がうまい人は、アシスタントとして仕事が絶えないからな。
で、その絵のうまさはキャラを見てるだけで分かるよ。

特に秀逸だと思うのが、アーニャとヨルだね。
超能力者の幼女と、殺し屋の女。
そのふたりをこういうPOPなキャラデザインで完成させた時点で、ヒットの素地は既にほぼできてたと思う。
ヨルの黒コスチュームのデザイン完成度とか、もう完璧だと思わない?
あと、家にいる時に着てる赤のチュニック丈ニットもいいよね。
そして、アーニャは制服の可愛さが完璧。
これは私の持論だが、いまどきは服を可愛く描けない作品なんてアウトなのさ。
これだけコスプレが普及してるんだから、コスプレイヤーに「あ、これ着てみたい」と思わせなきゃヒットは望めないってこと。
その点、「SPY×FAMILY」は満点合格だと思う。

当然、この赤ニットは商品化されている

物語の骨子は、当然「Mr&Mrsスミス」がモデルだろう。
でもあの映画、確か後半はブラッドピットとアンジェリーナジョリーの壮絶なバトル展開になったよね。
できれば「SPY×FAMILY」は、そうなってほしくないんだけど。
しかし、ヨルが所属する「ガーデン」という組織の詳細がよく分からない。
亡命の手助けをしてることからして、明らかに国家機関ではないようだ。
ということは、最終的にロイドとヨルの共闘もあり得る?
いや、ヨルの弟ユーリが国家保安局ゆえ、全て大団円というわけにはいかんわな・・。
面白いのは、ロイドは「世界平和の為」、ヨルは「悪い人を退治する為」、ユーリは「姉さんが住むこの国を守る為」、みんな各々に大義があるということ。
3人とも、悪人じゃないんだよなぁ。
全員真面目だし。
ただ、各々所属する組織がなんかキナ臭い・・。

ヨルのコスチュームは、ここからヒントを得たんだろうね

しかし「Mr&Mrsスミス」より「SPY×FAMILY」が面白く感じる点は、作中で唯一、全員の正体を子供のアーニャだけが分かってるという点だ。
彼女としては現状維持が最優先の為、頑張って秘密を守ろうとする姿がまた可愛い。
この構図、昨年に見たギャグアニメ「4人はそれぞれウソをつく」と非常によく似ている。

「4人はそれぞれウソをつく」
これはシュール系ギャグコメディです

これ、個人的には昨年最も笑ったアニメのひとつなんだよね。
女子高の仲良し4人組が各々他人には言えない秘密を抱えてる、という設定なんだけど、その秘密というのは上の絵にある通り。
でもって、超能力者の子だけは相手の心を読めるので正体を把握できているという、まさしくアーニャみたいな設定。
おそらく「涼宮ハルヒ」から着想を得た作品なんだろうが、アニメでは佐倉綾音のツッコミが何より秀逸で、チープながらもいい感じに仕上がってたと思う。
やっぱ、アニメは声優で決まる要素が大きいよね。
「SPY×FAMILY」も、種崎敦美と早見沙織の起用なくしてアニメでの成功はなかったんじゃないだろうか。
早見さんは、ド天然のヨルのキャラが実によくハマっている。
そして種崎さんのアーニャは、フリーレンと同じ人がやってるとは思えないほどの完璧な仕上がり。

種崎敦美はマジで天才だと思う

おそらく「SPY×FAMILY」におけるファンの関心は、ミッションが達成されるかどうかではなく、任務が終わった後にこの疑似家族がどうなるか、だと思う。
ありがちなパターンとしては本当の家族になるというオチだが、今のお互いの秘密を抱えたままじゃ絶対無理だよね。
必ず、どこかのタイミングで秘密はバレてしまうはず。
だけどよく考えたら、この3人でユニットを組んだらおそらく世界最強だよね。
多分、終盤はそういう展開になるんだろう。
この3人が開戦の危機を救う、みたいな。
スパイ物の作品は「プリンセスプリンシパル」や「ジョーカーゲーム」など傑作が数多くあるんだが、大体の作品は闇が深く、鬱展開になりがちなんだよね。
最近やってた「スパイ教室」ですら、萌えアニメのくせに意外と闇が深かったし。

「スパイ教室」

「SPY×FAMILY」は、できることならば今の明るい世界観を損なうことなく
最後まで突っ切ってほしいなぁ。
この作品の主題はスパイじゃなくて、家族の方だろ?
WEBの「ジャンプ+」に友情・努力・勝利のジャンプ三原則など無関係かもしれんが、敢えてこの作品における「勝利」の条件を考えてみると、それは子供のアーニャが無邪気に笑っていられる世界への着地である。
よく考えたらこの子、人体実験の被験者として育った闇の深い過去があるんだからね。
その人体実験してた組織って、あるいはヨルが所属してる組織という可能性もあるんじゃないの?
考えれば考えるほど、イヤな予感しかしない。
ちなみに、下の絵は遠藤先生の読み切り漫画「煉獄のアーシェ」だ。

アーシェのキャラデザはアーニャと酷似してるんだが、どうも遠藤先生は
軸足が闇の方にある漫画家みたい。
頼むよ、「SPY×FAMILY」だけは鬱な展開にしないでくれよ~。


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