A-1Picturesの快進撃は「WORKING!!」から始まったと思う
今回は、「WORKING!!」について書きたいと思う。
これは超有名作なので、見た人も多いだろう。
これの第1期放送は2010年で、この前年には京アニ「けいおん!」社会現象的大ヒットがあったことを踏まえておいてほしい。
ちなみに、「WORKING!!」の制作はA-1Picturesである。
この会社の設立は2005年のことであり、2010年はまだ色々と手探り状態の頃だろうね。
ただ、このA-1Picturesという会社にひとつ強みがあるとすれば、それは資本がアニプレックス100%、つまりソニーミュージックエンタテインメントという大きな後ろ盾があることだよ。
この時点で、既にいい風が吹いてたんだと思う。
京アニは00年代後半から「涼宮ハルヒ」「らき☆すた」等でアニメ+音楽の可能性を十分に示したわけで、それこそアニプレックスにしてみれば渡りに船。
「けいおん!」が「きらら」掲載の4コマ漫画というのに対し、こっちは「ヤングガンガン」掲載の4コマということで、「WORKING!!」がチョイスされた流れだったんだろう。
なんていうか、やっぱ「ガンガン」ということもあり、同じ日常系4コマでも空気感は「きらら」と異なるものである。
「きらら」が女子同士のグループできゃっきゃうふふやってるのに対し、「ガンガン」は男女のグループできゃっきゃうふふだし、当然LOVEもある。
でもって「WORKING!!」はファミレスが舞台で、物語はこの閉鎖空間の中にほとんどが集約されている。
この密室劇展開にどこか懐かしさみたいなものを皆さんも感じたはずだが、
多分これ、確信犯的に三谷幸喜の手法をとったアニメだよね。
基本的に、登場人物たちはみんな、どこか少しおかしい。
主人公の小鳥遊からして「年齢12歳以上の女子に興味はない」という変態だが、しかし彼は
「僕はロリコンじゃありません!
ただ、小さいモノが好きなんです!」
という人である。
いや、小鳥遊なんて作中では比較的マトモな部類で、とにかくほぼ全キャラがエキセントリック。
高橋留美子先生の作る世界観に近いともいえよう。
三谷幸喜+高橋留美子=WORKING!!
そんな感じ。
まひるに殴られる小鳥遊=ラムちゃんから電撃を食らう諸星、という解釈をしてください。
ただ、これが単なるコメディで終わらなかったところは、アニプレックスがかなり本気でOPとEDに取り組み、がっつり声優による楽曲を作ったところにあるだろう。
これこそ、ソニーミュージックエンタテインメントの真骨頂だよね。
というか、むしろ親会社にとっては、こっちの方こそ本命だったのかもしれない。
これ、1期のOPのEDね。
EDなんて福山潤+小野大輔+神谷浩史の最強トリオ歌唱とか鳥肌モノなんだが、それ以上に当時私がビビったのはOPである。
何なの?このオシャレ感!
このオシャレ感は2期にも3期にも継承されてて、「WORKING!!」のひとつの顔といっていいだろう。
これを出せたのは、やはり「画のチカラ」だよね。
変な話だが、この「WORKING!!」は監督の平岩芳正さんよりも、作画監督の足立慎吾さんの方に注目が集まった作品である。
事実、2期、3期それぞれ監督はまた別の人が就くんだが、作画監督はずっと一貫して足立慎吾一本である。
つまり「WORKING!!」は、足立さんの作品と解釈できるんだよ。
彼は画が巧いとか以前に、なんか妙にセンスがいい。
たとえば私が画でゾクッとしたのが、1期のOPで一番最後に店長が出てきて「監督・平岩芳正」と書いてある箱を蹴っ飛ばすシーンがあるのよ。
その時の店長の箱の蹴り方がなぜか「アウトフロントキック」で、こういうのはサッカーやってた人じゃないとよく分からんかもしれんが、とにかく私には超ツボで、「綺麗なキックフォームやな!」と感心した記憶がある。
ただ「箱を蹴る」という何てことないシーンに敢えてアウトフロントキックのフォームをチョイスするあたり、これはもう作監のセンスとしかいいようがないんだよね。
やっぱ足立さん、サイコー!
で、この足立さんは同じくA-1Picturesの「ソードアートオンライン」の作画監督で名声を確固たるものとし、そして2022年には遂に監督デビュー!
それがA-1Picturesのオリジナル作品「リコリスリコイル」ですわ。
逆にさ、「リコリコ」ほどセンスあるアニメって他に見たことある?
いやホント、足立慎吾って「センスのカタマリ」みたいな人だと思うよ。
で、こういうセンスのルーツになってるものが、やはり私は「WORKING!!」だと思うんだよね。
特に「萌え」というのは難しいもので、センスない人が描くと一種のキモさみたいなものがどうしても滲み出てしまうんだが、足立さんの作画には驚くほどそれがない。
たとえば秀逸なのが、「WORKING!!」ぽぷらだわ。
ぽぷらは「女子高生なのに小学生にしか見えない」という萌えのど真ん中というべき危険ゾーンのキャラでありながらも、足立さんが描くと意外なほど臭みのない自然なキャラに仕上がっていた。
見ての通り、本来必要のない体の動かし方をしてるんだけど、でも、これを「無駄な作画」だと思うかい?
私は、こういうのこそがアニメーターの真骨頂、それこそセンスの有無だと思うんだよね。
さて、奇人変人大集合というべき「WORKING!!」だが、全キャラクターの中で唯一「マトモな人」と設定されてるのが、実は「松本さん」である。
ちゃんと真剣には見てなかった人の中には「松本さんって誰?」という人もいるかもしれない。
逆に、「WORKING!!」ファンのほとんどは
「今回、松本さんは出るか?」
「出たとして、セリフはあるか?」
というのに毎回注目してたと思う。
ホント彼女の出番は少ないし、出た時も秒で見切れる類いだし、一応担当の声優はいるんだけどほぼセリフはないし、めっちゃレア感のあるキャラなんだ。
というか、全40話で、僅かこれだけしか出番はなかったらしい↓↓
うん、どう見ても原作の松本さんより、アニメの松本さんの方がかわいいよね。
人気÷出演秒数で1秒当たりのキャラ貢献数値を出すなら、多分全キャラの中で松本さんが首位だよ。
ではここで、某サイトが実施した「WORKING!!キャラクター人気投票」の集計ランキング結果をご紹介しましょう。
<WORKING!!キャラクター人気TOP5>
【1位】八千代(889票)
【2位】佐藤(874票)
【3位】ぽぷら(856票)
【4位】山田(838票)
【5位】松本さん(777票)
松本さん、まさかの5位ランクイン!
主人公の小鳥遊は?
メインヒロイン扱いだった、まひるは?
小鳥遊9位(118票)、まひる6位(761票)でした。
この松本さん5位というあたり、いかにも深夜アニメという感じがしない?
敢えて推しをマイナーなところに求める、オタクとしての習性が見えるんだよ。
確かに「ウォーリーを探せ」じゃないけど、「WORKING!!」見るときは背景に松本さんが映り込んでないか、結構みんな注意して見てたんだよね(笑)。
ちなみに松本さんのフルネームは松本麻耶、年齢18歳(高3)だそうだ。
ただ私の個人的な推しとしては、やっぱ音尾さんかなぁ・・。
この気が弱くて人の好さそうな音尾さん役を、あの中田譲治さんがやってるのが妙にツボでね。
音尾さんは「スーパーに牛乳を買いにいったきり戻ってこなかった奥さん」の捜索をずっと長いこと続けてる人で、みんなからは「奥さんに逃げられた可哀相な人」という認識をされていたにも関わらず、
意外にも、奥さんは牛乳パックを持ったまま、今もなお帰り道が分からなくて道に迷ってる、というのが真実(笑)。
こういうノリ、結構好きです。
とにかく「WORKING!!」は、4コマ原作日常系の最高峰のひとつであることは間違いないと思う。
私の中では、今なお
・WORKING!!
・けいおん!
・月刊少女野崎くん
が不動の3強。
もし未見の方がいらしたら(ほぼ、おらんだろうけど)是非ご覧ください。