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2023年アニメランキングから漂う死の匂い

2023年のアニメを振り返ってみる。
某サイト「みんなのランキング」で、2023年アニメ人気ランキングってやつをチェックしてみた。
ランキング内容は次の通り↓↓

【1位】葬送のフリーレン
【2位】推しの子
【3位】薬屋のひとりごと
【4位】スキップとローファー
【5位】呪術廻戦

これは、投票者の評価点を集計して割り出したランキングらしい。
信用のおけるものかどうか怪しいので、念のため昨年のランキングも参考としてチェックしてみた。
2022年ランキングは次の通り↓↓

【1位】SPY×FAMILY
【2位】リコリスリコイル
【3位】ぼっちざろっく
【4位】その着せ替え人形は恋をする
【5位】メイドインアビス烈日の黄金郷

なるほど。
見た感じ、このランキングは信用できそうだ。
しかし2022年がコメディ作品が多く上位にきてるのに対し、2023年はどちらかというとサスペンスタッチの作品が上位にきた感じだね。
妙に「死」をイメージさせる作品が多い。
いや、厳密にいえば2022年も「SPY×FAMILY」や「リコリスリコイル」では結構人が死んでるんだけど。
「メイドインアビス」に至っては主要メンバー以外ほとんど死んだし。
ただ、死のインパクトについては2023年の方がやはり大きく上回っている。
「葬送のフリーレン」は物語の冒頭でヒンメルやハイターが死ぬという展開だったし、「推しの子」だって冒頭からからゴローやアイが死んでしまったわけで。
「薬屋のひとりごと」もまたミステリーだから毎回のように人は死ぬし、「呪術廻戦」は懐玉編でヒロイン天内が呆気なく死に、また渋谷事変編でもヒロイン釘崎が呆気なく死んだよね。
ホント、2023年は重要人物を殺しすぎ!

「推しの子」
「呪術廻戦」

しかしよく考えたら、ここ最近は第1話から主人公が死ぬ展開も別に珍しくなくなってきてるわな。
異世界転生アニメなんて、むしろ主人公が死ななきゃ話が始まらないんだから。
「もう現世は詰んでるから、来世に期待しよう!」という人々の深層心理を汲み取った作風ともいえる。
みんな、輪廻転生を信じてるんだろう。
私は信じてないけどね。
だって数十年前には世界人口が45億程度だったのに、令和の今はその倍の80億になってるんだよ?
仮に人間の生命が輪廻転生というリサイクルシステムだというなら、80億から45億を引いた、残り35億の生命は一体どこから湧いてきたんだ?
リサイクルと新規生産の併合システム?
あるいは、動物や植物や虫などの生命を人間に転用して穴埋めしてるのか?
ということを考えなきゃならんほど輪廻転生は最初から穴のあるロジックであり、転生の来世を信じて命を惜しまない奴はタダのアホである。
今いただいてる生命、一度きりの人生を大事にしなくてどうする?

やはり私が今年「いいなぁ」と思ったアニメは「葬送のフリーレン」で、
この作品のヒロインは簡単に死ぬどころか1000年以上の長寿である。
普通の人間は、寿命が短いからこそ子孫を作って次代に何かを託すんだが、それに対してエルフは寿命が長いもんだから、次代に託すという感覚が欠如してるのかも。
実際、フリーレンを見る限りでは生殖本能がまるでなさそうだし、それゆえ恋愛感情、母性愛、家族愛、そのてのものも欠如してるっぽいなぁ。
でも、もしも彼女らが人並みにそういう感覚をもってたなら、もともと不老長寿のエルフ一族は人類を上回るほどの大増殖をしてしまうはず。
それは生態系バランスからして好ましいことではないので、一応は彼女らの感情の希薄さ、および性欲のなさは生態系の摂理として極めて順当なんだと思うよ。

そういえば子供の頃、テレビで野生動物のドキュメンタリー番組を見てるとライオンがシマウマを襲う映像が出てきて、やっぱ「かわいそう」と思ったものである。
できることなら、シマウマをライオンから守ってあげたい、とさえ思った。
でも、そんなことしちゃダメなんだよね。
なぜって、それをすると生態系が狂っちゃうから。
シマウマは捕食されること前提で最初から頭数は多く設定されており、一方のライオンは捕食すること前提で最初から頭数が少なく設定されてるのさ。
そのバランスに外部からヘタに手を入れようもんなら、シマウマとライオンの双方に大きなダメージが生じるものである。
基本、生態系は放っておくのが一番ってこと。
それと似たようなことは、きっとエルフにもいえるんだろう。
と同時に、魔族にもそれがいえるんじゃないかな?
魔族が人を襲うのは、きっとライオンがシマウマを襲うのと同義。
しかし、その無敵の魔族にもフリーレンという天敵が存在する。
いつもボーっとしてるフリーレンが、魔族と対峙した時だけ殺意むき出しになるのは一種の本能だよね。
これ、コブラに対するマングースっぽい。
思うに、これら全てがひとつの生態系の円環じゃないのか?
作中で何度か「女神はいるか否か」という話題が出てるが、私としては女神=生態系と解釈してるわけで、きっと魔族にもエルフにも等しく役割を与えてるのが女神(生態系)ってもんだろう。

「葬送のフリーレン」

思えば、我々人類だって昔はその生態系の中層あたりに組み込まれてたんだよね。
捕食し、捕食される中層に位置していた人類。
しかし、いつの間にか人間は自然と距離をとるようになり、そういう生態系からは外れてしまった。
とはいえ、生態系中層にいた頃の太古の記憶だけは遺伝子に組み込まれてるので、捕食する、捕食されるの血生臭いバトルを本能的に欲求しちゃうんだよね。
一方で現実世界でそれが無理であることも理解してるので、アニメやゲームなんかでそれを疑似体験しようとしてるのさ。
そしてその必然というべきか、いつもアニメは殺しと死で溢れている。
こうしてアニメ人気ランキング上位作品が常に死の匂いを漂わせてるのは、ある意味で必然なのかもしれないね。


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