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実写ドラマ⇔アニメの壁の崩壊を感じさせた4作品

近年の傾向として、映画・テレビドラマなど実写畑の脚本家がアニメに参入してくる傾向が見える。
まず、その前に「脚本家」というのはやや知名度が怪しいので、某サイトの集計した【有名な脚本家人気ランキング】をここで示しておきたい。

有名な脚本家人気ランキング2024年版

【1位】
三谷幸喜
【2位】
宮藤官九郎
【3位】
バカリズム
【4位】
北川悦吏子
【5位】
坂元裕二
【6位】
古沢良太
【7位】
福田靖
【8位】
岡田惠和
【9位】
野木亜紀子
【10位】
八津弘幸

なるほど、といった顔ぶれが並んでいる。
三谷幸喜、宮藤官九郎、バカリズムなどコメディ系が圧倒的に強く、あとは北川悦吏子、坂元裕二など旧トレンディドラマ系の人たちも相変わらず強いなぁ。
坂元裕二のドラマなんて、私、めっちゃ好きなんですけど。
「カルテット」や「大豆田とわこと三人の元夫」はサイコーだった。
9位の野木亜紀子は「逃げるは恥だが役に立つ」の人で、最近では湯浅政明監督の「犬王」の脚本を手掛け、アニメ界デビューも果たしてたっけ。
あとは、6位の古沢良太だね。
この人の脚本は、ドンデン返し系が特徴。
「リーガルハイ」「コンフィデンスマンJP」「探偵はBARにいる」あたりがまさにその典型で、騙し系のトリッキーなドラマを大得意とする人である。
私が初めて彼の存在を知ったのは、これもドンデン返しが当時話題になった映画「キサラギ」(2007年)。
それ以降、ずっと注目してるよ。

「GREAT PRETENDER」(2020年)

GREAT PRETENDER」は、そんな古沢氏のアニメ脚本家デビュー作である。
もちろん、これも相変わらずのドンデン返し系なんだが、実写畑の古沢氏が「アニメでしかできないことをやる」と言うからどんなものかと思いきや、率直な感想として、ほぼ「コンフィデンスマンJP」アニメ版じゃないか。
舞台はアメリカ、欧州、中東、中国など転々とするので、実写にするとロケ費だけでもトンデモない金額になりそうだ。
その点でいえば、この脚本はアニメにした方が安上がり、というのはあったかもね。
ただ、「アニメでしかできない映像表現」というのは皆無だったなぁ・・。
この内容、予算さえあれば普通に実写化できると思う。
「コンフィデンスマンJP」のフジテレビが製作委員会に名を連ねてるところを見るに、ひょっとして将来的には実写化も視野に入れてるのでは?
アニメとしてのクオリティは、制作がWIT STUDIOだけにめっちゃ高い。
見てない人は、是非見てほしい。
オシャレ系というか、とにかくフジテレビ臭が凄いから(笑)。

「江戸川コナン失踪事件」(2014年)

あと、古沢氏と並ぶ「ドンデン返しの達人」とされるのが内田けんじである。
彼は映画畑の人で、作品としては「運命じゃない人」「アフタースクール」「鍵泥棒のメソッド」などが有名だろう。
で、「鍵泥棒のメソッド」と「名探偵コナン」のコラボという形で作られたアニメが、「江戸川コナン失踪事件」である。
これ、「コナン」ファンにはあまり評判がよくなかったと聞く。
個人的には、めっちゃ面白かったんだけど。
どっちかというと「コナン」ファン向けじゃなく、「鍵泥棒」ファン向けの内容だね。
映画見てないことには、あちこちに仕込んであるパロディの意味が分からんと思うし。

「鍵泥棒のメソッド」コンドウ(香川照之)と香苗(広末涼子)
アニメでのコンドウ(cv香川照之)は、こんな感じ
アニメでの香苗(cv広末涼子)は、こんな感じ

この作品ではコナンとコンドウがテロリストを相手に共闘する展開になり、両作品とものファンである私としては、まさに鳥肌モノだったよ。
あと、灰原哀の単独での活躍が個人的に嬉しかったわ~。

「ワンダーエッグプライオリティ」(2021年)

これは、90年代に一世を風靡した脚本家・野田伸司のアニメデビュー作「ワンダーエッグプライオリティ」。
実写ドラマでは「高校教師」「ひとつ屋根の下」「人間・失格」などエグい表現をするクセのある人で、かなり文学色の強い作家性だったと思う。
多分アニメでもそんな感じになるんだろうな~と思ってたら、案の定そうだった。
ただしこの内容、アニメとしては以前からかなり使い古された設定(架空の世界でモンスターとバトル)であり、特に目新しいものではない。
率直な印象として、昔の「ペルソナ」シリーズ、そのまんまである。

「ペルソナ」シリーズ

これはパクったというより、むしろ野田さんは自身の作家性の赴くまま脚本を書いたんだろうし、こういうのが使い古されたアニメ的設定だということを普通に知らなかったんだと思う。
まぁ、そうはいってもさすがは野田伸司、ちゃんと独自の文学色が出ていてこれはこれで十分に面白かった。
ただ問題は、最終回だよね・・。
もともとは、全12話で予定されてたものだと思う。
なのに最後の第12話が尻切れトンボで終わり、「?」となったところに「特別編がありますよ」とアナウンスされ、それも忘れかけてた3か月後にこっそりと放送されちゃう始末・・。
あれって、一体何だったの?
何かのトラブル?
ひょっとして、野田さんの脚本が間に合わなかったとか?
いやいや、80年代から第一線で活躍してた大ベテランがそんな失態を犯すとは考えにくいんだが、それでもあれを見る限り、あるいは我々が想像する以上に、【実写⇔アニメ】のギャップは大御所ですらテンパるほどのエグさなのかもしれない。
そもそも、3ヵ月も待たせた上で公開された特別編、あれって野田さん的に納得のオチだったんだろうか?
破綻してると感じたのは私だけ?
なんていうかな、イメージ的には同年放送された「SonnyBoy」の最終回とかなり近いものがあったと思うんだけど・・。

この野田伸司のアニメ界参戦が話題になった2021年、実はもうひとり、90年代の実写ドラマ界をリードした脚本家がアニメを作ってるんだよ。
それが、飯田譲治である。
作品は「NIGHT HEAD2041」。

「GREAT PRETENDER」と同じく、フジテレビ+Ultraの枠だったんだね

もともと、「NIGHT HEAD」は飯田さんの90年代におけるヒット作である。
聞けば、彼は06年にも「NIGHT HEAD GENESIS」というアニメを作ってるらしく(私は見たことないけど)、もはや飯田さんにとってこれはライフワークなんだろう。
「2041」を見た印象は、「もともと『NIGHT HEAD』って実写じゃなくアニメ向きのコンテンツだよな」という感じ。
飯田さんはその作家性からして、今後はアニメ専門でいった方がいいんじゃない?
ただし文法が実写ベースゆえ、萌えに代表されるアニメ文法はあまり得意じゃない様子。
それは古沢良太にせよ、実写畑の人は同じことがいえる。
いや、だからこそフジテレビは彼らを使うんだよね。
フジテレビは、どっちかというと実写文法のアニメを好む社風だから。
実は私も、実写文法アニメには好意的な立場である。
なぜって、そういう土壌があった方が、今後もどんどん実写畑から才能を引っ張ってこれるじゃん。
たとえば、三谷幸喜や宮藤官九郎の作るアニメって見たくない?
・・言いたいところだが、どうやら三谷幸喜は過去に「サザエさん」の脚本を書いていて、既にアニメデビューは済ませているらしい。
ちなみに、これが彼の手掛けた「サザエさん」である↓↓

三谷幸喜だから、もっとビリーワイルダーっぽいのを期待してたけど、案外普通の「サザエさん」でした。
三谷さんの場合、やっぱりあの独特の作風は実写でしか難しいのかも。
じゃ、宮藤官九郎は?
クドカンの場合はああいうシュールな会話劇ゆえ、アニメとの相性は絶対にいいはずだし、【宮藤官九郎×湯浅政明】や【宮藤官九郎×新房昭之】など、めっちゃハマると思うんだけど?
そういう夢のコラボ、一回見てみたいなぁ・・。


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