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世にも小さな音楽劇団の脚本

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よあけのばん公演シナリオのまとめ
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#お話

カタチのおはなし

カタチのおはなし

─カタチ。見たり触れたりしてとらえることができる、物の姿・格好。物体の外形。
きょうのお話は、見えるカタチが無い男の子と、カタチを探す女の子の不思議な物語です。
ふたりは運命の恋人同士です。だから簡単に出会うことができました。
どんな風に出会ったのでしょう?
それはこんな風に彼の歌声を辿って、彼女はこっそり家を出ました。

→Over the moon

辿り着いたのは、月の青白い光が照らす公園

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2021.4.30 よあけのばん記念公演

2021.4.30 よあけのばん記念公演

よあけのばんでは、お互いの誕生日などに演目を書き下ろすという風習(?)があります。過去、あまさき倫公里に向けてNonsugarが書き下ろした演目には【ハンニバル】【TWENTY SEVEN CLUB】【君に決めた】があります。

今回は、あまさき倫公里(28歳)の誕生日の為に書き下ろされたNonsugar単独公演で、演目名を伏せた状態で行われました。Nonsugarから手渡されるキーワード(ピン球

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ぼうぼうと風の吹くところで死んではいけない

ぼうぼうと風の吹くところで死んではいけない

チャプター1【今まさに自害しようとしている少女】

「ぼうぼうと風の吹くところで死んではいけない」と教えてくれた先生の名前も忘れてしまったから、何も気にせずこの世を去れるわ。

→日没オレンジ

チャプター2【友達を亡くしてしまった少年】

崖から飛び降りて死んでしまったから
彼の顔は無くなってしまったんだ

葬儀にはたくさんの人が来たけど
誰も彼の顔を見ることはできなかった

一枚ぽっちの便箋を

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注文の多い料理店?

注文の多い料理店?

 二人の若い紳士が、すっかりニッポンの若者のかたちをして、とても便利なスマアトホンを持って環状線の寺田町駅の近くの、木の葉の一つも落ちていない道を、こんなことを云いながら、あるいて帰っておりました。
「ぜんたい、ここらの町はけしからんね。客引きの一人も居やがらん。なんでも構わないから、早くタンタアーンと、飯を喰いたいもんだなあ。」
「焼きたての鶏肉と冷えたビールなんぞを、ごくごくと喉に流しもうした

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ぼくらのひみつきち

ぼくらのひみつきち

空間 絵描きdai
演出 よあけのばん

わたしたちの町には一本の川が流れていて、、、と始めてみたけれど、桃が流れてくるわけでも、河童が住んでいるわけでも死体が隠されているわけでもない、よくある川です。河原で花火をしたり、河原で星を数えたりできて、始まりも終わりもない、ただただ、感情も風景も流れて行く、川。ありふれた日々変わりゆく景色ですが、そこには大事な記憶があって、今日もあなたは描き続けている

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モナ・リザ

モナ・リザ

わたしの生まれは1503年のイタリア。今はパリのリヴォリ通り、75001番地。“ルーヴル美術館”と呼ばれる大きな建物の中に居を構えています。
あなたたち人間は、わたしのような絵が意見を持たず、言葉も話さず、感情も持たない無機物だと思っているようですが、それは大間違いだと思ってもらって構いません。

…申し遅れましたが、わたしの名前は『モナ・リザ』。創ったのはレオナルド・ダヴィンチという男性。骨はポ

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都市伝説

都市伝説

「ねぇねぇ、口裂け女って知ってる?」
「知ってる!赤いコートの女の人なんでしょ?」
「そうそう、学校帰りの子に話しかけてくるの。髪が長くってすっごくキレイなんだけど、
マスクをしているのよ。」 
「で、何か聞いてくるのよね?」
「そうよ。『わたし、キレイ?』って。」 
「でも顔は見えないんでしょ?」
「顔の半分を覆うようなマスクをしているからね。でもね、目鼻立ちからキレイなのがにじみ出てるのよ。」

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リモコンが壊れた

リモコンが壊れた

演目【リモコンが壊れた】

暑い、
暑い、、
暑い、、、

8月、観測史上最高気温更新、真夏日の夜、これは熱帯夜。

こんな日に限ってクーラーのリモコンが壊れるだなんて

サマータイムマシンブルースかよ、、、

自然が生み出したサウナに殺されてしまう
とにかく、生きねば

しかし、暑さで何も考えられない。

→楽園のかいじん

おやすみなさい。って、、、
寝れるわけがない。

そうだ、あいつに電話

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幽霊の誕生日

幽霊の誕生日

演目【幽霊の誕生日】

あなたは、今日1日を悔いなくすごしたでしょうか。これまで沢山の選択をしてきたことでしょう。たとえ、あなたが「選んでこなかった」と思っていたとしても、生まれてきたからには、死が訪れるのは当たり前です。忘れていたのでしょうか。

電源を落とすようにパチン。目の前が真っ暗になっておわり。あなたは最後に何を思うでしょうか。これでクリアだと思うのでしょうか。それとも、まだまだやりたい

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太陽の塔

太陽の塔

演目【太陽の塔】

“今夜の太陽の塔は…彼女です。”

ない…ない…ない!
あっちも こっちも…沢山探したのに…!
一体どこへ行ってしまったのかしら…。
まずは正面…そして上の顔…
うしろ…どこを探してももうひとつが見当たらないわ。
4つめ…地底へ眠った…もうひとつの太陽。

→回帰船

「みなさん初めまして、わたしは太陽の塔。
地下へ飾っていたはずの4つめのお顔を失くして数十年経ちます。
今夜は

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ボニーとクライド

ボニーとクライド

演目【ボニーとクライド】

わたしはボニーパーカー。
そして彼がクライドバロウ。

→市場

当時、うらぶれた町でウェイトレスなんかをしていたわたしにクライドが言ったのよ。

「君はただの女じゃない。僕と一緒に何かを求め続ける女だ。こんな町なんか退屈だろう」って。

彼が犯罪者で危険な男だってことは知っていたわ。でも、こっちにおいでって彼が笑うと逆らえなかったの。だって彼はとても魅力的なんですもの

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5人の姫といちばんの王子

5人の姫といちばんの王子

演目【5人の姫といちばんの王子】

白雪姫は言いました。
「わたしはたいそう美しく生まれました。
“ある程度”美しい継母に恨まれるくらい、雪のように白い肌、黒檀(こくたん)のように黒い髪、そして血のように赤い唇。
これこそがわたしの個性、そしてこれこそがわたしの武器。
自慢じゃないけど、わたしを恨んだ継母には2度も殺されかけたわ。
一度目は腰紐で締め上げられて。二度目は毒を塗った櫛で刺されて。

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