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山際響:短編集

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山際響の短編まとめです。
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#家族

飛行機雲

飛行機雲

 雨上がり特有の土の匂いが、開いた窓から流れ込んできた。
 秀樹が顔を上げると、プラスチック制の水のない水槽が、白いレースのカーテンに撫でられている様が見えた。カーテンと水槽が擦れる音を聞きながら秀樹は窓を見た。カーテンの合間から見える空は、まるで溶鉱炉のように赤かった。次に水槽の中で佇んでいる黄色と黒の肌を持つカエルを秀樹はしばらく眺めていたが、空からの飛行機の音で、集中が途切れた。秀樹は立ち上

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ポモドーロ

ポモドーロ

 恭司は実家の家庭菜園の中に分け入ると、掌に収まる適当な果実を見つけ出し、力を入れて握りつぶした。極小の種を含んだ果肉が液体となって、掌の中から溢れて土の上に落ちた。一体何の野菜の実かは分からないが、妙にひんやりとしていたのが印象に残った。恭司は野菜を握りつぶす事で、気分の悪さを自分自身に対して表現した。
 陽に照らされた菜園の土を見ながら、人から言われるように、自分でも感情表現が上手くないと思っ

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オーロラ

オーロラ

 オーロラは見えなかった。雪を被った白樺の合間に、揺らめく星が見えるだけでも、スオミには満足だった。夜空を見上げ、そこに星が見えれば、北欧の小さな村に住んでいる事を忘れ、ほんの少しだけ日々の疲れもとれた。
 スオミは倉庫から、大き目のマキを二つほど取り出した。十歳の力では両脇に二つ抱えるのが限界だった。足元で白い犬が尻尾を振っている。犬の役割は、家の裏口のドアを引っ掻いて、スオミの母にドアを開けて

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