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【俳句】雑十三句(その二)
カルディで珈琲しばく春の昼
瓶詰めの安納芋や春来たる
経年のaiboが踊る蝉時雨
海底を這う夢を視る夏木立
人形を組み立ててゐる夜長かな
そぞろ寒レンブラントの昏き陰
初嵐ざつくばらんに墓標立つ
表裏逆に着ていた赤セーター
寒の雨積もる話があるはずだ
音だけの世界にいたい冬景色
走つても孤独同士の木馬たち
人間が機械を演じるときは青
ほんたうに冷たいさうだ満月は
【詩】少女たちの夜会
少女たちが鱗粉を顔にぬる
そのために
真っ青な蝶ばかりを死なせている
少女たちは朽ちた式場にあつまり
おおきな鏡が
泉のようになびいている衣装部屋で
薄絹をかさねがさね
ひとつの四阿をつくる
あしたこそ
生まれることのないように
少女たちは祈り
蚕の似姿でねむる
しだいに空が白んでゆくことを
少女たちは悔やむ
いつしか
少女たちは
大人のかたちになる
影をともなう
真っ青な蝶となる
【短編】サーカスナイト(前編)
前書き
このお話はグロテスクな描写を含みます。苦手な方はそっとページを閉じ、大丈夫な方はそのままお読みください。
広場が燃えていました。というのは少年の見間違いで、本当はまっ赤な天幕がぽつねんと、さびれた広場にはられていたのでした。
移動式のサーカス団がやってきたのです。
少年はチケットの列にならび、期待に胸をふくらませながら席につきました。天幕のなかはひんやりとした空気に包まれています。や