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取り留めのない揺らぎたち

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記事一覧

プリキュアでもお花屋さんでもなく、私は観音菩薩になりたかった

プリキュアでもお花屋さんでもなく、私は観音菩薩になりたかった

私が中国の祖母の家で暮らしていた20年程前のお話。

「南無阿弥陀佛~南無阿弥陀佛~#%&$」内容を理解するにはあと3度程転生しなければならないだろう仏教音楽と立ち込めるお香の香り……それが祖母の家だった。

熱心な仏教徒だった祖母。家ではお寺で購入したらしい仏教音楽のカセットテープを常に流していた。毎朝、家の3か所に設置された祭壇にお香を立て、ぶつぶつとお経を唱えるのが日課だ。やっとこさ歩行が安

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とある日の日記のようなお手紙Ⅲ

とある日の日記のようなお手紙Ⅲ

また会える、という確信を携えた“さよなら”は、まるで胎内にいるかのような安心感を覚える。

あなたにはそんな安心感がある。年齢も住む場所もバッググラウンドも交わらなかった私たちが出会ったのは、つい7ヶ月程前のこと。目線が交わって会話が生まれ、私たちの魂は近しいところにいるねって。

大都会から瀬戸内海の小さな島へ移住したあなたは、海で泳ぐイルカのように軽やかで生き生きとしていた。キラキラと水面が光

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「仕事辞めます。」決意した友へ

「仕事辞めます。」決意した友へ

山手線に揺られながらぼーっと眺める景色はどんよりしていた。壁にひびが入っているほど年老いたビルは、さらに年老いて見える。折角の土曜日も曇りか。雨も降り出しそうな曇り空。バッグに折り畳みの傘を忍ばせてきた。

電車内を見渡せば、窓の外ではなく手元の液晶窓を除いている人だらけ。大きい窓から眺めるこの街の風景も悪くないよ、と心の中で呟きつつ、私も右手に握られた液晶窓が気になり、何気なくInstagram

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【盲腸との闘いⅢ】号泣するキョンシー

【盲腸との闘いⅢ】号泣するキョンシー

次の日の朝、6時45分。吐き気と共に目覚める朝は最悪だ。トイレへ駆け込むがリバースはしない。吐き気が落ち着き、またベッドへと戻る。10~20分するとまた吐き気が襲ってくる。もう気分はこの世の底辺。なんとか受診の時間までは生き延びねば!必死にコントロールし(ほぼ我慢)、なんとか身支度を整え、診療所へと向かった。この日は腹痛はほぼ収まっていた。人並みに歩けるが、ただ吐き気が……。

診療所に到着し、名

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【盲腸との闘いⅡ】橋渡り

【盲腸との闘いⅡ】橋渡り

午前9時50分、私は右下腹部痛を抱えながらGoogleマップで「消化器内科」と検索して一番距離の近い診療所へと向かっていた。「徒歩8分」、シルバーカー推すおばあちゃんと並ぶ歩行スピードの私は恐らく15分はかかるだろう。

この日は下水道か何かの工事中だったため、道端にアーチ状の橋が架けられていた。普段ならルンルンで渡るであろう橋も今日に限っては地獄の橋渡りだ。ドドドドドドドッとドリルの音と共に、私

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【盲腸との闘いⅠ】キョンシー

【盲腸との闘いⅠ】キョンシー

それは、あまりにも突然訪れた。

午後のミーティング中、お腹のみぞおち部分の猛烈な痛みと吐き気に襲われたのだ。トイレへ駆け込もうとも思ったが、饒舌に話す先輩とスクリーンの前を横切らなければならない。下手に動いた方がリバースしてしまい、大惨事になる可能性がある。まだ移転してきたばかりのホコリひとつないオフィスを私の嘔吐物で汚すわけにはいかない。しばらく耐えるか……。

当然先輩の話など全くもってムー

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まとめる気すら感じられないただの近況

まとめる気すら感じられないただの近況

お久しぶりです。
復職してから3ヶ月が経った。かろうじて辞めていない。毎日ヒィヒィ言いながら今の仕事に食らい付いている。というか部署の人に恵まれ、しっかり教育して頂いているお陰だ。感謝しかない。

この3ヶ月で本社は港区へ移転し、部署の方がご結婚された。私はというと、会社が近くなったことで、ギリギリまで寝てほぼスッピンで出社するようになった。キラキラ港区OLとは程遠い、ズブズブずぼら女子だ。(なん

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父の頼りなさは、実は強さだったのかもしれない

父の頼りなさは、実は強さだったのかもしれない

11月22日、産業医との面談で来月から東京本社での復職が決まった。4ヶ月もニート(休職)をしていたのに、あっという間すぎてもう少し休んでもよかったかなと今更ながら勿体無い気持ちもしている。
そんな惜しさを抱えながら、慌ただしく物件探しに断捨離、今住んでいるお家の解約手続きに追われていた。ばったばたのまま12月1日を迎え、東京でホテル生活。そんな生活を言い訳に、note更新を怠っていたけど、そろそろ

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