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うみみず

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2009 うみみず〜羊水紋〜 Umimiz -Yoh Sui Mon-

2009 うみみず〜羊水紋〜 Umimiz -Yoh Sui Mon-

私にはわからないが、科学者によれば人間は海からきた。水がある。水は岩を砕く。水は水蒸気となる。考えられないような量の物が繰り返し動いている。衝突があって、火があり、水蒸気となって雨となってそれを巡り巡る。いうなれば海は地球の血液のようなものだ。人を愛すると心臓がどきどきする。 
大野一雄『稽古の言葉』

While I don't really know a lot of about creati

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2010 うみみず〜此岸〜

2010 うみみず〜此岸〜

今はこちらの岸にいる

いつから
ここにいるのか
分からないまま
ずっとこちら側にいるような
錯覚に陥ったまま

向こう岸には
あたたかい灯りがともり
悩みもなく
天国が存在するかに
思われる

向こう岸は
理想とのずれが大きくなり
貧しい人があふれ
地獄の世界にちがいないと
決めつける

ある日
窓を開け
路地を抜け
川を渡り
境界を越え
向こう岸に降り立つ

そこでは
似た顔つきの人たちが

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2010 うみみず〜光場〜 Umimiz -Light Space-

2010 うみみず〜光場〜 Umimiz -Light Space-

市場のあちこちに
生き物から匂いがこぼれ
路地という路地には
水たまりが地面にはいつくばる

朝から酔っぱらいにからまれ
日本から来たのかと
何度も聞いた納得の仕方に
涙がこぼれる

それでも半島の人は
さっきまで怒り狂っていたはずなのに
申し訳ない顔になり
わたしを抱きしめる

チョンイッタ
情がある

きっと彼女には
わたしの涙の意味が
わかりはしない

市場と路地を通り抜けると
一昔前からそ

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2012 うみみず~支流~Umimiz -the branches of the river-

2012 うみみず~支流~Umimiz -the branches of the river-

この水の流れはどこから来たのか
いちばんはじめの場所に
巡りつく

夏の山では
りんごの青い実がたわわになり
くるみの実はまだ青い果実の中にあることを知る

大きな木の下で
近所のお年寄りたちが集い
青いりんごの実をレンガで割り
すすめてくれる

海からは遠いこの土地が
はじまりならば
川から水が流れ
海に注ぎ込み
離れ島にたどり着くには
どれだけの時間がかかったのだろう

そして流れは
枝分かれ

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