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瑞草的

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2021年12月の記事一覧

旅の読書

旅の読書

せっかく旅行に来てるのに……。本なんて、いつでも読めるでしょう。

じっさい、呆れた調子でかつて誰かにそう言われたことがあるような気もするし、そうでなくとも、自分でもそう思っているんです。とはいえ、カバンに本が入っていないと気持ちがどうも落ち着かないので、一応一冊だけ、読みかけの本を入れておき(ちなみに今は宮本武蔵の「五輪書」を読んでいます。)、でもこれはあくまで入れておくだけで、今回の京都旅行で

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旅の土産: 「鍵もち」(京都)

旅の土産: 「鍵もち」(京都)

江戸時代享保年間(1716〜1736)に創業されたという老舗菓子店、「鍵善良房」の「鍵もち」。

ある人は旅行に行く前からこの「鍵もち」を激賞していて、これを買うために京都に行くんだくらいの勢いでした。
京都の土産といえば八ツ橋くらいしか知らなかったので訊いてみると、もちの食感と味がいかに素晴らしいかたっぷりと語ってくれたのですが、その内容はもはや詳しく思い出せません……。もっとちゃんと聞いておけ

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旅の土産: 「マダムブリュレ」(大阪)

旅の土産: 「マダムブリュレ」(大阪)

もう一つ、分かっていなかったことがある。
どうしてこのお土産を買いたいのかということだ。大阪の「マダムシンコ」は有名で、看板商品のマダムブリュレは累計で1000万個売れているらしい。具体的な数字を出して説明されてもすんなりと納得できず「良いことと良く思われていることは違う」とぼくはまた持論で武装し、反抗的な子供のようになっていた。
近代民主主義、インターネット、SNSの登場などによって切り開かれて

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旅の土産のプロローグ

旅の土産のプロローグ

帰ったら今回の京都旅行で印象に残った体験を日記的に綴っていこうと思っていたのだが、先にお土産について書くことになってしまった。
お土産には賞味期限があって、経験の方にはそれがない、と単純に割り切ることもできない。だが、思い出に耽っているうちに目の前の美味しいお菓子が食べられなくなりました、では率直に言ってあまりにも愚かだ。

いや、もっと素直になろう。買ってきたお土産が魅力的すぎて、すっかり食べて

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サプライズ変奏曲

サプライズ変奏曲

また電車に乗り遅れた……。引っ越してから一ヶ月と少し、いまだに家から駅までの距離感をつかみかねている。すると、何時の電車には何時に家を出れば間に合うだろう、みたいなありふれた時間感覚も、うまく機能しない。とりあえず券売機で切符を買ってはみるものの、次の電車が来るのは一時間近く後だ。駅舎を背に途方に暮れていると、商店街の通りの一角にパチっと明かりが灯った。今まさにそこの喫茶店が開店したらしい。喫茶店

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冬の日、バスで奏でる交響曲

冬の日、バスで奏でる交響曲

オール・チャイコフスキーのプログラムでいこう。そのつもりでバスの車中で聴くためのプレイリストを編んで、昨夜のうちにダウンロードまでしておいた。……のだが、まだ一曲しか聴かないうちにバスは目的地に到着しようとしている。まさに高速バスである……。

いや、正直にいうと実は一曲も聴いてない。記憶は2楽章か3楽章のあたりからこの車窓の景色のように霧がかかって、一続きのメロディーとして捕まえることができなく

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