怪談夢屋

怪談だけ

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マガジン

  • 【隙間怪談-3-】

    怪談301〜400まで

  • 【隙間怪談ー特選ー】

    数が多くなってきて管理が如何ともし難いので評価が高かったものをぶち込むマガジンを作りました。

  • 【隙間怪談-2-】

    怪談101〜200本まで。

  • 【隙間怪談-1-】

    怪談1〜100

最近の記事

落ちてきているの

江本さんの自室には、天窓がある。 「えっとねえ。俺の部屋は2階で、天窓があってすりガラスだけど空が見えるんだ」 わかるかなぁ、と図に書いてくれた。 一般的な真四角の部屋に、天井に一畳分くらいの天窓がついている。 「……それがさぁ」 一昨年の6月半ばごろ。 深夜、雨が天窓を打ち付ける音を聞きながら江本さんが眠っていた時。 ……――――ドン!!!!! 鈍い音が天井を鳴らした。 「すごい音。もう、隕石か雷かって……びっくりして悲鳴あげて飛び起きて、しばらく壁に寄り添っ

    • うれしいベッド

      某所病院に勤めている甲谷(こうたに)さんから聞かせていただいた話。 「うちの病院に“うれしいベッド”って曰く付きのベッドがある。大部屋じゃなくて個室のベッド」 彼の話曰く。 患者がそこに寝ると“うれしい気持ちになるベッド”というのがあるのだそうで。 漠然と横になった瞬間にそうなる……とかではなく“うれしい気持ちになる夢”を見るらしい。 看護師は朝の雑談ついでに夢の内容について詳しく聞いたりするが、患者の方は夢の内容を全く覚えておらず、ただ嬉しい気持ちになる夢だった……

      • そんなわけないじゃない

        なんと知人が作品をざらーっと読める動画を作ってくれました。 早朝四時「どう?」って送られてきたサムネがあまりにもクソダサアイキャッチすぎて笑ってしまったので僕が起き抜けにスマホで作りました。 アイキャッチどうでしょう。 僕の活動は今後、今まで書いたものをブラッシュアップ?して?こういう感じでまとめて、ナレーションがついたりつかなかったりする方向性になります。新作はぼちぼち。 ……夏の百物語は考えている最中で……新作はお待ちください……。

        • 縄のさがる部屋(1)

          「この間、自殺しようと思ったんですけど」 話を聴かせてくれたのは畑(はた)さん。 ごく普通のサラリーマンと聞いていたが、彼は最近、死のうと考えていた。 「いやぁね、それが。死ぬ時って気力がないと死ねないじゃないですか。わかります?」 ああ、それはそうですね、うん。 と、僕も何となく覚えがあったのでそこは相槌を打った。 死にたい時、生きている何割かの人間なは何となく心当たりがあるかもしれないのだけれど、気力があって「死のう!えい!」と思えるある程度の元気がなければ人は望

        落ちてきているの

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        • 【隙間怪談-3-】
          7本
        • 【隙間怪談ー特選ー】
          0本
        • 【隙間怪談-2-】
          100本
        • 【隙間怪談-1-】
          100本

        記事

          【おしらせ/休刊週刊】

          200日毎日執筆したので 少しだけお休みいただきます。 次回は月曜くらいから……

          【おしらせ/休刊週刊】

          心霊写真たち

          「これ、どう思う?」 麻友(まゆ)さんが机に何枚かの写真を並べて言った。 これ、というのは写真である。 先日、大掃除をしていたら箱の中から中身の入った茶封筒が出てきて、開けてみたら沢山の写真が入っていたのだがそれが“おかしい”から助けて欲しい……ということである。 一見、普通の写真に見えるそれは麻友さんと男性のツーショット写真だ。 何枚もの写真。 1枚1枚、麻友さんは別の男性と写っている。 隣の男性達は皆服装も年齢層も違うのだが、麻友さんはどれもこれも同じワンピース

          心霊写真たち

          すずなり蔵(2)

          前回:すずなり蔵(1) しゃん。 しゃん、しゃん、しゃん。 蔵には小さく鈴の音が響いている。 何だろう、どこから聞こえるんだろう? 2人は蔵の中を懐中電灯で照らして探し回ったがとうとう桐箱や箪笥、棚の中から何か鈴の音が鳴りそうなものというのは見つけられなかった。 「これ、やっぱオバケじゃん!って2人で顔を見合わせて、そこでやっと“怖い”って思ったんだよ……それまでは冒険気分だったのにね……」 しゃん。 2人は顔を見合わせると薄く開いている蔵の扉に走り出し、蔵の外に

          すずなり蔵(2)

          すずなり蔵(1)

          「爺ちゃんの家に行った時は、ぜーーーったい蔵に入らない!って言うのが約束だったんだよね、理由はあんまり話してもらえなかったけどさ」 子供の頃から、いやに大きい家だなあとは思ってたんだけど……と話し始めた物部(ものべ)さんの実家は、住宅街から離れ田畑に囲まれた辺鄙な所にある。 「うちの家は昔は呉服屋だったらしいんだけどね、歴史とかは詳しくなくて……蔵に古い着物とか装飾品がたくさん仕舞ってあるから絶対に触るな、って言われていたわけ。アンティーク着物って言われる種類の着物は戦前

          すずなり蔵(1)

          私には見えない(2)

          前編:わたしには見えない(1) 「あの時の母は見た事ないような顔で私の事見てて、すぐにハッとして“おかえり”って言ってくれたけど学校で起こった事件の事なんて話す気になれなくてね……」 気が重いまま今のソファでお菓子を食べている間、夕方のニュースではまたあの子のニュースがやっていた。 知っている場所が次々とテレビ画面に現れてスリップ痕やまだ残る小さな血痕を映してゆく。 「母は忙しそうに家事をしてるし、父も帰ってくるまで時間があったし……部屋で宿題でもしてようと思ったんだけ

          私には見えない(2)

          私には見えない(1)

          「あのね、人って呪えるんだよ」 曽根(そね)さんはかつて、中学校に通っていた頃に出来心で人を呪った事がある。 ちょっとした諍いが原因ではあったものの、当時考えられる中では一番酷い方法で相手を呪ったという。 「当時ね、苛められてたんだ……それで、相手をどうにかしてやりたくて……」 苛めはひたすら、無視されるというようなものだった。 きっかけはわからない。 殴られたり蹴られたりしたわけではないが、自分の存在が透明になったような生活は苦しかった。 毎日、どうしようどうしよう

          私には見えない(1)

          【間違えて本文消してしまいました……】

          本文消して上書き保存してしまいました……なんかそのうち埋めます……

          【間違えて本文消してしまいました……】

          柔らかいしあたたかい その後

          これは、先日書かせていただいた“柔らかいしあたたかい”の小畑(こばた)さんから後日聞かせてもらった話である。 彼女はあの日以降ずっと、柔らかくあたたかい何かを背負って生活をしていたそうである。 ふと背中に意識を向けると、柔らかいものがそこにあるし、あたたかみもある。 たまに〈ふうふうふうふう〉と息遣いも聞こえる。 何がいるのか知りたくて背中を見ても鏡越しに見ても何もわからなかった。 小畑さんには見えないのだ。 「でも毎日ずーっと柔らかいしあたたかいの。怖くて怖くて仕

          柔らかいしあたたかい その後

          それは反則だろ

          これは昨日の僕の話。 深夜2時過ぎ。 そろそろ寝なければ、と電気を全て消しベッドに入って暫くした頃。 ぱきん、ぱきん。 天井付近から音がした。 パン! 次は床の方から音がした。 いわゆるラップ音だとハッとする頃には数秒に一度の間隔でパキン、バキッ、パン!コンコン!と空間内のあらゆる場所から音がする。 コンコンコンとフローリングの床を叩く音も混じるのだが、指先でコンコンとやった時と同じ音というのがタチ悪い。 純粋に“怖い”。 「ああ、もう寝られない……というか、あ

          それは反則だろ

          柔らかいしあたたかい

          深夜、水を飲みに2階から1階へと降りた小畑(こばた)さん。 彼女は真っ暗な中、スマートフォンの明かりを頼りにキッチンへ向かった。 途中、玄関前を通り過ぎた時。 ――――キィ。 ドアノブが回る音がしたという。 音のした方を見ると、今まさにゆっくりとレバー状のノブが下向きに動いている最中だった。 「……ん?ん?」 それは小畑さんの前でゆっくりと下がり、もう一度あがった。 不審者か、泥棒が入ろうとしている……と、そう思い身構えた。 ただ、もちろん玄関に鍵はかかっているから

          柔らかいしあたたかい

          いない

          「引っ越しをする事になって家財道具とか荷物を纏めてたんですけどね。その時にアルバムが沢山入った段ボール箱が出てきたんですよ。もう20年以上になるもので、娘が産まれてから写真をよく撮るようになったのを大事に仕舞ってあったの」 杉本さん夫婦には一人娘がいる。 初めての子供が娘だったから、2人とも本当に彼女の事を猫可愛がりしていたという。 段ボール箱一杯になるほど写真を沢山撮ったし、子供の頃に旅行へ行った時の動画は今でも古い携帯電話に残されている。 「懐かしいから段ボール箱の

          “ない”

          「もう何年も前からになるのよ」 日向さんは、某所教室で人に絵を教えている。 たくさんの生徒を受け持っていて、彼女自身も個展を開いたりしている。 「もう何年も前。うちの教室に1人の女性が通っていたのよ。主婦の方。その方、何枚も絵を描いて手慣れてきた時に、今は家にある物で一等気に入っている物を描いてるのよって話してくれたの。それは子供の頃から大切にしてる人形で、フランス人形だったのだけれど絵に描いてあげたいっていうのよ。それはいいですね、って話していたの」 件の彼女の絵は、

          “ない”