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心霊写真たち

「これ、どう思う?」

麻友(まゆ)さんが机に何枚かの写真を並べて言った。
これ、というのは写真である。

先日、大掃除をしていたら箱の中から中身の入った茶封筒が出てきて、開けてみたら沢山の写真が入っていたのだがそれが“おかしい”から助けて欲しい……ということである。

一見、普通の写真に見えるそれは麻友さんと男性のツーショット写真だ。

何枚もの写真。
1枚1枚、麻友さんは別の男性と写っている。

隣の男性達は皆服装も年齢層も違うのだが、麻友さんはどれもこれも同じワンピースを着ている。

どの写真も全て2人とも表情はなんとも楽しそうに破顔しているが、2人とも両の腕を“気をつけ”の形をして足も揃えて立っているだけ。

そしてそれよりも異様なのは、写真が撮られた場所。

何故か後ろには無数の墓が並んでいて、墓参りのついでに写真を撮りました……と言ったような様相なのである。
写真を見比べたが、どれもこれも同じ墓が写り込んでいて明らかに同じ場所だろうとわかる。

一言で言い表そうと思うと非常に悩むのだが“不気味”とか“なんだこれは”とか、そういう言葉しか出てこない

言葉を選んで悩むのを察したのか麻友さんは「この写真、撮った覚えないんですよ……」とポツリと呟いた。
場所にも覚えはないらしい。
墓参りなんて、子供の頃に何回か行ったっきりで最近は墓の前を通った記憶すらないという。

「それに、写ってる人、全員知らない人なの」

男の人達はもちろん見た事ない人ばっかりなんですけど、私の方も知らない人なんですよね。
私、こんなワンピース持ってない。

それだけじゃなくて。

私の顔の右目側にほくろがあるけれど、写真のは顔の左にほくろがあるでしょう?
それによく見たら目の形も違う。
私の目、こんなに垂れ目じゃないでしょ?
口の横幅も写真のほうが広いの。
この写真全部、私とそっくりだけど私じゃない人が写ってるの。

「……これ、どうしたらいいと思う……?」

こちらからは「お寺か神社を頼るのが一般的ではないでしょうか」と、ありきたりな答えを搾り出すのが精一杯だった。

その翌日。
彼女は手元の写真を全てとある寺に持ち込み処分してもらったそうである。

「実は、最初に持って行ったのは家の近所の神社だったんだけど、断られちゃった。なんでかはわかんない。お寺の人は見た瞬間に顔顰めてたけど、神社に断られたからお願い!って頼み込んだら受け取ってくれた……何だったんだろう、あの写真……今はもう手元にないので一安心だけどね……」

また何かあったら報告する、と戴いたメールの最後にはそう書かれていた。

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