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【隙間怪談-3-】

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怪談301〜400まで
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落ちてきているの

江本さんの自室には、天窓がある。

「えっとねえ。俺の部屋は2階で、天窓があってすりガラスだけど空が見えるんだ」

わかるかなぁ、と図に書いてくれた。
一般的な真四角の部屋に、天井に一畳分くらいの天窓がついている。

「……それがさぁ」

一昨年の6月半ばごろ。
深夜、雨が天窓を打ち付ける音を聞きながら江本さんが眠っていた時。

……――――ドン!!!!!

鈍い音が天井を鳴らした。

「すごい音

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うれしいベッド

うれしいベッド

某所病院に勤めている甲谷(こうたに)さんから聞かせていただいた話。

「うちの病院に“うれしいベッド”って曰く付きのベッドがある。大部屋じゃなくて個室のベッド」

彼の話曰く。

患者がそこに寝ると“うれしい気持ちになるベッド”というのがあるのだそうで。
漠然と横になった瞬間にそうなる……とかではなく“うれしい気持ちになる夢”を見るらしい。

看護師は朝の雑談ついでに夢の内容について詳しく聞いたり

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心霊写真たち

心霊写真たち

「これ、どう思う?」

麻友(まゆ)さんが机に何枚かの写真を並べて言った。
これ、というのは写真である。

先日、大掃除をしていたら箱の中から中身の入った茶封筒が出てきて、開けてみたら沢山の写真が入っていたのだがそれが“おかしい”から助けて欲しい……ということである。

一見、普通の写真に見えるそれは麻友さんと男性のツーショット写真だ。

何枚もの写真。
1枚1枚、麻友さんは別の男性と写っている。

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すずなり蔵(2)

前回:すずなり蔵(1)

しゃん。
しゃん、しゃん、しゃん。

蔵には小さく鈴の音が響いている。
何だろう、どこから聞こえるんだろう?

2人は蔵の中を懐中電灯で照らして探し回ったがとうとう桐箱や箪笥、棚の中から何か鈴の音が鳴りそうなものというのは見つけられなかった。

「これ、やっぱオバケじゃん!って2人で顔を見合わせて、そこでやっと“怖い”って思ったんだよ……それまでは冒険気分だったのにね……

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すずなり蔵(1)

「爺ちゃんの家に行った時は、ぜーーーったい蔵に入らない!って言うのが約束だったんだよね、理由はあんまり話してもらえなかったけどさ」

子供の頃から、いやに大きい家だなあとは思ってたんだけど……と話し始めた物部(ものべ)さんの実家は、住宅街から離れ田畑に囲まれた辺鄙な所にある。

「うちの家は昔は呉服屋だったらしいんだけどね、歴史とかは詳しくなくて……蔵に古い着物とか装飾品がたくさん仕舞ってあるから

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私には見えない(2)

私には見えない(2)

前編:わたしには見えない(1)

「あの時の母は見た事ないような顔で私の事見てて、すぐにハッとして“おかえり”って言ってくれたけど学校で起こった事件の事なんて話す気になれなくてね……」

気が重いまま今のソファでお菓子を食べている間、夕方のニュースではまたあの子のニュースがやっていた。
知っている場所が次々とテレビ画面に現れてスリップ痕やまだ残る小さな血痕を映してゆく。

「母は忙しそうに家事をし

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私には見えない(1)

私には見えない(1)

「あのね、人って呪えるんだよ」

曽根(そね)さんはかつて、中学校に通っていた頃に出来心で人を呪った事がある。
ちょっとした諍いが原因ではあったものの、当時考えられる中では一番酷い方法で相手を呪ったという。

「当時ね、苛められてたんだ……それで、相手をどうにかしてやりたくて……」

苛めはひたすら、無視されるというようなものだった。
きっかけはわからない。
殴られたり蹴られたりしたわけではないが

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