【ファジサポ日誌】50.長すぎたアディショナルタイム~第15節ファジアーノ岡山vs大宮アルディージャ
1.長すぎたアディショナルタイム
85分19秒…自陣右サイドでタッチを割る。大宮ボールの判定。
(14)田中が副審の判定について、主審の方に向かってアピール。
85分20秒…タッチライン際で交代を待つ(4)濱田と(99)ルカオが映し出される。
85分38秒…(44)仙波out(4)濱田in
85分42秒…手を広げる(14)田中が映し出される。10秒ほど苦笑いをしながら手を広げ続ける(14)田中が続く。
86分03秒…窪田主審に何かを確認する(14)田中と(5)柳。窪田主審の手にはレッドカード、イエローカードの双方が見え隠れする。
86分19秒…この間、徐々に両チーム選手が集まり、何かを確認している様子。窪田主審は笛を加えて何らかのジェスチャーを繰り返す。手にはレッドカード、イエローカードの双方が見え隠れする。
86分23秒…解説の赤嶺さんから「レッドカードじゃないですね」のコメント。
86分44秒…誰かから「雄大、退場じゃない」との言葉。
86分54秒…誰かから「わかってないです。イエローです。イエローだけです。」との言葉。
87分07秒…約30秒間、窪田主審が相馬監督、木山監督の順に何らかの説明、(14)田中は(99)ルカオと交代
以上がDAZNで確認しました(14)田中雄大に対しての提示カードの誤りに関する経過です。
つまり、主審は(14)田中に対してのこの試合の警告が2回目であると誤認しレッドカードを提示したものと思われます。
映像では確認できませんでしたが、イエローが出された後のレッド提示であったのかなと推測できます。そのため(14)田中も明確かつ「なぜ?」といった表情で抗議していたのだと思います。
ややこしかったのが、(14)田中が(99)ルカオと交代する、まさにそのタイミングでの警告であったことです。警告自体が選手交代の前なのか、後なのかという点も、他の選手から確認を求めているような声も聴こえていました。
その後も主審が副審との確認作業に時間をかけている間、該当者である(14)田中に十分な説明がなされない。主審の監督に対する説明も、この場合は岡山側から説明すべきであると思いますが、大宮側に先に説明しているなど少々混乱の時間が費やされてしまいました。
記録上は(14)田中の交代は(44)仙波の交代と同時でした。
アディショナルタイム=試合中断時間ではないというのは承知していますが、上記の時間経過上では85分38秒から87分07秒の1分29秒は少なくとも、当初予定されていたアディショナルタイムに追加されたのではないかと推測されます。
岡山側からみた時、この試合の焦点をどこに当てるのかという論点はありますが、このシーンがこの試合の結果に大きな影響を与えたことは間違いないと思います。
岡山にとって不運であったのは、主審のミスによる混乱の前に選手交代が成立してしまったことです。
岡山ベンチの(4)濱田水輝を投入し5バックで守りを堅める想定時間は、おそらくATを含めて8~9分。これまでの逃げ切り例をみましても妥当な時間と思われます。
ところが、上記の混乱と収拾に割かれた時間が加わりATは7分に。岡山は実に10分以上、相手の攻撃を跳ね返し続けなくてはならなくなったのです。
画面からもみてとれる岡山側のスタミナ低下、大宮の勢い。ひょっとしたらこれは危ないという感覚がベンチにもあったのかもしれません。91分50秒前後、木山監督が自陣からスローインを入れる(2)高木友也に対して相手陣内にボールを入れるよう指示している様子が見えます。
大宮の攻撃を跳ね返し続けるには時間が長すぎる、相手陣内で時間を作りたいとの意図があったのかもしれません。この判断自体は妥当であったと思いますし、実際に失点シーンの直前までは上手く相手陣内で時間を作れていました。しかし、そうして時間を作りながらも試合は終わらない。
この時間帯の戦い方について、選手の意思統一を問うのでしたら、この相手陣内へボールを運んだ意図がしっかり伝わっていたかどうかであると思いました。
当然、クローズの場面ですので、相手ボールになった瞬間に重心を改めて後ろに移し、相手を牽制しながら自陣へと戻っていくのがセオリーだと思います。しかし、(5)柳育崇も(23)ヨルディ・バイスも前で潰そうとしてしまった。(5)柳の交わされた後の戻りは鈍っていたように見えました。あの位置で潰すことに勝負をかけたのでしょう。それがチーム方針に基づいたうえでの自身の判断ということであれば、今後はその位置で潰し切れるように応援するしかないと筆者は考えます。
全体的には今シーズンの岡山のネガティブトランジションの意識、プレーはまちがいなく向上しています。それが故に(15)本山遥のコメントからは昨シーズンの千葉戦がすぐに出てきたのでしょう。このコメントはある意味救いです(※コメントについてはファジゲートをお読みください)。
全体的な試合運びの要素は考えなくてはならないのですが、今回に関しては主審のミスがきっかけとなり、岡山は勝ち点2を失ったと言えるのではないでしょうか?
しかし、こんなトラブルをも乗り越える強さを身につけてほしいと思います。このアディショナルタイムもあと少しで乗り越えられました。こんな場面を乗り越えることが出来るようになれば、上位進出は自ずと見えてくると思います。
2.チアゴ・アウベスとの心中
全体的な試合運びについてですが、今の岡山は(7)チアゴ・アウベスのデキに左右されてしまうという点は改めて強く感じました。
前半終了間際のPKの失敗、(7)チアゴのPKは結構ポストに当たってゴールインというものもあり、毎回ヒヤヒヤはするのですが、それだけコースを狙っているという事なのでしょうね。ところがこの試合ではコースが甘かった。この点だけをみましても、いい状態の(7)チアゴではなかったのだと思います。
多くの方が指摘されていましたが、50分の決定機、(16)河野諒祐からのマイナスのクロスは(7)チアゴがスルーしていれば高い確率で(18)櫻川ソロモンが決めていたと思います。その直後、この2人が言い合っている場面を見せられてしまいますと、この2人の連携は難しいのかなと思わざるを得ません。
(7)チアゴ中心のチームを作るということは、チーム成績が(7)チアゴの好不調のサイクルに左右されるということです。つまり、J1昇格に向けては大型連勝は期待できないと述べても過言ではありません。
それでも(7)チアゴ中心のチームをつくるのでしたら、彼にプレースペースを与える、彼の弱点を補える相棒が必要となります。最近数試合の相棒である(18)櫻川は自身がストライカー、町田戦の先制点での潰れ役としての働きは見事でしたが、本来黒衣タイプの選手ではありませんし、(7)チアゴを補えるほどの守備力があるようにも見えません。
今までレビューであまり触れてこなかったというよりは触れたくなかったのですが、ミッチェル・デュークの穴は想像以上に大きかったのです。
偶然にも町田の前節の対戦相手は大宮でした。前回のレビューで少し触れましたが、町田の先制点はデュークがサイドに流れ、大宮守備陣を引きつけたことによるスペースを上手く使って生まれたものです。
先日の岡山戦でも彼が上下左右に動いてボールを落とす、相手を引きつける、スペースをつくる動きは町田の攻撃を活性化させていました。
今の岡山の2トップをみた時に最も足りないのは、デュークのような動きができる選手であると思います。ちなみにムークはトップに入っても中盤もみながらなので、ちょっと違うのかなと思います。
この点は夏のマーケットに委ねるしかないのかなと感じています。
プレスの強度が高く、かつ味方のスペースを生み出せるFW求むです。
3.最初の不運と根本的な問題
そもそもこの大宮戦は、(43)鈴木喜丈と(1)堀田大暉が試合前夜、当日のアクシデントにより欠場(※ファジゲートより)。木山監督のコメントからは大宮用に用意していた戦術を使えなかったとのコメントもありました。
また、大宮もシステムこそ4-4-2と変わりませんでしたが、若手を中心としたメンバー変更を行いました。当初から前半は失点を避けてくるという予想もありましたが、前半の途中までは自分たちのメンバーが代わったことでボールを運べなくなっているという印象も残りました。
これによって岡山は極端にボールを持たされることになってしまった。
苦手な試合展開になってしまった。
こうした不運もありました。
しかしながら、こうした点からも岡山の根本的な弱点を感じます。
岡山の戦術は、対戦相手に合わせた非常に対策的なものといえます。
また、その戦術は個の能力に委ねられる部分が大きいという点もこの大宮戦で改めて明らかになりました。
そのため、選手のデキやアクシデントが大きく試合結果に直結してしまいます。
これは昨シーズンも同様であったと思うのですが、昨シーズンと今シーズンの違いは故障者の数です。
故障者が少なかった点は昨シーズン好成績を残せた要因のひとつであると思います。
そして今シーズンはビルドアップに取り組んでいます。
これもデュークの移籍がきっかけで取り組み始めましたね。岡山のビルドアップをどのように勝利に直結させるのか?この点につきましては、もう2~3戦試合をみてから触れてみようと思っています。
おわりに
J2リーグは中盤戦(全42戦のうち中間の14戦)に突入しました。
ファジアーノ岡山は長崎、東京Ⅴ、群馬、大分といった現在上位陣、また調子を上げてきた徳島との今シーズン初対戦を残しており、中盤戦締めくくりの第28節(7月29日)には清水とのアウェイ戦が待ち構えます。
J1昇格戦線に生き残れるのかどうか、今シーズンのチームの立ち位置が決まる第2クールといえます。
しかし、主力のMF(22)佐野航大、FW(48)坂本一彩は、U-20ワールドカップアルゼンチンの日本代表に選出。最長で6~7戦不在となります。また、今シーズンも前線の切り札として結果を残していた(19)木村太哉が負傷離脱、おそらくこの中盤戦は戻ってこれないものと思われます。そして大宮戦では(6)輪笠祐士も負傷交代。
このようなJ1昇格を狙う上でピンチと言える状況が、サポーターの緊張感を高めているのだと思います。
昨シーズンの岡山は「勝癖」を身につけました。
そして今シーズンはJ2優勝を目標に掲げました。前年3位クラブですから、次の目標は優勝になります。当たり前です。
そのために、サポーターからは試合結果や試合内容にも高いレベルが求められているのだと思います。
これって素晴らしいことであると筆者はポジティブに捉えています。
今回は奇しくも50回目のサッカー記事になりましたが、少なくとも書き始めた頃よりは筆者自身のサッカー観が広がりました。
1試合ごとに「まだ見ぬ新しい領域」へ誘ってくれる今のファジアーノ岡山のおかげです。
この先のゲームの酔いも甘いも「未経験ゾーン」として楽しんでいきたいと思います。
そんな気持ちを維持しながらの中盤戦のレビューとなるでしょう。これからもよろしくお願いします。
※敬称略
【自己紹介】
麓一茂(ふもとかずしげ)
地元のサッカー好き社会保険労務士
JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ
ゆるやかなサポーターが、いつからか火傷しそうなぐらい熱量アップ。
ということで、サッカー経験者でもないのに昨シーズンから無謀にもレビューに挑戦。
持論を述べる以上、自信があること以外は述べたくないとの考えから本名でレビューする。
レビューやTwitterを始めてから、岡山サポには優秀なレビュアー、戦術家が多いことに今さらながら気づきおののくも、選手だけではなく、サポーターへの戦術浸透度はひょっとしたら日本屈指ではないかと妙な自信が芽生える。
応援、写真、フーズ、レビューとあらゆる角度からサッカーを楽しむ。
すべてが中途半端なのかもしれないと思いつつも、何でもほどよく出来る便利屋もひとつの個性と前向きに捉えている。
岡山出身ではないので、岡山との繋がりをファジアーノ岡山という「装置」を媒介して求めているフシがある。
一方で鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派でもある。
アウェイ乗り鉄は至福のひととき。多分、ずっとおこさまのまま。
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