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【向日葵は枯れていない!】27.ギラヴァンツ北九州 マッチレビュー ~第27節 vs FC今治 ~

個人的にヤマ場と感じていました3連戦の2戦で連敗。
残念であることは間違いないのですが、やはり今が「ヤマ場」なのだなという気も改めてします。

2023年1.47、2022年1.76、2021年1.46、2020年1.65、2019年1.53。
この数字をご覧になり、ピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。

直近5シーズンのJ3・6位チームの1試合平均獲得勝点です。
年ごとにバラつきはありますし、J2昇格プレーオフ自体が今シーズンからの導入ですので、単純比較は難しいかもしれませんが、やはりプレーオフ進出に向けては1.6以上の勝点は必要といえます。

今節を終えて5位のギラヴァンツ北九州の1試合平均獲得勝点は1.55。
今後のギラヴァンツの具体的な目標、目安を考えると、まずはこの1.6台への到達、キープということになるのかもしれません。ちなみに次節大宮戦で勝利できれば、再び1.60へと復帰します。
ちなみに2019年、北九州がJ3優勝を果たした年のこの数値は最終的に1.94に達していました。自動昇格には約2.00が必要ということになります。

今週の増本監督のコメントは、6位以内に入って以降のプレッシャーから逃げずに、寧ろそのプレッシャーを受け入れて得た結果こそが真の実力であることを示唆していました。

そういう意味では、チームは今治戦に向けて気持ちの準備は出来ていたのかもしれません。だからこそ、この敗戦はショックを受けるものになったのかもしれませんが、まだJ3は11戦が残っており、ここからがようやく終盤戦といえます。まだ今シーズン、チームには強くなる余地が残されていると思います。

振り返ります。

1.試合結果&メンバー

複数失点での敗戦は今シーズン2度目、4/27第11節長野戦(2-3)以来、そして3点差での敗戦は今シーズン初、連敗はこの第11節~12節で喫して以降2回目となりました。4~5月頃はまだ今シーズンのチームの草創期であったことを踏まえましても、北九州は新たな壁にぶつかった状況といえます。
一方、観客数は5,839人をマーク。普段が3~4千人と考えますと約1,500~2,000人がギラフェスからリピーターになってくれたのかもしれません。
彼らに勝利を届けられなかったことも痛いのですが、しかしサッカーは本来勝ったり負けたりするものです。正直なところ、常勝軍団を応援していない限りは錚々快勝にはお目にかかれないスポーツです。早めに上手くいかない試合を経験してもらうことも必要であったとプラスに考えたいところです。

J2第28節 北九州-今治 メンバー

メンバーです。

北九州は福島戦からCH(34)高吉正真、OMF(17)岡野凛平、LSH(21)牛之濱拓がスタメンから外れサブに回ります。
(34)高吉らは前節福島戦でかなり走らされてしまった影響もあったのかもしれません。代わりにCH(14)井澤春輝、OMF(20)矢田旭、LSH(7)平原隆暉が先発します。

このメンバー変更には戦術的意図も隠されていたと感じました。
今治の過去数戦は前半から前線から人数を掛けてハイプレス、相手に蹴らせて後方で回収、後方からの正確なフィードにより前線に人数をかけて攻め込むものです。
よって、北九州としては自陣に押し込まれることをある程度想定し、マイボールを簡単に蹴らずにドリブルによる持ち運びで前進したい意図があったものと考えられます。そのための(14)井澤、(20)矢田、(7)平原の起用であったと考えます。

そして、ベンチには待望のFW(16)大森真吾が控えます。
MF(15)小林里駆が久々にベンチに入った一方、DF(23)坂本翔がメンバー外となりました。

今治はいつもの形、3-1-4-2です。
中盤のアンカー(6)トーマス・モスキオンのパフォーマンスが安定している分、前線に人数を割ける点が特長です。(10)マルクス・ヴィニシウス、(17)ウェズレイ・タンキの外国籍2トップも強力です。
後方で保持時には(10)M.ヴィニシウスが2列目の右に落ち気味のポジションでボールを受けます。
また、非保持時には両WGが最終ラインまで下りて5-3-2(または5-4-1)の守備ブロックを形成します。

2.レビュー

(1)今治の圧に屈する

この試合に関してはデータや図表はあまり必要とは考えていなくて、一言で述べてしまいますと「今治のプレスの圧に屈した」ということであったと思います。
ロングボールからのセカンドを上手く回収出来ず、試合開始当初から押し込まれた北九州でしたが、3分、自陣でマイボールになるとCF(10)永井龍が、その後も(14)井澤がドリブルで前進するシーンがありました。(14)井澤は今治陣内中央でファールを受けFKを獲得しました。
おそらく、北九州のこの試合のねらいが出ていた場面であったといえます。

この後の今治が試合全体を通してファールが多く、かつ自陣への帰陣が早かったことを踏まえてもドリブルを交えての前進策は有効な攻撃になっていたと考えられます。

しかし、こうした前進がみられたのは残念ながらこの序盤のみでした。
想定していた筈の今治のハイプレス、そして中盤での寄せの速さが想定以上であったのか、北九州のボールホルダーは徐々に自分で剥がす、自分で持ち運ぶことをせずに安易(に見えた)なパスに頼ろうとします。

その結果、不用意な横パスを今治に奪われ、一気に今治に押し込まれるという悪循環に陥りました。
13分、今治LWG(9)近藤高虎の先制ゴールは、CKからのこぼれ球をダイレクトで撃ち切った積極性、正確性が見事で、おそらく味方がブラインドになったGK(27)田中悠也にとってもノーチャンスでしたが、やはりその前の押し込まれるきっかけとなった今治陣内での横パスのミスが痛かったといえます。

2失点目、(10)M.ヴィニシウスのゴールも北九州の両CBの間の僅かなスペースに落とす(9)近藤のクロスの精度、そして空中戦に強い(10)M.ヴィニシウスの打点の高さが見事でしたが、この場面も押し込まれるきっかけになったのは北九州のパスミスからでした。

では、なぜここまでパスミスが増えてしまったのか?
単に出し手と受け手の意思疎通が図れていなかったからと考えます。
パスの出し手に対する今治の寄せも速く、パスの精度自体が狂っていたといえるかもしれませんが、特に中盤以上のパスの受け手が後ろ向きで足元で欲しがるシーンが多くみられました。
ひょっとしたら受け手にはターンで寄せてくる相手を剥がして、ドリブルで前進するねらいがあったのかもしれませんが、トランジションが早い今治は北九州が中盤までボールを運んだ時には既に帰陣しているので、前向きにこのボールを狙っていましたし、実際に奪っていました。
そこで北九州のパスの出し手は、相手に奪われることを恐れて、受け手の前方のスペースにパスを出したがっていたのではないかと推察します。
よって、パスの出し手と受け手の意図が合わずにパスミスが連発したのではないかと想像します。

いずれにしましても、今治の圧に屈した前半といえそうです。

しかし、今治のトランジションの速さにも隙が出来る時間帯はあり、前半残り10分ぐらいからは、今治のRCB(4)市原亮太の脇にスペースが出来始めます。RWG(14)弓場堅真の戻りの影響もありましたが、(4)市原が保持時に割と中に絞り気味であったことも影響していたと思います。

北九州としてはここにポイントを作れかけていたことが後半への希望となりました。

(2)藤原の若さ

後半の北九州は、前半で上手くいかなかった中盤での構成を捨てて、一気に今治最終ラインの裏へとロングボールを送り込みます。
この攻撃が案外効果的で、一発で裏を取れなくても最終ラインを下げさせ、中盤との間にスペースをつくる効果が狙えたのですが、どうしたことかこの戦術も後半の最初だけで終わってしまい徹底できませんでした。
ロングボールを落とした先でセカンドを拾えなかった点もかなり痛かったのですが、再び今治ペースとなります。

ここで痛かったのがこの試合の敗戦を決定づける3失点目のきっかけとなったCH(6)藤原健介の自陣でのパスミスです。このパスミスの直前に(6)藤原は累積4枚目のイエローカードを貰っており、次節大宮戦の出場停止が確定したばかりでした。

この日の(6)藤原が出すパス、クロスの先には北九州の選手がいない、または感じていないことが多く、映像を通しても(6)藤原のフラストレーションの溜めぶりが伝わってきました。
以前、(6)藤原について、若い頃の中田英寿に似ているとXで投稿したことがあったのですが、(6)藤原のパスは味方への「要求」が強く込められており、それがチーム全体のレベルを上げていく効果に繋がっていくのですが、この日はそれが悪い方向、明らかに味方がいないであろうスペースにムキになってパスを出しているような、いわゆる独善的なプレーに繋がっていました。これが(6)藤原の若さであり、課題なのだなと思いました。

ということで(6)藤原も64分には下げざるを得ず、北九州としては勝点獲得の可能性はかなり下がってしまったと感じざるを得ませんでした。

選手交代という点では64分に(16)大森が登場しましたが、少々投入狙いが定まっていなかった、伝わっていなかった印象は残りました。最初は(10)永井との2トップであったと思いますが、あまり2トップの関係性はみられませんでした。
そして1トップになってからは、裏をねらうのか、それともポストプレーをさせるのか、プレーのねらいも曖昧であったと思います。万能型のストライカーだけに、いわゆる投入することだけではピッチへのメッセージにならない選手であると思いました。この点は今後の修正が必要です。

この(16)大森と同時に(34)高吉、(21)牛之濱、そして79分には(17)岡野が投入されますが、やはりこの3人が入ると北九州は形になるなと改めて感じました。
先発した選手とのプレースタイルの違いはありますが、3人に共通しているのはオフザボールでしっかり動けること、汗を掻けることです。
皮肉にもこの3人は今後の戦いにおいて外せないと再認識させられることになりました。

一方RSB(22)山脇樺織のキレの無さは気になりました。仕方ない理由であった可能性もありますが、交代要員として(23)坂本の不在も痛かったと思います。

3.まとめ

以上、今回は試合中にXで投稿した内容のおさらいになってしまいましたが、今治戦をまとめました。
実力差はしょうがないと思います。今治も近年の丁寧なビルドアップ構築の積み重ねから、今シーズンは強度とスピードを付け加えるのにシーズン中もおそらく苦労しながら、今の完成形に近づいています。
一朝一夕にはチームは強くなる訳ではないので、北九州としてはここから一段階上がったチーム強化に取り組んでいかなければなりません。
そういう意味では、(22)山脇をはじめ選手のコンディションが戻っていないように見える点が個人的には不安です。
焦らず、まずはコンディション回復に努めていただき、その上で質の良い練習に取り組んでいただきたいものです。

今治との実力差を感じさせる試合でしたが、上述してきた点以外に大きな差として感じましたのが、セットプレーからの二次攻撃の質の差です。
今治は(9)近藤の先制点は出来すぎでしたが、北九州が一度弾き返したボールを正確にボックス内へ再投入していました。
北九州は逆にこれが出来ていませんでした。
ちょっとしたことかもしれませんが、こうした点を修正するだけでも内容はともかくスコアはかなり変わってくるのかな?という印象も持ちました。

次節はいよいよ首位大宮との対戦になりますが、(6)藤原不在を逆に全員でカバーする、助け合う精神で戦えるかがポイントになりそうです。
まずは相手の圧に屈しない戦いが求められます。

今回もお読みいただきありがとうございました!

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
岡山のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。

2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。

北九州大学(現:北九州市立大学)法学部出身
北九州は第二の故郷ということもあり、今シーズンからギラヴァンツ北九州もミニレビュー作成という形で追いかける。

鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。

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