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多様な中華世界

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要塞都市マレーシア・マラッカと華人

要塞都市マレーシア・マラッカと華人

マラッカの様相先日マラッカを訪問した。シンガポールからはバスで約3時間ほど。
陸路で国境を超えるということは、日本人にとっては少し馴染みのないもので、かく簡単に異国へ旅することが出来るのは不思議な感覚である。

マラッカは、オランダ・スペイン・イギリス・日本、と複数の植民地された歴史を持ち、都市の中心部は要塞の遺跡が残っている。
数百年前までは、マラッカは、名の通りマラッカ海峡の拠点であり、地政学

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中国本土化する香港の姿

中国本土化する香港の姿

先週香港へ行ってきた。

今回の香港訪問を通じて、ニュートラルな立場として、ここは中華人民共和国の一部なのだと強く感じた。今回はそれを記したい。

香港の独自性とは

香港は、中華人民共和国の一国二制度という制度のもとで、中国の特別行政区として、本土とは異なる法律・行政管理が実現されている。
これは香港がイギリスから復帰した1997年に、イギリスと中国の統治システムに乖離が大きすぎることから、スム

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シンガポール華人の土着化とアイデンティティ

シンガポール華人の土着化とアイデンティティ

東南アジアの華僑古来、中国南方沿岸部の多くの人々は、頻発する中国本土の飢饉や疫病などの災害から逃れるようにして、東南アジアに移住してきていた。

彼らは永遠に東南アジアに留まっていたわけではなく、中国に帰るものも多くいたようであるし、どちらかといえば一時しのぎのような感覚であったようである。
彼らは基本的に貧困に悩まされていたが、東南アジアで一獲千金の機会を得て、一定の蓄えとともに中国本土へ帰って

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シンガポール華人のアイデンティティ

シンガポール華人のアイデンティティ

シンガポール華人は中国人ではない

シンガポールに住む華人は、当たり前ながら自らを中国人とは認識していない。よく日本人駐在員は、彼らを「中国系」と称するが、中華人民共和国とは関係のない人達であり、その表現は正確でない。
彼らのアイデンティティはあくまでシンガポール人である。

自分が中華圏の一員という帰属感は少なからずあるのかもしれないが、その認識は「中国を核」とした中華世界の一員というよりはむし

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シンガポール華人の職場コミュニケーション

シンガポール華人の職場コミュニケーション

私は日系企業の駐在員としてシンガポールで働いている。会社体制上は現地子会社であり、日本人とシンガポール人で社員比率はちょうど一対一ほど。シンガポールは近年増加する外国人数に制約をかけるべく、ビザの発給要件に雇用者(会社)の現地国民率を加えていることもあり、他の日系企業も、この比率であることが多い気がする。

ビジネスの場は華人だけシンガポールのビジネスの場は華人しかいない。シンガポールはもともと約

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