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【経営学29】コンコルドの誤謬(サンクコスト効果、行動経済学)

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はじめに

皆さんは何らかの目標のために数年間の年月をかけて一生懸命努力した経験ってありますか?
部活、勉強、資格、受験、恋愛なんでも良いです。
その上で、目標を達成できなかったことはありますか。
辛いことを思い出させてしまったかもしれませんが、今日はそのような状況下でのお話です🤔

数年間分の時間と労力を費やし、様々なコストをかけ、やっとの思いでここまで辿り着いたのに、諦めなければならないとき。
もどかしい感情をどう処理すればいいのか。
この点についてお話していきましょう!

キーワードは「サンクコスト」「コンコルドの誤謬」です。


1.コンコルドの誤謬とは

難しい漢字が含まれていますね!
「誤謬」は「ごびゅう」と読みます。
意味は、誤りや間違いのことです。

「コンコルド」とは、この飛行機のことです。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:G-boab_(32758231448).jpg


このかっちょいい飛行機はですね、イギリスとフランスが共同で開発した超音速輸送機です!
別名SST(Supersonic Transport)と呼ばれています。
当初は、イギリスとフランス両国でそれぞれ別個にSSTの開発が進められていたのですが、開発費が莫大にかかるということがわかり、1962年からは共同開発することにしたのです。
しかし、結局コストが高すぎて採算割れすることが確実になってしまいました。
それにもかかわらず、開発を続行してしまい、商業的には大赤字になりました😱

この話が例え話で使われるようになり、今では、投資の継続が損失の拡大につながると分かっていても、それまでに費やしたお金・時間・労力等を惜しんで投資がやめられない心理現象のこと「コンコルドの誤謬」「コンコルド効果」などと言われるようになったのです。

別名「サンクコスト効果」ともいいます。

サンクコストとは、事業や行為に投下した資金・労力・時間等のコストのうち、事業・行為の撤退、縮小、中止等をしても、もはや戻って来ないコストのことをいいます。
今すぐに全部辞めてもどっちみち損をする状態ですね😱

サンクコストが発生するとき、人間は過去のコストを何とかして取り戻したい気持ちが強くなってしまって、ついつい追加投資をしてしまいがちなのです。
その結果、更に損失を拡大させてしまう

心当たりがありすぎる行動経済学用語ですが、実は心理学用語でもあるので、心理学連載で書くか迷いました🤔
しかし今回は経済的側面について考えていきたいので、経営学分野として書かせていただきます!



2.コンコルドの誤謬の発生例

コンコルドの誤謬は私生活及びビジネスで日々どこでも発生している現象です。
とある実験では、約50%程度の人がコンコルドの誤謬に陥ってしまい、サンクコストを気にして意思決定をしてしまうという結果が出たそうです。
感覚値ではもっと多い気もしますが、50%程度の人には発生し得る現象と考えていいでしょう😁

その例をいくつか見ていきましょう。


(1)各種受験


最も一般的な事例は受験だろうと思います。
大学受験、難関国家資格の受験等では、よほどの天才でもない限り、長い時間と労力を費やさないといけません。

そして、それだけのコストを支払ったのであれば、当然リターン(合格)も欲しくなります。
その結果、途中で諦めるとか、落ちたから別の学校・資格で妥協するということがしづらくなります😱

代表的なものでいうと、東京大学と司法試験でしょう…。
京大や東工大、一橋や早慶なら十分に合格し得る人でも、絶対に東京大学に行きたいという理由で受験を何年も続けてしまうことがあります。
司法試験も、他の企業で働ければ十分に優秀な人なのに、20年近くアルバイト生活をしつつ受け続けている人がザラにいます。
私の知る限りの最長記録は40年というベテランがいます。
勉三さん(キテレツ大百科のキャラ)が裸足で逃げだすレベルです。

仮にその後に合格できたとしてもそれまでの時間・コストの回収はかなり難しいと思いますので、コンコルドの誤謬に陥っているといって支障はないでしょう🤔

ちなみに、あまり知られておりませんが、キテレツ大百科のキテレツくんとドラえもんの野比のび太は従兄弟関係らしいです。

受験地獄


(2)恋愛


続いての代表例は恋愛だろうと思います。
恋は盲目と呼ばれているように、恋愛感情は一種の病気といえます😱
過度な恋愛感情は、正常な判断能力を失わせるのです。

その結果、本来であれば絶対に使わないであろう無駄遣いをし、相手に貢ぎ、時間と労力をかけてしまうことがあります。
そのコストが高ければ高いほど、相手に執着し、諦めることができなくなっていく。

場合によってはストーカー規制法違反を犯してしまうことすらあります。
私も法務の端くれなので、過去に何度か従業員から、ストーカー被害の相談を受け、弁護士らと共に解決に勤しんだことがありますが、本当に大変なのです…。

これも一種のコンコルドの誤謬といえるでしょう。

ストーカーダメ!絶対!


(3)新規事業


続いて、ビジネスの世界でよくある例としては、新規事業が挙げられます。

新規事業は、CEOが「イケる!」と思って始めることが多いと思いますが、その思い込みが激しいほど、初期投資額は大きくなります。
そして、1年、2年と月日が経過していくにつれ、累積赤字は大きくなり、今後爆発的な伸びを見せない限り、黒転する可能性はゼロに等しいという状況になります。

新規事業が成功する確率なんて10%もないので、こんなことはビジネスでは日常茶飯事です。
そのため、「損切」はCEOに求められる重要な能力の一つです。
どこで諦めて撤退するかが重要です。

しかし、これまでにかけたお金が膨大になっていけば行くほど、撤退の意思決定はしづらくなっていきます。
負けを認めるということなので、本当に辛い決断です😱
その苦しみを回避するためには、とりあえず続けている方が合理的です。
挑戦を続けている限り「挑戦者」であり続けられる。
撤退の意思決定をした時点で「敗北者」確定なので、それを回避できます。

その結果、コンコルドの誤謬に陥ります。
会社にとって致命傷となるレベルの損失を出すまで新規事業が続けられることも多いです。

お金って本当に溶けるんですよね!


(4)M&A


最後に、ビジネスの世界で時々発生する事例としてM&Aの事例を挙げます。

M&Aの一連の実務を「ディール(取引)」と表現するのですが、このディールが本当に大変なのです😱
買手or売手を一生懸命探索し、やっとの思いで見つけた後に交渉に入り、膨大な資料をかき集め、読みこなし、分析し、更に交渉して少しずつ少しずつディールが進んでいきます。

双方が膨大な時間と労力を費やすので、いつの間にか「このディールを失敗するわけにはいかない」という気持ちになっていきます。
ここが失敗の原因で、M&Aの本来の目的を見失い、M&Aを成立させること自体が目的化していきます。

その結果、明らかに失敗しそうなM&Aであってもディールを進めようとし始めます。

まさしくコンコルドの誤謬です😱
経験の浅いM&A担当によく発生する事象なので注意が必要です。
新規事業と同様に、M&Aの失敗は巨額の損失を出しやすい事例です。

M&Aでは深夜まで作業することもあります


3.コンコルドの誤謬の発生条件

さて、上記の事例を見ていただくとお分かりいただけるように、コンコルドの誤謬は日々私達の身近なところで発生しています😁

その発生条件はどのようなものなのでしょうか。
明確な答えはまだないと思いますが、少しだけ検討してみましょう。

まず、コンコルドの誤謬を分解すると、以下の3要素が隠れていると思われます。

1.大きなコストをかけてしまった
2.損失がほぼ確実になった
3.それでも投資を続けてしまう

この3つのうち、実際にコンコルドの誤謬に陥りかけている人にとって明確なのは、1だけだと思うのです🤔

2の「損失がほぼ確実になった」という要素は、後々客観的に考えればという後付要素です。
今現在投資を実行している本人からすると、不確実性が残されているのです。

上記のコンコルドの誤謬の発生例でいうと、

・あと1年頑張れば東京大学に受かるかもしれない
・来年は司法試験に合格できるかもしれない
・愛し続ければ振り向いてくれるかもしれない
・来年になるとブームが来て新規事業が拡大するかもしれない
・このM&Aを成功させたらシナジーが生まれるかもしれない

という可能性が残されています。
よほどのことがない限り、これらの可能性が完全に潰れることは無いのです。

したがって、コンコルドの誤謬が発生する条件は、以下の状況が存在するときだと思われます。

1.大きなコストをかけた
2.損失が出る可能性が高いが、まだ成功する可能性もある

この2つの条件が揃ってしまうと、コンコルドの誤謬に陥る可能性が極めて高くなると思うのです🤔
実際、私はこの条件が揃っているときに撤退の意思決定をスムーズにできる自信がありません。
とても悩むと思います。
その上で、挑戦を選ぶことの方が多いでしょう。

そもそも、このまま続けても利益は一切なく、損失だけが出るという状況なんて、殆ど無いのです🙄
可能性はいつでも残されています。
あくまでも確率論、期待値として「損失が出る可能性が高いよ」という程度の話です。

そのときに、「今止めたら確実に発生する損失」をあえて選べる人がどれほどいますでしょうか😱
なかなかいないでしょう。

コンコルドの誤謬のメカニズムを分析してみると、多くの人がその心理状態になることがよく理解できますね!


4.コンコルドの誤謬の防止法

コンコルドの誤謬に陥ってしまうことが致し方ないとしても、できることならば避けたいですよね🤔

そこで、防止法についても考えてみましょう!

まずおさらいとして、コンコルドの誤謬の発生条件は、以下の2つの状況が揃ったときだという仮説を立てました。

1.大きなコストをかけた
2.損失が出る可能性が高いが、まだ成功する可能性もある

この2条件を成立させなければ、コンコルドの誤謬に陥る可能性は低くなると考えられます😏
一つずつお話します。


(1)大きなコストに対する対処


まず、大きなコストをかけたがゆえに「そのコストを損失として認識したくない!」という感情が発生します。
損したくない!という感情ですね😁
行動経済学の分野では有名は話ですが、人間は損をすることを極端に嫌う動物なのです😱
なので、かけたコストを損失として認識するという行為にとても強いストレスを感じやすいです。

ということは、大きなコストをかける際に以下のような予防策を練っておけばコンコルドの誤謬をある程度抑えることができると思います。

1.そもそも大きなコストをかけない
2.小分けリターンを得られるようにしておく

そもそも大きなコストをかけず、小さく始めて大きく育てる(スモールスタートグロースビック)方式で投資を行えば、損失を最小限に抑えることができます。
新規事業では特にこの発想が重要で、確実に勝てると信じ込めない限りはスモールスタートを心がけるべきです😁

そして、ある程度投資額が累積してきたとしても、要所要所で小さくリターンを獲得していれば、損失を最小限にすることができますので、常にリターンを得られないか意識しておくべきでしょう。
これは、リスクヘッジの考え方にも相通ずるものがあります。

例えば、東京大学を目指す場合、リスクヘッジのために早慶を滑り止めで受けるべきですし、東大が難しそうであれば、早い段階で他の国立大学の候補も検討すべきです。
別の国立大学でも東大卒と同等以上の生活は十分可能なのでそういう選択肢も残しておくと良いでしょう。
むしろ、東大の中途半端な学部に行くより、地方国立の医学部の方がよほど良い生活ができる気がします😱

資格でも同じことです。
いきなり司法試験一本で頑張るよりも、その過程で司法書士や行政書士等を取得しておけば、リスクヘッジになります。
企業の法務部員としての職を確保しつつ司法試験の受験を目指すことだってできます。
過度な執着は身を滅ぼすので、ある程度リスクヘッジをかけて、小さなリターンを積極的に獲得しておくべきです。

新規事業やM&Aでも同様です。
新規事業を興してすぐに大きなリターンを獲得するのは難しいことですが、最初の1年目で売上をある程度立てることは可能です。
小さくビジネスを始めて、小さな売上を立てつつ改善を連続的に起こしていく方が効率的です。
M&Aも全株取得が原則ではありますが、資本提携に切り替えても十分なリターンを得られるという事例も多いはずです。

大きなコストをかけなくてもいろいろな方法でスモールスタートできますし、小分けのリターンを獲得することもできます😁
上手に戦略を練れば、大きなコストをかけてしまうという条件成立は抑止できそうです。

コストカッター!


(2)損失可能性と成功可能性に対する対処


続いて、損失可能性と成功可能性の条件成立について考えてみます。
すでに大きなコストをかけてしまっている時点で、損失可能性が高くなりつつも、まだ成功可能性が存在するケース…ほとんどそうですよね😱
人生で起こることには、大抵可能性は残されているものです。

このような条件下で撤退の意思決定を行うのは非常に難易度が高いです。
自分の感情をどうコントロールするかが問われます。

これに対する対処法は、撤退基準を明確にしておくことです。
できれば、成果基準と時間基準を設けておくと良いと思います。

いつまでに、どのレベルに到達していなければ、撤退するというルールです。
このルールを守れないならそれはもうどっちみち成功はしないと思います。
自分で決めたルールを守ることは最低限の条件です😁
だからこそ、予め撤退基準を明確にしておくべきです。
これが誓約と制約(HUNTER×HUNTER)の役割を果たし、自分に対する縛り(呪術廻戦)にもなります。

個人的にわかりやすい事例が司法試験なので、司法試験でお話しますと、法学の勉強を本気で始めてから3年経過した時点で短答式試験(マークシート)に合格できないようなら撤退すべきです。
普通は1年目か2年目で突破できる試験ですから、3年もかけてそのレベルにすら到達できないなら撤退すべきと言っていいでしょう。
また、◯歳までに最終合格しなかったら撤退という時限も設けておくべきです。

一方、新規事業の場合は計算が複雑になります😱
新規事業を担当するメンバーの質や給与額で全然基準が変わってくるのです。
私の中では、最低でも3年以内に固定費を賄えるレベルに到達しておくべきだと思っています。
固定費には、新規事業を担当する人たちの人件費、家賃、間接部門の従業員の人件費が含まれます。
一方で、宣伝広告費は含めません。
3年間事業をやって、固定費すら賄えないようならそれは需要がないか、能力不足です。
撤退の一つの目安だと思います。

ただ、事業の難しいところは、たったひとりのスタープレーヤーがチームに加わるだけで劇的な変化が起きることがよくある点です🙄
今までどうやっても売上が上がらなかったのに、スーパー営業マンが一人入っただけでサクッと億単位の売上がたった!なんてことはよくあります。

そのため、撤退基準が曖昧になりやすいです。
私の感覚では、新規事業担当者を揃えるのも経営者の能力なので、3年もやってスタープレーヤーを一人も採用できなかったなら、それはもうその経営者には荷が重かったということで撤退すべきだと思います。

このように、何らかの成果基準と時間的基準を設けていれば、ほぼ自動的に撤退すべきかどうかが決まるので、あまり悩まなくて済みます。
時限まで決めていればそれまでに何とかしないといけないというインセンティブも期待できるので効果的でしょう😁

スーパー営業マン



おわりに

今日はコンコルドの誤謬というまだ一般用語にはなっていないであろうキーワードを解説させていただきました😁
ただのサンクコスト効果の話なのですが、よくよく考えると結構難しい論点を含んでいて、人生や事業においても重要な用語の一つだと思います。

これを機に、自社の事業、人生設計等の撤退基準を明確にしてみてはいかがでしょうか。
様々な視点から撤退基準を考えておけば、困難な選択を迫られたときに焦らずに済みます。

では、また次回お会いしましょう👍


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【著者情報】

著者:瀧田 桜司(たきた はるかず)
役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長
専門:法学、経営学、心理学
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