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【経営学38】クラウンジュエルとホワイトナイト(M&A、経営戦略、敵対的買収)

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はじめに

経営学はとても広い学問で、経済学、心理学、社会学など多岐にわたる学問が学際的に混ざり合っている学問の一つです。

そして、その中で横文字が特に多い分野が2つあります。
それが、M&Aファイナンスです。

この2つの科目は主にアメリカで発展した科目であるため、用語が日本語訳されずにそのまま英語で書かれていたりします。
それゆえにカッコイイ?横文字のオンパレード状態です🤣

大学院等の講義も一部英語で行われるくらい英語圏の科目ですが、今日はこの中でもM&A分野に属する「クラウンジュエル」「ホワイトナイト」について解説していきましょう!

細かい分野でいうと、M&Aの中の敵対的買収というテーマの中の敵対的買収防衛策の一種で、経営戦略にも関わってくる重要な用語です。

なぜこの用語を選んだかというと、カッコイイからです🙄

この明日使える経営学シリーズでは、重要な経営学理論を扱うことが多いですが、M&Aやファイナンス分野では、専門用語のカッコ良さも重視してチョイスしております。
カッコイイ言葉の方が明日使いたくなりますからね。

今回の記事で知識を手に入れて、是非明日から使ってみてください。


ではさっそく解説に入りましょう!



1.クラウンジュエルとは

先にクラウンジュエルの解説から始めます。

クラウンジュエルとは、敵対的買収に対する防衛措置の一つで、敵対的買収の対象となっている会社が、自社の資産・事業等で最も価値の高いもの(買収の目的となっているもの)をあえて第三者に譲渡することによって、自社の魅力を低下させ、敵対的買収者の買収意欲を削ぐことをいいます。

長い定義ですね😱

要するに、敵対的買収者がその対象会社を買おうとしている「目的」そのものを第三者に売り払ってしまうことで敵対的買収を諦めさせようという行為です。


なぜクラウンジュエルというのかというと、買収の対象会社をクラウン(王冠)に例えて、そのクラウンについたジュエル(宝石)を取り払って、王冠の価値を下げるという例え話からです。

こんなの知ってないと全くわからないですよね😒
M&Aの用語は本当にわかりにくいので知ってないとナンノコッチャとなります。

そして、「クラウンジュエル」という用語だけだったら、対象会社の中で最も価値の高い資産・事業等だけを意味するはずなのですが、実務上はそれらの資産・事業等を第三者に売却する行為まで意味することがあります。

「この事例はクラウンジュエルだねぇ」

みたいな使い方ですね🙄
クラウンジュエルという名詞を動詞的に使っているわけです。

「この事業がこの会社のクラウンジュエルさ」

という場合は名詞的使い方です。
ややこしいですが、相手(単語の使用者)がクラウンジュエルを名詞として認識しているのか、動詞として認識しているのかで意味が少し違ってきます。


さて、クラウンジュエルの事例はどういうものがあるでしょうか。
ここについても雑学程度に見ておきましょう!
例えば、以下のようなものがクラウンジュエル(動詞的意味)に該当します。



(1)クラウンジュエルの例


敵対的買収の目的は様々ですが、日本企業を買収しようとする場合、その対象会社が持っている不動産に目をつけて敵対的買収がなされることがあります。

これはどういうことかというと、対象会社が持っている不動産の帳簿価額と時価との間に大きな開きがあるケースがあるからです。

その対象会社が、帳簿を時価評価で評価し直したりしていない場合、BS上は取得時の価額で不動産が資産計上されています。
しかし、実際に今その不動産を売ったら、BSに記載されている価額の■倍以上になる!
なんてことがたまにあります。

そういう価格差に目をつけて敵対的買収をしかけるわけです。
そうすると、敵対的買収が成功したら不動産を売って利益を配当でもらうし、敵対的買収が失敗しても、敵対的買収の報道などによって外部の人間がその不動産の時価を知って株価がつり上がっていくので、インサイダー取引にならないくらいの良い頃合い・方法で売り抜ければどっちにしても儲かるという構図が描けます🙄

某○✕ファンドとかが得意としている投資手法だと思います。

このような買収に対して、現経営陣は選択を迫られます。
このまま敵対的買収を甘んじて受けて、経営権を奪われるか、それとも対抗するか

対抗すると決断した場合の一つの手段がクラウンジュエルです。
対象会社が保有する時価の高い不動産を売ってしまい、魅力を低減させてしまえばいいのです。

ただ、その不動産が資産価値の大きな不動産であれば、取締役会決議株主総会の特別決議が必要になるので、クラウンジュエルはそう簡単にできるものではありません

そして、仮に当該不動産の売却が「重要な財産の処分」(会社法362条4項1号)に該当するとして、取締役会決議のみで売却できたとしても、株式会社の取締役には善管注意義務(会社法330条・民法644条)が課されているので、敵対的買収者から善管注意義務違反で訴えられる可能性もあります。


ちょっと難しいお話をしてしまいましたが、平たく言いますと、クラウンジュエルは言うは易く行うは難しというジャンルの防衛策です😒

なお、他にも敵対的買収の目的となっている「特許」を他社に売却してしまうとか、最も魅力のある事業をあえて新設分割等で分社化して、他社に売却または他社と共同経営化してしまうなどの方法があります。

何れにせよ取締役会や株主総会決議が必要で、敵対的買収者がすでに株主である場合は株主代表訴訟や差止め請求を起こされる可能性が残ります。

裁判になると面倒



(2)クラウンジュエルの注意点


前述のとおり、クラウンジュエルはなかなか面倒な手続きが発生する防衛策で、かつ、根本的な解決にもならないことが多いです。

また、訴訟や差止めのリスクがあるので、効果が未知数な上に損害賠償リスクを取締役個人が背負わされる形になります。

さらに、そもそもその重要な資産が経営上も重要な資産である場合、第三者に売却するなんてことはできませんし、それをやってしまったら事業が止まるおそれがあります。

上記のような不都合が多いため、日本ではほぼ事例が存在しません🤔

私の知る限りでは、あの有名なライブドアvsフジテレビ事件(ライブドアがフジテレビを買収するために、フジテレビの株式を大量に保有していたニッポン放送の株式を大量に取得し、敵対的買収をしかけた事件)で、ニッポン放送が、敵対的買収防衛策として、自社が保有するポニーキャニオン社の株式やフジテレビの株式を第三者に売却しようとした事例くらいで、それも結局売却せずに終わったのでクラウンジュエルの事例にはなりませんでした。

したがって、今後も日本でクラウンジュエルが見られることは無いかもしれません。

そもそも敵対的買収に対して、その目的となっている資産等を第三者に売却したところで、敵対的買収者が対象会社の経営権の取得を諦めてくれるとは限りません。

それに、資産を売却する値段は時価じゃないと善管注意義務違反になりやすくなりますから、結局は時価で売却せざるを得なくなるでしょう。
そうしたら、対象会社に現金等の流動資産が大量に入ってくるので、敵対的買収者としては有り難い限りです。

大きな資産を売却等することでニュースになって、株価が吊り上がれば頃合いを見計らって売るか買い取ってもらうかするだけですし、現金を配当で出させるように動いてもいいわけですから、敵対的買収に尚更乗り気になるかもしれません。

結局のところ、クラウンジュエルでは敵対的買収防衛策となり得ない可能性が高いのです。

ただ、こういうカッコイイ用語を知っているということが大事だと思うので、解説だけはさせていただきました(笑)
是非、明日使ってください🤣

クラウンジュエルって知ってる?



2.ホワイトナイトとは

続いて、ホワイトナイトに行きましょう。
もうネーミングからしてカッコイイこの用語!
M&Aの世界ではよく使う用語なので是非覚えておきましょう。

ホワイトナイトとは、敵対的買収に対する防衛策の一つで、敵対的買収の対象会社を友好的な第三者に買い取ってもらうか合併してもらうことで敵対的買収から逃れることをいいます。

この「友好的な第三者」こそがホワイトナイト(白馬の騎士)です😍
急なメルヘン!

ホワイトナイトという用語だけでも動詞的な意味として通じると思いますが、通常は

「この敵対的買収では、ホワイトナイトを見つけてくるしかないね」

などのように、友好的な第三者を指して使われる名詞的な用語です。
明日すぐ使えますね😏

せっかくですから、少し実務上のお話もしましょう!


(1)ホワイトナイトの要件


ホワイトナイトに助けてもらおうと思ったとしても、そう簡単にいくものではありません。

ホワイトナイト側にとっては突発的な買収となるので、すぐにお金が用意できない場合もあるのです。

そのため、単に友好的というだけでは足りず、買収できるだけの資金を持っていないといけないのです😱
実際に敵対的買収に対する対抗馬として成立するためには、以下のような要件が必要でしょう。

  • 対象会社が子会社化されても事業に支障がないこと

  • ホワイトナイトの事業が対象会社と同等又はそれ以上の規模であること

  • ホワイトナイトが現金を豊富に持っていること
    (又は短期での資金調達が可能であること)

最低でもこの3要件は満たさないとホワイトナイトになり得ないのではないかと思います🤔
3要件の中で最も難易度の高い要件は「お金」だろうと思います。

対象会社の規模にもよりますが、敵対的買収をしかけられるような企業の多くは上場企業です。
市場で株式が売買されているから敵対的買収をかけやすいのです。
この場合、TOB(公開買付け)という手法で敵対的買収がしかけられます。

上場企業の多くは時価総額がそこそこの金額ですから、実際にTOBをかけようと思ったら何十億、何百億、時には何千億の資金が必要です🙄
それを用意できるようなキャッシュリッチ企業がどれだけあるか・・・
怪しいところです。

どうも~!ホワイトナイトですぅ~!


(2)ホワイトナイトに買い取ってもらう方法


いざホワイトナイトを見つけられた場合、どうやって買収してもらうかという点についても知っておくとよりカッコイイ話ができると思いますので、簡単に解説させていただきます。

方法は主に3つです。

・カウンターTOB
・第三者割当増資
・新株予約権の付与

以下、説明します。

対象会社が上場企業である場合、敵対的買収はTOB(公開買付け)によって行われるので、ホワイトナイトもTOBで迎え撃つことが多いです。
それがカウンターTOBです。
カッコイイネーミングですね🤔

ただ、これはもう競り売り(オークション)と同じですから、敵対的買収者よりも高い価格でTOBをかけないといけません。
そして、カウンターTOBに対して更に高い価格で敵対的買収者が応戦してくる可能性も十分にありますので、コストがどれほどになるのか予想できません😱

マグロの競り売りと同じ


続いて、第三者割当増資という方法もあります。
対象会社の新しい株式を発行して、それをホワイトナイトに引き受けてもうらのです😁
これは、既存の株式を使わないところがポイントです。

例えば、対象会社の株式が100株あるとします。
その100株が市場で販売されています。
そして、この100株のうち、敵対的買収者が15株を取得して、今15%の経営権を取得してしまいました。
今後もこの持ち株比率を高めようという動きがあったとしましょう!

ここで、対象会社が新しい株式を900株発行し、ホワイトナイトに引き受けてもらうとどうなるでしょう。
そうすると、敵対的買収者がいくら頑張ったところで、市場で売られている株式は100株しかなく、これからいくら買っても最大値は100株までですから、所詮10%の経営権です😏

こうなってくると敵対的買収者としても旨味がないので敵対的買収を諦めようという気持ちになってきます。
上記はとても極端な例なので実際に発生することはないですが、第三者割当増資を行う理由については伝わったかと思います。

「敵対的買収をこれ以上やっても経営権は取れないよ!」

という状態にするための第三者割当増資です😁

昔は株券っていう券があったんですよ


最後に、新株予約権の付与という方法も説明しておきます。
これは、新株の発行とよく似ていて、目的も同じです。
敵対的買収者がこれ以上対象会社の株式を買い進めても経営権を取れないようにしてしまう方法です。

第三者割当増資との違いは、直接的に株式を付与するのではなく、新株を買う権利(新株予約権)を発行するだけであるという点です。

株式を直接発行して渡してしまうと、他の既存株主の株式の価値も希釈化してしまって、元々の株主の皆さんの経営権(持ち株比率)も低下させてしまいます

そのため、一旦新株予約権にして、敵対的買収者の出方を見つつ、必要に応じて新株予約権を行使して、ホワイトナイトに株式を取得してもらうという段階的な手段です。

一旦様子見ようぜの手段ですね😁
緊急を要する場合は第三者割当増資の方が早いです。

相手の出方を監視しています



(3)ホワイトナイトの注意点


若干難しい話もしましたが、要するにホワイトナイトは、対象会社を第三者に買い取って(合併含む)もらう手段です。

そのため、誰かに買われるという事実は変わらないのです。

「敵対的買収者に買われるよりはマシ」
という一種の妥協案です😱

敵対的買収をしかけられた時点で経営者としては若干終わりなんですよね…

そもそも、敵対的買収というのは、対象会社の経営を「自分がやった方が良い」と判断しているからなされるものです。

今の経営者より、自分の方が上手に経営できる、企業価値を高められる、と思っていない限り、わざわざ膨大な手間と莫大な費用をかけてまで敵対的買収をしようとはしません。

既存経営者からしてみたら、経営者失格通知を受け取っているようなものです😰

しかも、上場企業に対して敵対的買収が行われた場合、創業経営者が過半数以上の株式を保有している場合でもない限り、何もしなければ経営権を奪われてしまいます

為す術もなく経営から降ろされるのです。

経営者にとってこれ以上の屈辱はないでしょう。

だからこそ、ホワイトナイトなんて探さなくてもいいように、日頃からスキのない経営をしておかないといけません🤔


ここからは余談ですが、今、IPOブームで多くのベンチャー企業がIPOを目指しています。
それ自体は素晴らしいことだと思いますし、VC(ベンチャーキャピタル)から出資を受けているベンチャーがほとんどでしょうから、形だけでもIPOを目指さないといけないので致し方ない部分もあります。

しかし、上場をするということは、常に敵対的買収の危険に晒されるということでもあるので、その点は注意が必要だと思います🤔
早い段階から資本政策をしっかりして、創業経営者の持ち株比率をコントロールしておきましょう!

そして、仮に持ち株比率がすでに低い場合には、自分の会社を売るとしたらどこだったら売ってもよいかという視点を持っておきたいところです。
子会社になってもいいと思えるほどの会社の経営者と日頃からコネクションを作っておいて、もしものときはホワイトナイトになってくれるような関係値を構築しておくと尚良いと思っています。

何なら資本提携くらいしておくと良いのではないかと。

昔のベンチャーはよくわかりませんが、今のベンチャー経営者の多くは、自社だけの成功を夢見ていないと思うのです。
どちらかというと、現代のベンチャー経営者の多くは共創志向が強く、業界全体として盛り上げていきましょうという価値観の人が多いと思うので、大手の素晴らしい経営者とも仲良くやっていけそうな気はしています😁

これから日本は人口がドンドン減少していきます。
そして、日本の会社を海外のファンド等が買収するというケースもよく目にするようになりました。
今後も外資による買収は増えるでしょう。

それ自体は悪いことではありませんが、希望しない買収も行われることもあるでしょうから、経営者同士で繋がりを持っておくことは重要なことなのではないかと思ったりしています。

ベンチャーと大手の共創は熱い!


おわりに

ということで、今日はM&A分野におけるクラウンジュエルとホワイトナイトについて解説させていただきました。
ニュースなどでたまに聞く単語だとは思いますが、詳しい意味まで知っている人は少ないと思います。

明日使えるくらいの知識はこれで獲得できたと思うので、是非明日MTGのアイスブレイクなどでお使いください!


そして、M&Aや経営戦略、会計周りに強い専門職の皆さん。
是非ベンチャー業界にお越しください。
10年後、20年後の大手企業となるベンチャーを育てるためには、優秀な専門人材が必要です。

優良ベンチャー企業の求人はSYNCAにまとめてございますので、もしよければご利用くださいませ。


WARCで一緒に働きたい!という方もいつでもご連絡ください。


では、また書きます😁


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【著者情報】

著者:瀧田 桜司(たきた はるかず)
役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長
専門:法学、経営学、心理学
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