たぬき(ひきこもり)

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記事一覧

同性婚訴訟に関する札幌地裁の違憲判決(札幌地判令和3年3月17日)についての疑問

はじめに 札幌地裁は、令和3年3月17日に、同性婚を認めていない民法・戸籍法の規定について憲法14条に違反するとしつつ、国家賠償法1条1項との関係では違法と評価…

岡山大学のウーマン・テニュア・トラック・ジュニア制度(WTT jr制度)についての非公式解説(推測含む)

 岡山大学のウーマン・テニュア・トラック・ジュニア制度とそれに対する批判 某所で岡山大学のウーマン・テニュア・トラック・ジュニア制度(以下では、公式の略称WTT j…

いわゆる徴用工問題で、韓国側ができること・すべきこと

 いわゆる徴用工問題では、日本にできることと韓国にできることでは大きな違いがあります。日本にできることは正直にいってほとんどなく、下手な対応をすれば、それこそ日…

インターネット上では人の言動は過激に”なる”のか、及びマスメディアの役割について

 色々な分析があるところですが、インターネット上では人の言動が過激になるのだ、という理論が一定の支持を得ているようです。  確かに、インターネット上では、人に面…

日本郵政の非正規社員についての手当て不支給を(改正前)労働契約法20条にいう不合理な相違に当たるとした最高裁判例

令和2年10月15日付けで、最高裁判決が三件下されました(いずれも第一小法廷)。事案の詳細は判例を読んでいただくこととして、ここでは、この二日前の令和2年10月…

有期契約労働者への賞与・退職金の不支給についての最高裁判決の評価

令和2年10月13日に、どちらも最高裁第三小法廷で、有期契約労働者への賞与の不支給及び退職金の不支給が(改正前の)労働契約法20条に反しないとの判決が下されまし…

日本学術会議任命拒否問題に関する肯定派と否定派の意外な共通点

正確には、肯定派(任命拒否は問題ないとする立場)と否定派(任命拒否は問題であるとする立場)の一部に共通点がある、というところです。 それでは、何が共通点なのでし…

日本学術会議新会員推薦者除外に関するちょっとした疑問

ニュースで色々と騒がれているのですが、このニュースを見たときの正直な疑問を述べていきます。なお、私自身は、この問題について、少なくとも政府は(後掲③について)も…

同性婚訴訟に関する札幌地裁の違憲判決(札幌地判令和3年3月17日)についての疑問

はじめに 札幌地裁は、令和3年3月17日に、同性婚を認めていない民法・戸籍法の規定について憲法14条に違反するとしつつ、国家賠償法1条1項との関係では違法と評価することができないために損害賠償請求を棄却する、とした判決を下しました。この判決については、ニュースとしても大きく取り上げられましたので、ご存知の方も多いと思います。

 同性婚の是非、すなわち同性婚を認めるべきかどうかについては、色々な思

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岡山大学のウーマン・テニュア・トラック・ジュニア制度(WTT jr制度)についての非公式解説(推測含む)

 岡山大学のウーマン・テニュア・トラック・ジュニア制度とそれに対する批判 某所で岡山大学のウーマン・テニュア・トラック・ジュニア制度(以下では、公式の略称WTT jr制度を使用します)について問題になっていたようですので、日本の大学の出す文章の分析という観点からこの問題について眺めてみようと思います。なお、私は少なくとも現在は岡山大学と無関係です。

 このWTT jr制度について、あるところでは

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いわゆる徴用工問題で、韓国側ができること・すべきこと

 いわゆる徴用工問題では、日本にできることと韓国にできることでは大きな違いがあります。日本にできることは正直にいってほとんどなく、下手な対応をすれば、それこそ日韓関係を破綻に追いやる可能性すらあるわけです(たとえば、政府として賠償に応じる、企業が賠償に応じることを認める、などをすると、日韓基本条約の見直しや過去にさかのぼっての損害賠償請求すら視界に入ってくるわけで)。

 では、韓国はこの問題につ

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インターネット上では人の言動は過激に”なる”のか、及びマスメディアの役割について

 色々な分析があるところですが、インターネット上では人の言動が過激になるのだ、という理論が一定の支持を得ているようです。

 確かに、インターネット上では、人に面と向かって発言するわけではありませんから、対面の場合と比べると一定程度過激化する傾向はあるのだと思います。

 ただ、本来的には、それは傾向程度のものであって、人の言動というのはもともと過激なのではないか、とも思うわけです(もしインターネ

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日本郵政の非正規社員についての手当て不支給を(改正前)労働契約法20条にいう不合理な相違に当たるとした最高裁判例

令和2年10月15日付けで、最高裁判決が三件下されました(いずれも第一小法廷)。事案の詳細は判例を読んでいただくこととして、ここでは、この二日前の令和2年10月13日に下された最高裁判決との比較をしていきたいと思います。

10月15日判決では、おおむね、日本郵政の非正規社員について、年末年始勤務手当、病気休暇、夏季休暇及び冬期休暇を与えないことは、改正前労働契約法20条にいう不合理な相違に当たる

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有期契約労働者への賞与・退職金の不支給についての最高裁判決の評価

令和2年10月13日に、どちらも最高裁第三小法廷で、有期契約労働者への賞与の不支給及び退職金の不支給が(改正前の)労働契約法20条に反しないとの判決が下されました。

改正前の労働契約法20条は働き方改革に伴い削除されていて、現在は、ほぼパートタイム・有期雇用労働法の8条がそれに相当します(この内容は後ほど)。

改正前の労働契約法20条は、次の通りです。

有期労働契約を締結している労働者の労働

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日本学術会議任命拒否問題に関する肯定派と否定派の意外な共通点

正確には、肯定派(任命拒否は問題ないとする立場)と否定派(任命拒否は問題であるとする立場)の一部に共通点がある、というところです。

それでは、何が共通点なのでしょうか。このことを浮き彫りにするため、まず、否定派と肯定派それぞれの言い分から見てみましょう。

否定派:石川健治先生(憲法学・東京大学)

「憲法が専門の東京大学の石川健治教授は「憲法23条の学問の自由の核心は、学問の専門ごとの自主性を

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日本学術会議新会員推薦者除外に関するちょっとした疑問

ニュースで色々と騒がれているのですが、このニュースを見たときの正直な疑問を述べていきます。なお、私自身は、この問題について、少なくとも政府は(後掲③について)もう少しきちんと説明すべきであろう、と思っています。

① これは学問の自由に対する侵害ですか?

 日本学術会議に会員として推薦される先生というのは、業績が豊富で、学会でも力のある人である、などとされています。候補者として推薦された松宮先生

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