日本学術会議新会員推薦者除外に関するちょっとした疑問

ニュースで色々と騒がれているのですが、このニュースを見たときの正直な疑問を述べていきます。なお、私自身は、この問題について、少なくとも政府は(後掲③について)もう少しきちんと説明すべきであろう、と思っています。

① これは学問の自由に対する侵害ですか?

 日本学術会議に会員として推薦される先生というのは、業績が豊富で、学会でも力のある人である、などとされています。候補者として推薦された松宮先生の言によれば、「結局その分野の学問的な業績、そして学者として力があるということを見て決める」(https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/368847)とのことです。また、推薦されている先生方を見ていると、どこかしらの大学の正規の教育職員(教授など)として勤務されておられる方がほとんどのようです(学長なども含まれており、大学によってはこれを教育職員にカウントしないこともあるでしょうが、割愛)。

 しかし、だとすると、日本学術会議の会員として推薦された人を任命しないことが、いかなる意味で学問の自由の侵害になるのでしょうか?日本学術会議の会員にならなければできない学問、というのがあるのでしょうか。私にはこの点がわかりませんでした。

② 新会員推薦に対する任命拒否が日本学術会議の独立性を貶めますか?

 これも松宮先生の言によると、「それ(引用者注:仕事が減ってほっとしたこと)を抜いて率直に言うと、「とんでもないところに手を出してきたなこの政権は」と思った。学術会議というのは、まず憲法23条の学問の自由がバックにあり、学術は政治から独立して学問的観点で自由にやらなければいけないということでつくられた学者の組織だ。もちろん内閣総理大臣の下にはあるが、仕事は独立してやると日本学術会議法で定められている。そこに手を出してきた。」(https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/368847)とのことです。日本学術会議は、内閣(や内閣総理大臣)から独立して職務を行うべきである、というのはその通りだと思います。

 しかし、新会員の推薦に対する任命拒否がされると、日本学術会議はその意思決定などが委縮するのでしょうか。解任がされるなら話はわかります。解任されることを恐れて自由な発言や意思決定ができなくなる、という議論は筋の通ったものです。しかし、新規の任命を拒否したことが、いかなる意味で日本学術会議の独立性を侵害するのか、私にはよくわかりません。 

③ 政府は、なぜ先例を破ったのですか?

 私がもっともよくわからないのは、この点です。理由があるのであれば、先例をいたずらに踏襲しないことも重要だと思うのですが、先例から外れるのであれば、その理由はきちんと説明すべきです。たとえば、会員の政治的偏向が理由なのであれば、そのように述べるべきです(もっとも、このような理由を述べたところで、偏向とは何ぞや、偏向などしていない、という議論になるのも当然予想できるところで、それを予想して理由を述べないということかと邪推されるところです)。いずれにせよ、先例にもそれなりの理由はあったわけですから、そこから外れる際には理由が必要でしょう。

結論

 この問題について批判する側は、学問の自由や日本学術会議の独立性に対する侵害であるというならば、それがどのような意味かを明らかにすべきです。そうでないと、議論が無駄に拡散します。これに対し、政府側は、なぜ先例から外れるのかを説明すべきです。

 以上、簡単な感想でした。



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