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2024年11月19日 「天才たちの日課 女性編」感想


「天才たちの日課 女性編 自由な彼女たちの必ずしも自由でない日常」、メイソン・カリー著、金原瑞人/石田文子訳、フィルムアート社。


読書のギアが入る時期


ここしばらく、読書のギアが入っている気がします。
しかも、積んでない、本に対して!!
本作も、紙の本でも、Audibleでもなく、Kindleで新たに購入して、読みました。
以前から、存在は知っており、面白そうだな、と思っていたのです。
妙に気になったので、ポチッと購入、隙間時間にスワイプしながら読んでみました。

天才たちの日常(女性編)


この本は、続編です。
前作は、同じ著者による「天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々」という本です。
どうしてこの続編が出版されるに至ったか、その経緯は本作の「はじめに」に記載されています。
やや言い訳がましく、「取り上げた161人のうち、女性は27人しかいなかったのだ。割合にして17%以下だ」と書いてあります。
反省の弁を真摯に述べているものの、著者は男性のようですから、出版するまで、それが奇妙なことだとは感じなかったのではないかと思います。
おそらくは、読者からの投書やレビューで、女性の割合があまりに低いと指摘されたのではないでしょうか。
また、今回はその同じ轍を踏まぬよう、人種のバランスにも配慮しよう、特に、黒人女性を多くピックアップしているようです。
ちなみに私がわかるアジア人は2番目に掲載された草間彌生氏のみであり、
その一方で、私は、黒人女性アーティストや作家のほとんどを知りませんでした。
しかし、この本は、別段、そのアーティストや作家を知らなくとも読めます。
社会の中で生活をしながら、創造性を発揮することの奮闘は、相手が誰にしても興味深いからです。
ちなみに、私は前作は読んでいません。
天才のまま、したいことだけできる人たちの日課を読んでも凡人の私には益することがないだろう、と考えたためです。

1人につき数ページ


Kindleなので、購入して読み始めてから、わかったのですが、
この本、1人につき、割かれるページは数ページなのです。
決して多くはないページです。
最初は、「これは物足りないかもなぁ」と思ったのですが、
逆に、この短さが良い、むしろ素晴らしいと言うことに気づきました。
隙間時間に、1人か2人分、読むことができるのです。
現在も活躍している人の場合は、その人のインタビューから、
すでに亡くなっていたり、歴史上の人物に対しては、
自伝や著作、伝記からその生活を浮き彫りにするスタイルです。
本の最後には膨大な文献リストがあります。
短いけれども、
凝縮された知的興奮に満ちた文章が、想像ではなく、
膨大な資料から生まれたことがわかります。
やはり、資料にあたると言うのは、大事なことなんですね。
有名な人だからページ数が多いと言うわけでないのも、面白いところです。
申し訳ないことに私が知らないアーティストでも、たっぷりページを割かれていることもありますし、
私のような極東の一市民でも知っている人が2ページと言うこともあります。
著者の好みなのか、資料(インタビューも含む)の潤沢さによるものなのか…。

好きな作家やアーティストが載っている


私が名前だけでも知っている作家やアーティスト、その作品が好きな作家やアーティストが何人も載っていて、
それらはとりわけ面白く読みました。
草間彌生、ピナ・パウシュ、ココ・シャネル、フリーダ・カーロ、ルイザ・メイ・オルコット、コレット、マレーネ・ディートリッヒ、ケイト・ショパン、マリー・キュリー、ヴァージニア・ウルフ、ヴァネッサ・ベル、エミリー・ディキンスン、サラ・ベルナール、メアリー・シェリー、シャーロット・ブロンテ、フランソワーズ・サガン、シャーリィ・ジャクスン、パティ・スミスなどなど。
パトリシア・ハイスミスがいなかったのが、意外だったかも知れません。
これまで知らなくても、この本を読んで気になった人をネットで検索し、
興味を持てるのも面白いところです。

生きることと創造性を発揮することは両立するのか?


今作は、「女性編」ですから、生活と創造性のバランスをどうとるのかがより詳しく書かれている印象です。
天才たちが、社会的な無理解や機会の無さ、結婚や出産、子育て、そういったものの中で、どのように、創造性を発揮してきたのかが描かれます。
勤勉に仕事をしてきた人、家族を持って家庭生活を持ちながら仕事をした人だけでなく、覚醒剤やアルコールに頼る人も、家事は全くしないと決める人も、家族は持たず1人で創作に邁進した人も、掲載されています。
生きることと創造性を発揮することは、
両立しても、両立しなくても、
人間の苦闘であることは確かです。
どちらが素晴らしいではなく、どちらも生き様なのだ、と感じました。、
さて、
私が慰められたのは、「インスピレーションが降りてきたのです!」と言うような天才よりも、
さまざまな理由から、また何よりも自分がそう課して、「何も浮かばなくてもまずは取り組む」タイプの天才がわりと多くいたことです。
多くの作家は、「とにかく書く」タイプが多く、
天才たちですらそうなのだから、普通の人間ならば、よりそうしようと腹がきまりました。
1日に書く文字を決めていた作家もそこそこいるようです。
やっぱり書くしかないのだなぁ…と思います。
「何にもしたくないなぁ」という時に、パラパラめくっていると、少しだけ勇気がでる本です。
古本であるなら紙の本も欲しくなります。
パラパラめくれるのは、紙の本の、素晴らしい特権ですから。


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千歳緑/code
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