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次の駅までのひとときに

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わたしのなんでもないエッセイ
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#note書き初め

2024年達成できなくても問題ないけどできたら嬉しい10個

2024年達成できなくても問題ないけどできたら嬉しい10個

祖父の七回忌法要の後、従妹弟家族と会食することになった。畳敷きの和室には明るい光が差し込み、卓に料理が美しく配膳されていく。

会うのは祖父の葬儀以来である。こちらの人見知りをものともせず、まるで毎日顔を合わせているかのように従妹弟家族は話しかけてくる。この人たちと血がつながっているのだなあと不思議な感慨にふけっていると、叔父が改まって音頭を取った。

「それではせっかく集まったことですし、一人ず

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どうしようもない夜にやりたいこと100個ひねり出して、会社を辞めた話

どうしようもない夜にやりたいこと100個ひねり出して、会社を辞めた話

たまには新年らしく目標でも立ててみようと、やりたいこと100個を書きつけたノートを3年ぶりに引っ張り出してきた。

深夜の勢いで作成したはいいが、リストアップしただけで満足してしまい、1回見返したきりずっと放置してきた。なにを書いたのかもうあまり覚えていない。若い頃の熱の残滓に触れれば、停滞する日常を変えるモチベーションを得られるかもしれない。わずかな期待を胸に表紙を開く。

新年の浮かれ気分が吹

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今日も1行目と戦っている

今日も1行目と戦っている

1行目は第一印象だ。

私たちは何かを読むとき、この書き手となら心を通わせられそうか、情報と体験を約束してくれそうか、つなぎ合わせた数単語から敏感に相性を探りながら判断している。だから全国に配布する取材記事も、コンテストに応募するエッセイも、twitterの140字だって、真っ白のディスプレイに初めて文字を打ち込むときは「よいご縁がありますように」と祈るようにして言葉を選んでいる。

中でもnot

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今頃退職届を書いているはずだった

今頃退職届を書いているはずだった

今頃退職届を書いているはずだった。

何度もググって確かめたから書き方は完璧だ。
仕事初めは4日。他の社員は休みなので提出は6日になりそうだ。
全体朝礼はかったるいし、終わったくらいに出勤して上司を呼び出そう。

「すみません、少しお話が」
「なに?」
「えっと、ここではあれなんで、別室で」

もうこの時点で私の意向は伝わるだろう。
奥の会議室に入ると、残された同僚たちはざわめき扉に聞き耳を立てる

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