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ツキノエッセイ

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なにげない日常だったり、ふらりと立ち寄った過去や、ふと思い出した記憶を拾い集めて、言葉の花束にしてみたい。 切り取ったシーンをそのままに ノンフィクションを始めてみる。 人生…
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#過去

昭和ガラスの向こう側

昭和ガラスの向こう側

椛だったか、桜だったか。
何か模様の入ったガラスの引き戸だった。
その昭和レトロガラスと呼ばれるガラスは、今はとても貴重なものらしい。

私にとって、トラウマのようなそのガラスの存在は、いつまでも記憶の一番奥の引き出しに眠っている。

両親が離婚して、母と弟と3人で暮らしていた頃。六畳二間の狭い借家にそれはあった。

ある暑い夏の日。
朝早くに目が覚めて、いつも隣に寝ているはずの母がいないことに気

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曇りガラスの記憶

曇りガラスの記憶

今日はふと、
父のことを考えていた。

長年、自動車業会で働いていた父。
三年前に定年退職し、
今は再婚した奥さんの実家の神戸で
タクシー運転手をしている。

言葉数は少なく、
いつも穏やかで優しい人。
怒られたことは一度もないし、
怒っているところを見たこともない。
とは言っても、
父とは生まれてから9年しか
一緒に暮らしていないから、
もっと長く一緒にいられたら…
もしかしたら、
怒られること

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泣けないわたし

泣けないわたし

湿った薄灰色の空のにおい

ちょっとだけ強気な風が通りすぎる

午後はものすごーく、眠くて
ほんの少しだけうとうとした。。

色のない夢を見た

内容はあまり覚えてないけど、
小さなわたしが泣いている夢だった

わたしは、昔から
泣いちゃいけない。って思っていて
気づいたら、
泣くことができない人間になってた

嬉しくても
悲しくても
痛くても
怖くても

人前では絶対に泣かなかった

我慢強い子

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