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20240628 イラストエッセイ 「私家版パンセ」 0023 結婚について (関係を維持するために)

 ぼくが結婚する時、父が言いました。

 「今までは向き合う関係だった。これからは同じ方向を見て歩く関係になりなさい。お互いを見つめ合う関係は閉じている。あばたもえくぼだった時代はやがて過ぎ去り、あばたはやっぱりあばただと思うようになる。もっと他にも素晴らしい人がいるではないか、この選択は間違っていたのではないかと思えてくることもある。相手に何かを求めている限り、やがて資源は尽きてしまう。人間は有限だからだ。
 しかし二人で同じ方向に歩み出す関係は、創造的な関係である。二人は家庭を築き上げてゆく。無から有を生み出す共同作業だ。創造されるものは無限である。」

 恋をすることは簡単です。誰にでもできる。(たぶん)でも、その関係を維持するためには知恵が必要です。父の言葉にはその知恵があると思います。
 恋愛当初の情熱を維持することは難しい。それは、人間には恒常性(ホメオスタシス)という機能があり、興奮や情熱、大きな喜びや悲しみを感じても、やがて平常に戻るようになっているからです。
 恋がさめる、というのはネガティブな言葉ですが、人間は何にでもさめるように作られているんです。
 結婚は長丁場です。ですから、恋がさめた後に、どのように関係を築き上げてゆくかが大切になるんです。

 「星の王子さま」で、きつねが王子に言いますよね。
 王子が自分の星で大切に育ててきた一本のバラ。ところが地球に来てみると、バラはありふれた花だった。それで王子が失望した時のことです。
 「きみがそのバラを世話するために注いだ時間と労力が、きみにとってそのバラを特別にするんだよ」と。

 ぼくが妻と出会ったのは19の時。初めて付き合った女性でした。その女生と結婚して還暦過ぎまでずっと一緒に生きて来ました。二人の子供を育て、幾多の困難を乗り越えて。
 父の言葉の通り、当初の情熱はさめました。 笑
 世の中で素晴らしい女性とたくさん出会いました。(浮気はしませんでしたけれど。笑)
 しかし今になってようやく父やきつねの言った言葉が分かるように思います。

 二人の関係が他の何ものにも代え難いのは、二人で作り上げてきたものが唯一無二のものだからなんです。
 二人で生活を創造する意思と努力。
 これが関係を持続させる唯一の方法だと思います。

サンテグジュペリ 「星の王子様」 模写





私家版パンセとは

 ぼくは5年間のサラリーマン生活と、30年間の教師生活を送りました。
 その30年間、子供たちが元気になれるような言葉はないかなと考え続けて来ました。
 そんな風にして考えた小さな思考の断片をご紹介します。
 これらの言葉がほんの少しでも誰かの力になれたら幸いです。

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