つじもとひでお

ビール会社に5年間務めたあと、キリスト教主義の高校で英語を教えました。部活動ではジャズ…

つじもとひでお

ビール会社に5年間務めたあと、キリスト教主義の高校で英語を教えました。部活動ではジャズバンドを指導していました。今は大学の学生寮の寮監をしています。みなさんがちょっとだけ幸せになれるような、本や映画の紹介、イラスト、エッセイ、小説、漫画を投稿してゆきたいと思います。

マガジン

  • イラストエッセイ 私家版パンセ

    ぼくは30年間の教師生活を送りました。その30年間、子供たちが元気になれるような言葉はないかなと考え続けて来ました。  そんな風にして考えた小さな思考の断片をご紹介します。  これらの言葉がほんの少しでも誰かの力になれたら幸いです。  週3回程度投稿いたします。

  • イラストエッセイ「読まずに死ねない本」

    ドストエフスキーとトルストイ、カフカ、ゲーテ、夏目漱石は全作読み、日本文学全集も通読しました。  学生時代は古代ギリシャ文学を専攻し、今まで文学を中心に何千冊もの本を読んできました。 その中で、何度も読み返したおすすめの本をご紹介したいと思います。

  • イラストエッセイ 北国の春

    北国の春に咲く山野草をご紹介します。

  • イラストエッセイ ぼくが住んでいる町 新潟県胎内市

    ぼくが住んでいる新潟県胎内市とその周辺の様子を、絵とイラストでご紹介します。

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自己紹介とコンテンツについて

自己紹介 こんにちは、つじもとひでおです。  ぼくは5年間ビール会社でサラリーマンとして働いた後、30年間高校で英語を教えました。今は、大学の学生寮の寮監をしています。  読んで下さる方が少しでも幸せに、心豊かになれるような文章とイラストを書いてゆきたいと思っています。   コンテンツの紹介   ぼくが書く記事は、基本的に二種類あります。  まず、ちょっとした考え方のヒント、思索の断片をご紹介する「私家版パンセ」のシリーズ(マガジン)。  そして人生が豊かに楽しくなる本を

    • 20240722 イラストエッセイ「私家版パンセ」0033 移民問題 (文明は滅んでも文化は生き続ける)

       社会に活力をもたらすのは、異なった価値観を持つ人々だとぼくは思っています。異なった人々を受け入れることは既存の社会にある種の破壊をもたらすことだから、人々は本能的にそれを恐れ保守的になります。でも、こうした痛みを伴う未知との遭遇がなければ、社会は自らを新しく活力あるものに作り替えることは出来ないのは歴史が証明しています。  古代ローマ帝国は征服した民族の中からも皇帝を出している開かれた社会でした。一方、古代ギリシアのポリスは純潔を守って滅びました。もちろん、ローマ帝国もゲル

      • 20240719 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」017 P.H.ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」人間性とは何か

         「アンドロイドは電気羊の夢をみるか」というSF小説は、映画「ブレードランナー」の原作でもあります。  今までに見た映画の中で、ベスト3に入るほど好きな映画です。  人工知能を持つアンドロイドが生産されるようになった地球。アンドロイドたちは過酷な労働に従事させられていますが、その中で逃亡アンドロイドが出るようになった。そうした逃亡アンドロイドを「狩る」賞金稼ぎが、アンドロイドの娘に恋をする、という物語。  ディックのSF小説のテーマは一貫しています。  それは、「人間性と

        • 20240718 イラストエッセイ「私家版パンセ」0032 自分に絶望した時に知ってほしいこと 価値観について

           人は社会の中でしか生きられません。  社会の中で人になると言っても良い。そもそも、社会がなければ、言葉を話すことができません。人間だけが他者の力を借りなければ出産できない動物です。社会は人間にとって、マンモスの牙のようなもので、生存の条件です。  ところで、社会には必ず価値観があります。何が正しくて何が正しくないのか。人はどのように生きるべきなのか。幸福とはなにか。死とは何か。  自分自身の価値観を持つと主張する人も、自分の所属する社会の価値観は強く影響を与えています。それ

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        • 20240722 イラストエッセイ「私家版パンセ」0033 移民問題 (文明は滅んでも文化は生き続ける)

        • 20240719 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」017 P.H.ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」人間性とは何か

        • 20240718 イラストエッセイ「私家版パンセ」0032 自分に絶望した時に知ってほしいこと 価値観について

        マガジン

        • イラストエッセイ 私家版パンセ
          33本
        • イラストエッセイ「読まずに死ねない本」
          16本
        • イラストエッセイ 北国の春
          11本
        • イラストエッセイ ぼくが住んでいる町 新潟県胎内市
          10本

        記事

          20240717 イラストエッセイ「私家版パンセ」0031 内なる判断基準 信仰 内在的論理について

           人は日々色んな判断をして暮らしています。何を為すべきか、為さざるべきか。何を良しとし、何を悪しきとするか。  そこには何らかの判断基準が隠されています。人は己の判断基準に従って、善悪を判断しています。  この判断基準を聖書に求める人々をキリスト教徒と呼びます。コーランならばイスラム教徒。  無神論者ももちろん、この判断基準を持っています。  ある人々は習慣、伝統を基準にします。ある人は世間の目を判断基準にします。またある人はイデオロギーを、またある人は効率性を、そして多くの

          20240717 イラストエッセイ「私家版パンセ」0031 内なる判断基準 信仰 内在的論理について

          20240716 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 0016 「ホビットの冒険」

           トールキンの「ホビットの冒険」は、三十年以上前に初めて読んでから、十回以上繰り返して読んだ本です。  トールキンと言えば、「指輪物語」の方が有名かも知れませんけれど、「指輪物語」は「ホビットの冒険」の後日譚、スピンオフ作品なんですね。スピンオフの方が大作になっているのですが。笑  「ホビットの冒険」は、こじんまりとした素敵な穴倉に暮らすホビット族のビルボ・バギンズが、魔法使いのガンダルフ、そしてドワーフたちと一緒に、恐ろしい竜のスマウグから宝物を取り返す、というお話。

          20240716 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 0016 「ホビットの冒険」

          20240712 イラストエッセイ「私家版パンセ」0030 悩みを解決する方法 合理的思考の大切さ

           理性的、合理的思考ですべてが解決する訳ではない。それで、人は心理学や脳科学、時には占いや神話、宗教を信じるようになります。  ぼくも心理学を勉強しましたし、神話は大好きだし、キリスト教徒でもありますから宗教も信じています。  それでもなお、合理的思考を過小評価してはいけないと思っています。  悩みがあるとき、生い立ちやトラウマが原因だと考えることもある。あるいは、運命論を信じたり、神のご加護を祈ったりもします。  でもまず、良く眠れているか、ちゃんと栄養のあるものを食べて

          20240712 イラストエッセイ「私家版パンセ」0030 悩みを解決する方法 合理的思考の大切さ

          20240711 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0029 人生が行き詰まった時には外なるものに目を向けよ

           人生に行き詰まった友人が、先生に相談したそうです。するとその先生は、「偉大なものを読みなさい」と答えたそうです。  人間は卑小なものです。一方、世界は不思議で偉大なものに満ちています。  自分の内側に目を向けている限り、いつか必ず行き詰まります。  他方、外なる偉大なものに目を向けている人は、退屈を知りません。  人生が「つまらない」と感じている人は、ほとんど目が内側に向いています。自分という存在は有限ですから、自分だけを見つめていれば必ずつまらなくなります。  神秘主義者

          20240711 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0029 人生が行き詰まった時には外なるものに目を向けよ

          20240710 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 015 「ドリトル先生アフリカゆき」

           ドリトル先生シリーズにはたくさんの本があります。  でも、一推しはこの「アフリカゆき」。  シリーズ第一作です。  フーテンの寅さんシリーズも第一作が好きなのですけれど、ここに描かれているドリトル先生は本当に素敵でおちゃめ。物語も自由で面白い。  ドリトル先生シリーズは、だんだん内省的というか重厚になってゆく気がするんですよね。フーテンの寅さんもそう。ばかばかしさがだんだん減ってゆく。  ぼくは夏目漱石では「坊ちゃん」が一番好きですけれど、それに通ずるところがあると思いま

          20240710 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 015 「ドリトル先生アフリカゆき」

          20240709 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0028 一神教の垂直体験

           キリスト教などの一神教に特有のものに、「垂直体験」というものがあります。ぼくたち日本の文化にはあまりなじみのない概念なのですが、これを知っておくと、一神教の世界の価値観を理解する手助けになります。  これは科学的な概念ではありません。あくまでも宗教が対象にするのは人間社会なんです。けれども、もしかしたらその社会から生まれた科学にも影響を与えているかも知れません。  人間社会を含め、この時空の世界を二次元の平面上の営みだと仮定します。そこには一定の力学が働いており、理論的に

          20240709 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0028 一神教の垂直体験

          20240708 イラストエッセイ「私家版パンセ」0027 バランス感覚

           前回、物事には緊張関係が必要だということをお話ししました。  そのことを踏まえたうえで、対立する事柄の中でどちらかに重心を置くべきか、自分の立ち位置を定めることも必要になってくると思います。  時代は色んな分野で振り子のように左右に揺れています。例えば、戦前は全体主義でしたけれど、戦後個人主義に振れ、今また公共性の方に振れようとしています。  これも以前にお話ししましたが、古典を学ぶ良さというのは、人間としての、あるいは人間社会の中心線みたいなものが見てくるんです。そして、

          20240708 イラストエッセイ「私家版パンセ」0027 バランス感覚

          20240705 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」014 「アンデルセン

           アンデルセンは単なる童話作家ではないんですよね。  その作品群(岩波文庫で読めます)はロマン主義文学と言っても良いほど、内容の深いものです。  ロマン主義文学とは19世紀ヨーロッパで花開く文学活動で、それ以前の古典派が理性、形式を重視したのに対し、感情、感性を大切にしたものがロマン主義です。  「影」という物語は、ロマン派の代表的な作家、ホフマンの短編を思わせる、幻想的な短編小説と言っても良い。  アンデルセンワールドというものがあるんです。  ぼくはグリム童話も好きで

          20240705 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」014 「アンデルセン

          20240704 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0026 「対立と緊張」

           聖書を読むと様々な対立概念に出会います。  「御国が来ますように」と祈りながら、「御心が地にも行われますように」と祈る。  これは人間ではなく神が最終的な決着をつけるという終末思想と、人間の努力によってこの世を改善できるというユートピア思想との対立です。  「全てのことに感謝せよ」と言いながら、預言者もイエスも痛烈な批判家です。  修道院的な隠遁生活が神に近付く最善の方法であると見なす人々もあれば、マザーテレサのように世俗のまっただ中で働く人々があります。  キリスト教の一

          20240704 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0026 「対立と緊張」

          20240703 イラストエッセイ「私家版パンセ」0025 「意識と無意識」

           心理学は人間の無意識を扱う学問です。  無意識の発見は、20世紀最大の発見の一つと言われていますが、それ以前の人々は、人間の思考や言動に影響するものは、理性と感情の二つしか知りませんでした。突然の発作や、ど忘れなどは、悪霊などの超自然的な存在が原因と考えていました。  自分の無意識に光をあてることは、自分の思考のパターンや感情の波などをコントロールするために必要ですけれど、心理学が生まれて100年以上経った今日でも、自分の無意識の領域について、意識的である人はほとんどいない

          20240703 イラストエッセイ「私家版パンセ」0025 「意識と無意識」

          20240702 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 0013 田中美知太郎「ソクラテス」岩波新書

           前回、「ソクラテスの弁明」という本をご紹介しました。  今日ご紹介する「ソクラテス」は、田中美知太郎先生による、ソクラテスの解説、解釈の本です。  素晴らしい本です。前回もお話ししたように、哲学の世界では、「真理はある」という立場と、「真理などない」という立場がありました。  ソクラテス、プラトン、田中美知太郎先生は「真理はある」という立場です。  その立場から見ると、真理はないという立場は、結局人間の判断が絶対化され、自己絶対化の危険を持つのです。最終的には自分自身が真理

          20240702 イラストエッセイ「読まずに死ねない本」 0013 田中美知太郎「ソクラテス」岩波新書

          20240701 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0024 「人間は死すべき存在であるということが、人間讃歌である理由」

           ギリシャ悲劇は、主人公たちが悲惨な目に会う、文字通り悲劇です。そしてその根底にあるのが、「人間は死すべき存在である」ということ。不死なる神々に対して、人間は死ななければならない有限の存在。その人間が神々に挑戦し、破れて滅びて行く。これが悲劇の本質です。  ところが、ニーチェは、この悲劇が人間讃歌だというんですね。  その理由は、悲劇は有限の存在である人間にしか存在しえないから。  もし人間が神々のように不死だったら、苦しみや悲惨は存在せず、あらゆる出来事が茶番、喜劇になっ

          20240701 イラストエッセイ「私家版パンセ」 0024 「人間は死すべき存在であるということが、人間讃歌である理由」