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20240722 イラストエッセイ「私家版パンセ」0033 移民問題 (文明は滅んでも文化は生き続ける)
社会に活力をもたらすのは、異なった価値観を持つ人々だとぼくは思っています。異なった人々を受け入れることは既存の社会にある種の破壊をもたらすことだから、人々は本能的にそれを恐れ保守的になります。でも、こうした痛みを伴う未知との遭遇がなければ、社会は自らを新しく活力あるものに作り替えることは出来ないのは歴史が証明しています。
古代ローマ帝国は征服した民族の中からも皇帝を出している開かれた社会でした。一方、古代ギリシアのポリスは純潔を守って滅びました。もちろん、ローマ帝国もゲルマン人の侵入によって滅びたのですが、ヨーロッパ文明という形で再生しています。
日本について言えば、もともと縄文人が住むところに移民として弥生人がやってきたんですよね。それから中国、朝鮮から学び、ヨーロッパ文明を受け入れ、アメリカに占領されて今に至っています。
地方に活力を与えるのは、若者、よそ者、馬鹿者という言葉があります。その社会のしきたりにとらわれない発想が、地域を活性化するんですね。でもそのように活性化された社会は、かつての社会とは違ったものになっているはずです。
新しいことを始めることが老化防止になると言われます。いつまでも、いままでの自分を変えるような出会いに心を開く人は老いないと。つまり、個人でも保守的になると衰退するということです。
保守的、排他的な社会は安心安全ですけれど、必ず衰退します。
多様性に寛容な社会は、活力はありますが、混乱と破壊が伴います。
若い時には、混乱と破壊を乗り越えて新しい世界を創造することに魅力を感じました。でも老境に入ると、いつまでも見慣れた世界が続いて欲しいと願うものです。
いずれにせよ、永遠に続く文明はないということですね。異質の他者を受け入れ、別のものになるか、変わらずに滅びるか。
ただ、古代ギリシアの例をとると、ポリスは滅びましたけれど、ギリシアの文化は2000年の時を超えて生き続けています。
文明は滅びても、文化は生き続けているんですね。担い手は変化していますけれど。
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