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シネマ・エッセイ 〜暮らしに映画のエッセンスを

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人生の旅路という表現が意味するように、時に人生は旅に例えられる。映画は、さまざまな人生の縮図。旅をするように楽しむ。日常の、または非日常の暮らしにもっと映画のエッセンスが注がれた…
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#キノシネマ天神

映画『落下の解剖学』

映画『落下の解剖学』

それにしても映画監督というのは
愛犬家が多いなと思う

映画開始10分
私のメモには「わんちゃんと音が解明する」と書かれてあった

傍聴人やテレビのワイドショーはいつもそう
「他人の不幸は蜜の味」

突然の破壊の後には
必ず新たな再生がやってくる

人生の動きは
まさに易経の十二消息のように
常に波状形である

陰と陽との繰り返し

犬はそのことをわかっているかの如く
優れた洞察力を生かしている

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映画『瞳をとじて』

映画『瞳をとじて』

映画館を後にする時のこと
同じ映画を観た年配の男性客が発した言葉が
いまも記憶に残っている

「若い時に『ミツバチのささやき』を観たけどよくわからなかった。
 でも、こんなに素晴らしい作品をつくるんだね」

ビクトル・エリセ監督の最新作『瞳をとじて』
映画の中の映画『別れのまなざし』では依頼者の娘を探す
そしてこの『瞳をとじて』では元映画監督ミゲルが出演者であるフリオを探す

まるで両者の映画が呼

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映画『NOSTALGHIA ノスタルジア 4K修復版』

映画『NOSTALGHIA ノスタルジア 4K修復版』

それにしても
このポスターの惹句にはただただ圧巻

‘もはや、すでに。‘

タルコフスキーに初めて触れたのは昨年のこと
4月に亡くなった坂本龍一さんの追悼を込めて
坂本さんのドキュメンタリー映画2作品
そしてタルコフスキー監督作品の特別上映が
行きつけの映画館にて開催された

『惑星ソラリス』『鏡』『ストーカー』を鑑賞
ソ連当時モスクワにて これらの作品を観ていたというロシア人の女性と出会い
鑑賞

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映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』

映画『ビヨンド・ユートピア 脱北』

近ごろの日本では「一粒万倍日」を縁起のよい日としてとらえて
開運のためにと 開運行動に勤しむ人も多い

種籾ひと粒から何倍ものお米が収穫できるというところから由来しているらしい

この映画に登場する牧師は
幼くして亡くした息子の命の代わりに
今までに1000人の脱北者の命を救ってきた

福音にある「一粒の麦」のようだと語る牧師

私には 一粒万倍日と似て非なることに思える

一人の命に代わりがいな

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映画『市子』

映画『市子』

「限界だった」

易経という東洋思想哲学の最高峰とも言われる書がある
この書には、時の変化の法則が非常に簡潔に書かれている
あまりにも端的に書かれ過ぎているために、解読が難しいと言われている

この易経の中には四難卦(しなんか)という困難の時を伝える卦がある
困難を極める卦「困」の時をどのように生き抜いていくかを説く沢水困
「困」は、見てもわかるように、木の周りに囲いがされている
木は上へ上へと枝

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映画『PERFECT DAYS』

映画『PERFECT DAYS』

悲哀に満ちた 日々の暮らしの中から

一筋の希望の光を 導き出すかのように

時の変化の法則をあらゆる角度から描いた 奇跡の映画。

It’s a new dawn,

it’s a new day, 

It’s a new life for me.

Dragonfly…………Butterflies………..

ヴィム・ヴェンダース様、ありがとう。