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歴史本書評

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オススメ歴史本の読書記録。日本史世界史ごちゃ混ぜです。
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#第二次世界大戦

【書評】吉田裕『アジア・太平洋戦争』(岩波新書)

【書評】吉田裕『アジア・太平洋戦争』(岩波新書)

 先の大戦を取り上げた書物は無数に存在しますが、「社会で困らない程度の教養を身に着ける」レベルを求めるのであれば、本書がお勧めです。

 第二次世界大戦への日本の参戦に至る経緯、戦局の逆転から絶望的抗戦期、敗戦までの流れが簡潔に説明されています。

「なぜ日本は無謀な戦争に突入したのか」は重要な論点ですが、それにも比較的紙幅が割かれています。

 例えば、陸軍・海軍が官僚組織として肥大化し、国益よ

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【書評】高田博行「ヒトラー演説」(中公新書)

【書評】高田博行「ヒトラー演説」(中公新書)

 たぐいまれな扇動政治家であったヒトラー。彼の武器は何といっても「演説」だ。だが、そのすごさを具体的に説明できる人はあまりいないと思う。

 本書の著者は歴史学ではなく、言語学方面の専門家(専門は近現代のドイツ語史)だ。なので、歴史の専門家とは違う新鮮な切り口で、ヒトラーの実像に迫ることができる。例えば、150万語に及ぶヒトラーの演説のデータを用い、単語の出現回数などを統計的に分析している。

 

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終戦記念日に勧めたい本

終戦記念日に勧めたい本

今日は76回目の終戦記念日です。
「あの戦争」をめぐる言説は、年々危うさを増しているように思います。
特に、日本軍の外国への加害や、味方に多くの犠牲を出した無能さに目を背けてはなりません。

第二次世界大戦(太平洋戦争)についての教養を身に着けるためのお勧めの書籍を紹介します。

1.加藤陽子「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」(新潮文庫)近代日本が戦った日清戦争・日露戦争・第一次世界大戦・第二

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【書評】石田勇治「ヒトラーとナチ・ドイツ」講談社現代新書

【書評】石田勇治「ヒトラーとナチ・ドイツ」講談社現代新書

写真=1933年、全権委任法(授権法)成立後のヒトラー。

ヒトラーやナチ党については、次のようにイメージしている人が多いのではないかと思う。

「ナチ党が選挙によって議会の多数を得たことにより、ヒトラー政権が成立した。ヒトラーはドイツ人の信任を得ていたのだ」

「ヒトラー政権の初期には、優れた経済政策で世界恐慌の打撃から立ち直り、失業率も改善した。経済政策だけでみれば有能だ」

果たして、この認

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