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歴史本書評

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オススメ歴史本の読書記録。日本史世界史ごちゃ混ぜです。
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2022年6月の記事一覧

【書評】『風刺画で読み解く英国宰相列伝』(ミネルヴァ書房)

【書評】『風刺画で読み解く英国宰相列伝』(ミネルヴァ書房)

※著者はケネス・ベイカー、訳者は松村昌家。

 同時代の政治や世相を鋭く描く風刺画は、後世の人間からみても非常に面白いものです。本書は、18世紀に最初の首相となったロバート・ウォルポールから、20世紀のサッチャー、メイジャーまでの300年弱の政治史の流れを、風刺画をもとに描いています。

 18世紀ごろの風刺画は時に下品、猥褻な表現さえあるなど、時代による特色も読み取れます。

 具体的な作品とし

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【書評】黒川祐次『物語 ウクライナの歴史』(中公新書)

【書評】黒川祐次『物語 ウクライナの歴史』(中公新書)

 最近の急な情勢の変化によって、にわかに注目されるようになったウクライナの歴史。

 領域が広大で、ポーランドやオーストリア、ロシアといった国の支配を受けた経験があるウクライナ史を知るには、ネット上の無料の知識だけでは到底足りません。

「物語 ウクライナの歴史」は2002年の発行ですが、今でも格好の入門書として通用する内容だと思います。

 筆者は元外交官で歴史の研究者ではありませんが、ロシア(

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【書評】下斗米伸夫『ソビエト連邦史』(講談社学術文庫)

【書評】下斗米伸夫『ソビエト連邦史』(講談社学術文庫)

 ロシア・ソ連史研究の第一人者によるソビエト連邦の通史です。

「ソ連という国家よりも、共産党という党が優越する」という異様な国家の形はどのようにして生まれ、どのような結果をもたらしたか。ロシア革命期から活躍し、スターリンの大粛清も生き延びた政治家、モロトフの生涯を追いながらソ連の歴史を描き出しています。

 もっとも、文体が晦渋かつ基礎用語の解説もあまり親切ではないため、ソ連史の初心者にはあまり

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