見出し画像

【預言者】 統失2級男が書いた超ショート小説

漆黒の中で、その声は僕にこう言った。「私は8千年生きている精霊だが、邪悪な人間共を絶滅させる為に、それぞれの時代に適任者を選びユダヤ教、キリスト教、イスラム教を作らせ殺し合わせて来た。そして、今度はお前が第4の宗教勢力を作る番だ、お前こそが第三次世界大戦の勝利者となるのだ」僕はそれに対して確か、「そんな役目は嫌だ」と言ったと思う。でも、昏睡状態から目覚めた時には、そんな記憶はあやふやになっていて僕は何故か晴れやかな気分になっていた。そして、結局、骨折の治癒までには時間を要したので、その病院には3ヶ月入院してから退院した。退院後は暫く療養期間を取ってから
4ヶ月振りに職場に復帰する事となった。勤務中に事故を起こし2週間昏睡状態に陥っていたのが理由で僕は白バイ勤務からは外され、交番勤務に戻されていた。交番勤務を始めて4日目の昼過ぎにその老齢の男性はやって来た。男性は「拾った財布を届けに来ました」と言っていたが、必要な書類を書いて貰っている時に奇妙な事を話し始めた。「あなたには預言者としての務めがある。今すぐ交番勤務の警官なんぞ辞めて宗教団体を立ち上げなさい」男性はそんな事を口走っていたが、結局、必要な書類に必要な事を書いて帰って行った。そして、僕はその晩から幻聴を聴くようになってしまった。声の主はブッダだと名乗っていたが、発言が目茶苦茶だった。そのブッダと名乗る声は、「ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒を皆殺しにして、世界に仏の教えを広めよ」と言っていた。しかし、そんな発言をするブッダなど存在する筈もなく、僕はその声を信じなかった。(僕は覚醒剤をやっている訳でもなく、アルコール依存症でもない。ナチュラルに精神を病んでしまったのだ。明日上司に事情を説明して休暇を取り、精神病院を受診してみよう)そう思いながら、その晩は大人しく眠る事にした。

32年後、僕は宗教法人『聖連教』の代表として外務大臣を務めていた。僕はこの32年の間にユダヤ教、キリスト教、イスラム教を心の底から憎むようになっていた。そして、日本の政治家を代表してローマ教皇と面会した時、ローマ教皇の右の頬に全力の平手打ちを食らわせてやった。その結果、僕は日本に強制送還されて30年振りに精神病院に入院する事となった。僕は死ぬまで退院する事が叶わなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?