【レビュー】『緊急事態の中で』～第35節モンテディオ山形VSファジアーノ岡山～

試合結果

2023 J2 第35節
9/16 18:00K.O. ＠NDソフトスタジアム山形
山形（2-0）岡山
1分 チアゴ・アウベス
85分 野田裕喜

スタメン

マッチレポート

緊急事態発生の岡山。主力不在の中で団結するも、打破できず

クラブ初の5連勝を目指す岡山をアクシデントが襲った。直近の試合で好パフォーマンスを発揮していた柳、鈴木、田部井、坂本がメンバーから外れる中、ヨルディ・バイス、高木、河井、櫻川が久々に先発入り。ベンチにはDF登録の選手が不在で、今季のリーグ戦出番の少ない選手が名を連ねた。

緊急事態で迎えた今節、キックオフ直後に先制点を許してしまう。いつも通りCBからロングフィードを相手陣内に蹴り込んでスタート。だが、バイスが蹴ったボールの飛距離が伸びない。岡山の陣形が乱れたまま山形にクリアボールを収められると、藤本のパスに抜け出したチアゴ・アウベスのシュートが決まった。

開始13秒での失点、ショックは大きかった。13分にも左サイドを完全に破られてイサカがシュートを打ってきた。しかし、今度はGK堀田が至近距離からのシュートをファインセーブ。粘り強い守備で追加点を阻止すると、山形が自陣にブロックを組んだことでボールを保持しながら反発していく。両サイドに張った末吉、高橋で左右に揺さぶり、ゴール前にクロスを供給する。チアゴ・アウベスがエリア外から積極的に左足を振り抜く中、33分に高橋が櫻川とのワンツーからボレーシュート。35分には高橋のアーリークロスから櫻川がフリーでヘディングシュートを放つも、ポストを直撃。チャンスの数は少なくなかったが、ゴールが遠かった。

ビハインドで迎えた後半は山形のハイプレスに前進を阻まれた。櫻川を目がけたロングボールで打開を試みるも、前線に収まらない。陣形が間延びしていることもあり、セカンドボールを相手に拾われてしまう。自陣に閉じこまれた状況を打破すべく、61分に推進力に長けたルカオとルーズボール争いに強いステファン・ムークを投入する。背番号99が持ち前のパワーで道を切り開くと、69分には左サイドを突破して右足を振った。しかし、シュートはGKの正面へ。80分にも2枚替えを行ったが、出力が上がりきらない。中盤の選手を入れ替えた山形の勢いを跳ね返せず、CKから追加点を浴びた。

目の前の試練を全員で乗り越えようと懸命に戦った岡山。ただ、主力不在の難しい状況を開始早々の失点がさらに難しくしてしまい、状況を覆すことはできなかった。連勝は『4』でストップし、9位に後退。悔いの残る一戦となった。

コラム

3失点目を防いだ本山遥。ラストプレーで示した守備者としての意地

最後の最後に守備者としての意地を見た。

2点ビハインドで迎えた90＋5分、山形のカウンターアタック。自陣からドリブルで突き進む國分に追いつく岡山の選手はいない。國分のスルーパスがPA右に出されると、フリーのデラトーレはゴール前の状況を確認して中央に折り返す。パスは後ろから走り込んだ途中出場の高江のもとへ。

絶体絶命のピンチ。

すると、次の瞬間、白いユニフォームを着た1人の選手が身体を投げ出した。本山遥、機動力を生かした守備でチームの4連勝に貢献してきた大卒2年目の選手である。何とかボールを掻き出して、スコアボードに0-3が表示されるのを食い止めた。

この日、岡山の3バックは急造だった。チームに体調不良者が続出し、柳と鈴木が欠場。彼らは1対1で負けない力強さと球際の粘り強さを発揮し続け、攻守で主導権を握るサッカーを後方から支えてきた。

「今日は俺が引っ張る」

本山は今節に並々ならぬ闘志を燃やしていただろう。しかし、思い描いた結果にはならなかった。開始早々に先制点を許し、連係不足を突かれてCKから追加点も喫した。チームとして難局を乗り越えることはできなかったが、ギリギリのところで3失点目を防いだプレーと、サポーターに深々と頭を下げる姿は責任感で溢れていた。守備者としての意地とプロとしての責任感を備える24歳は頼もしさも身につけようとしている。