【レビュー】『奮闘』~天皇杯2回戦ファジアーノ岡山VSギラヴァンツ北九州~

試合結果

2023年 第103回天皇杯 2回戦
6/7 19:00K.O. @シティライトスタジアム
岡山(2-1)北九州
45+1分 櫻川ソロモン
53分 櫻川ソロモン
78分 平原隆暉

スタメン

マッチレポート

チャンスを得た選手が奮闘した岡山。櫻川の2得点で北九州を下す

岡山は今季ここまで出場機会の少なかった選手が奮闘し、2-1で北九州を下した。

両者ともに直近のリーグ戦から先発全員を変更した中、ホームチームが勢いよく攻め込んだ。福元は今季途中にコンバートされた右WBで公式戦のピッチに立つのは初めてだったが、慌てることなく攻撃で持ち味を発揮。相手の背後を突く動きを繰り返し、縦突破からクロスを供給していく。7分には福元のクロスを今季公式戦初出場の野口が頭で合わせる。ドンピシャのヘディングシュートだったが、GKに防がれた。

10試合未勝利でJ3の最下位に沈む北九州は、上のカテゴリーに所属する岡山が相手でも引くことなく堂々と戦っていく。相手2トップのパワーに押し込まれる場面もあったが、全体で連動したプレスを仕掛け、マイボールになると、後方からパスをつないで前進を図る。[5-3-2]の陣形で守る岡山に対して、相手の中盤の脇で起点を作り、ゴール前まで進入するシーンを作った。最後の精度が上がらずに得点とはならなかったが、意図した攻守を展開した。

岡山はビルドアップやプレスで連係不足を感じる部分もあったが、今季公式戦初先発の山田恭をはじめ、チャンスを得た選手が球際を激しく戦い、集中してこぼれ球を拾うと、前半終了間際に先制点を奪う。45+1分、田部井とのワンツーで相手のプレスを交わした野口がスルーパス。これに反応した櫻川が冷静にシュートを流し込んだ。

後半は岡山がヨルディ・バイスに代えて本山を投入してスタート。チアゴ・アウベスと櫻川がプレスの強度を高め、53分には相手のパスミスを見逃さなかった櫻川が追加点を挙げた。そして61分にはU-20W杯を戦った佐野と坂本を投入した。

2点を追い掛ける北九州は、64分に山脇と上形を同時に投入すると、両サイドの推進力がアップ。山脇が何度も右サイドから背後に抜け出して相手を押し下げ、78分には野瀬のミドルシュートのこぼれ球を平原が押し込で1点差に縮めた。その後も積極的に選手交代を行ってゴールを目指したが、あと一歩及ばなかった。

ここまで出番の少なかった岡山の選手たちは、自らの手で掴み取った勝利によって、日々の積み重ねに自信を深めることができただろう。この試合を経て、彼らがさらに貪欲な姿勢で出場機会を増やすための努力を続けていくことがチームの底上げにつながる。

コラム

2得点を記録した櫻川ソロモン。公式戦でネット揺らす経験は次につながる。

櫻川は膝で芝生を滑るゴールパフォーマンスを2度披露した。

1度目は、前半終了間際。相手CBの間にポジションを取ってパスを呼び込むと、野口からスルーパスがきた。丁寧に右足でコントロールすると、そのままPA内に進入して左足をコンパクトに振る。脱力した状態で放ったシュートが左スミを揺らした。7試合ぶりとなる公式戦での得点に喜び、笑顔が光った。

2度目は、53分。チアゴ・アウベスが前線からプレスを仕掛け、櫻川もそれに加勢する。野口も後ろから圧力を掛けると、相手が自陣低い位置でパスをミスし、これを逃さなかった櫻川が相手のGKの逆を突いてシュートを沈めた。一目散にメイスタンド方向に駆け出していき、膝で滑った後にグラウンドに仰向けになった。嚙みしめるようにしてチームメイトの祝福を受けた。

櫻川にとって、どちらの得点もそれほど難しくなかったかもしれない。J3のチームが相手だったということもあり、普段よりも余裕をもってプレーできているようにも見えた。ただ、天皇杯もリーグ戦も同じ公式戦であり、プロサッカー選手である以上は負けていい試合は一つもない。櫻川は前回のリーグ戦で得点を決めてから6試合で無得点だった中で、2得点を挙げてチームを勝利に導いた。公式戦でしか味わえない緊張感の中で得点を決めた経験、ネットを揺らした感覚は次につながる。ストライカーとして非常に有意義な試合となった。

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