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ピノとお散歩シリーズ

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愛犬のパピヨン「ピノ」と毎日お散歩するボク。するといろんな出来事が起こる、楽しくて心温まるお話です。
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記事一覧

ピノとお散歩シリーズ「保護犬ココ」

ピノとお散歩シリーズ「保護犬ココ」

動物病院の待合室で出会った美しいシルバーのパピヨンは、意外にも保護犬だった。

「キャイン」とピノが鳴いたので、振り向くとピノが椅子の下に仰向けで落ちていた。ボクはあわててピノに近寄ると、足を震わせている。
「大丈夫かい?ピノ」どこを痛めているのかが分からない。とりえず投げ出されている足を順番に撫ででみるが、骨が折れているようには思えなかった。でもかなり痛そうで、息が荒く全身で震えている。すぐにで

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ピノとお散歩シリーズ「踏切の少年」

ピノとお散歩シリーズ「踏切の少年」

その少年は毎日夕方になると、踏切で電車に向かって手を大きく振っていた。

木々の枝がすっかり寂しくなり、小道が茶色の枯葉で埋め尽くされるころになると、ボクは夕方のピノとの散歩の時間を、どんどん早くするしかなかった。朝の散歩は公園なのだが、夕方の散歩は公園とは逆の人気のない広々とした田園に行くことにしていたからだ。ボクの街は散歩するところに事欠かない。近くに公園が何か所もあり、ちょっと歩けば、見渡す

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お散歩ピノ

愛犬のパピヨン・ピノがお散歩する、楽しいショートムービーです。
アニメ風にしてみました。

ピノとお散歩シリーズ「ポルターガイスト騒動」

ピノとお散歩シリーズ「ポルターガイスト騒動」

『コツコツ、コツコツ』深夜ふと目が覚めると、暗闇の中で音がしていた。それほど大きな音ではなく、どこからともなく聞こえてきた。なんの音だろ、と思ったのだが、あまり気にもせずにまた寝てしまった。翌日は、何だかバタバタと忙しかったので、謎の音は忘れていた。
その日の深夜、ボクはベッドの中で寝かかっている時だった。再びどこからかコツコツと何かを叩くような音が聞こえてきた。家の外からではなさそうだ。寝室の中

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ピノとお散歩シリーズ「ママはスーパー戦隊ヒーロー」

ピノとお散歩シリーズ「ママはスーパー戦隊ヒーロー」

8月になった頃から、赤ちゃんをおんぶして、右手に幼児左手で犬を連れ、早朝の公園を散歩している親子を見かけるようになった。

夏は暑い。当たり前なのだが、それにしても最近はひどい暑さだ。猛暑、酷暑、炎暑。地球温暖化は、言葉まで進化させている。おかげでパピヨンの愛犬「ピノ」と散歩する時間は、どんどん朝早くなってきた。ボクは毎日2回、朝と夕方にピノと散歩をしている。雨が降らない限り、これがボクとピノの長

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ピノとお散歩シリーズ「老人とヤンキー」

ピノとお散歩シリーズ「老人とヤンキー」

まったくもって、犬も人間も見た目では分からないもんだ、というお話。

ボクの愛犬ピノは、パピヨンのメス犬で、片手でも簡単に抱えられる小型犬だ。耳がやたら大きく、正面から見ると蝶が羽を広げているように見えるので、フランス語で蝶の「パピヨン」の名がついている。

お散歩する時は妙に大人しく、外では決して吠えることもせずに上品に振る舞うので、近所では人気者。しかし家の中ではやたらうるさい、外面ばかりいい

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「聖夜の別れ」

「聖夜の別れ」

ピノとお散歩シリーズ その2
そう、あれはジングルベルが聞こえてくる頃のお話。今回は「聖夜のお別れ」という物語。

「おいくつになるんですか?」ボクは、目の前の女性に尋ねた。
「もう15歳にもなるんですよ」
「へーそうですか。とても見えませね。まだまだ元気そうだし」
「昔は毛がもっと濃い茶色だったんですが、これでもかなり白髪が増えたんですよ」
その「コタロウ」という名の中型の柴犬は、いつも穏やかで

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「ジーザスという名の犬」

「ジーザスという名の犬」

ピノとお散歩シリーズ 第一話

ピノとジーザスは、たった一年しか遊べなかった。

 ボクの家で犬を飼い始めたのは、志望の高校に受かった娘から、せがまれたのが始まりだった。娘は、インターネットでパピヨン専門のブリーダーを探しだし、生後三ヶ月のメスの子犬の予約までしている。毎日散歩して世話をするんだよというのが、娘との初めの約束。あれほど熱心だったので、当分の間は世話をするだろうと思っていたのだが、そ

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